リリース直前で発覚した不具合にどう対応すべきか?
前回要件定義実践編として、機能要件の定義の仕方を会員登録機能を例に解説しました。
(→前回投稿:実践!システム開発の基本:機能要件をマスターしよう【会員登録編】)
今回は会員管理機能についてご説明します。
例は多いほど良いと思いますので、前回と合わせてご覧頂ければ、より理解が深まると思います。
- 要件定義を控えている
- 機能要件について知りたい
そんな方はぜひ最後までご覧ください。
※このコラムの内容は動画で公開しています。Youtube版はこちらをご覧ください。
なお、要件定義の概要については過去の投稿で解説しています。こちらも是非ご覧ください。
(→ 新規事業向けシステム開発要件定義の極意)
前回、会員登録機能について解説をしました。会員登録機能はBtoCであれば、C(Consumer)である顧客が利用する機能でしたが、今回はB(Business)、つまり企業側が利用する機能に相当します。
なお、この考え方の前提としては、例えばECサイトのように企業が消費者に向けてサービスを提供するシステムです。企業内のみで使用する業務システムには当てはまりません。
1.会員管理機能を構成する機能
前回は会員登録機能単独の機能でしたが、今回の会員管理機能というのは次の4つの機能から構成されています。
①会員登録機能
②会員検索機能
③会員情報変更機能
④会員削除機能
このように機能全体を把握しやすくするため、小さな機能はまとめて○○管理機能のように表現することが多々あります。
2.会員管理機能を構成する各機能を具体的に説明
それではそれぞれの機能について、具体的にどのように定義するのかを詳しく説明します。
①会員登録機能
機能概要
ユーザーの代わりに管理者が会員登録をすることができる。
但し、ユーザーが会員登録をする際と登録内容は一部異なる。
画面項目
No | 項目 | 必須 | 説明 |
---|---|---|---|
1 | 氏名 | ○ | 姓と名に分ける |
2 | メールアドレス | ○ | 有効な形式であること |
3 | パスワード | ○ | 8文字英数字と特殊文字を含む仮パスワードを自動生成する |
4 | 生年月日 | ○ | 登録時点で18歳以上であること |
5 | 電話番号 | ○ | ハイフンを含めずに入力する |
6 | 住所 | ○ | 郵便番号、都道府県、市区町村、番地、建物名に分けること |
7 | 性別 | ○ | 男、女、回答しない の3つから選択する |
補足事項
- 管理者が会員登録を行った際は、仮登録状態としておく。登録完了後、入力したメールアドレスへメールを送信し、メールに記載されているURLをクリックすると、本登録機能が表示され、同画面では仮パスワードを入力し、本パスワードを登録できるようにする。また、利用規約・プライバシーポリシーへの同意を促す。本登録機能は別途定義する。
- ユーザーの会員登録では、「このサイトをどこで知りましたか」というアンケート項目があったが、管理者による会員登録の際は、アンケートの回答は割愛する。
ユーザーが使う会員登録と管理者が使う会員登録は一見同じように考えがちですが、実は違いがあります。本件の例だと、管理者が登録する場合、パスワードは仮パスワードとしておくことであったり、アンケート項目への回答が無用としています。
そもそも管理者が会員登録することはないので、機能自体不要という考え方もあります。これはシステムによって検討すべき事項です。
会員検索機能
機能概要
管理者が登録された会員情報を検索し、必要なデータを抽出できる。また、抽出したデータはCSVファイルへダウンロードすることができる。
画面項目
検索条件
以下の項目で検索することができる。
氏名 |
メールアドレス |
生年月日 |
電話番号 |
会員ステータス(仮登録、登録完了、退会) |
※複数の項目を入力した場合は、入力項目の全てと合致するデータを抽出する。
入力項目の一部が同じならば抽出対象とする。
検索結果
以下の項目を検索結果へ表示する。
氏名 |
メールアドレス |
生年月日 |
電話番号 |
会員ステータス |
登録日 |
最終ログイン日時 |
気付かれたかもしれませんが、登録日・最終ログイン日時はユーザーや管理者が登録した情報ではありません。しかし、別途参照したい情報があるとするなら定義しておかなければなりません。設計にも関わることですので、登録した項目以外にも、こんな情報が欲しいというものがあれば必ず要件として定義してください。
補足事項
抽出した結果は、検索結果に表示した項目のみではなく、会員情報として保有するすべての項目をCSVファイルへ出力できる。
ただし、ファイル出力は会員検索の利用とは別の権限が必要となる。
※セキュリティ上、アクセスできる人と、データを取得できる人を制限する。
検索において必要がなさそうな条件は外しています。例えば、住所や性別で抽出することはないと判断しました。あったら便利だという機能が増えれば増えるほど、工数も増えてしまうからです。「あったら便利」な機能は外す、という決断をしておくべきでしょう。
会員情報変更機能
機能概要
会員の情報を編集、更新できる。
画面項目
No | 項目 | 必須 | 説明 |
---|---|---|---|
1 | 氏名 | ○ | 会員登録と同じ |
2 | メールアドレス | ○ | 会員登録と同じ |
3 | パスワード | ー | パスワードのリセット(仮パスワード再設定)ができる |
4 | 生年月日 | ○ | 会員登録と同じ |
5 | 電話番号 | ○ | 会員登録と同じ |
6 | 住所 | ○ | 会員登録と同じ |
7 | 性別 | ○ | 会員登録と同じ |
8 | このサイトをどこで知りましたか | ー | 編集不可 |
9 | 会員ステータス | ○ | 仮登録、登録完了、退会 |
補足事項
変更を行った場合、登録されているメールアドレスへ変更内容を送信する。
④会員削除機能
機能概要
登録された会員を削除する。
画面項目
削除完了メッセージ
補足事項
削除を行った場合、登録されているメールアドレスへ削除した旨を送信する。
3.会員管理機能についての補足
会員管理機能は会員登録があるシステムやアプリならば、必ず存在する機能です。今回は4機能を説明しましたが、場合によっては他の機能も必要になることもあります。
例えば、物でもコンテンツでもいいのですが、購入を伴うシステムならば、会員購入履歴機能が必要ですし、リピート率を分析できる機能、アクセス履歴を参照できる機能なども必要でしょう。
また、会員管理機能において特に重要な点。それは、不正アクセス対策や会員情報管理に関する社内のシステム利用者への教育です。これらは、非機能要件に定義する事項ですので、また改めて説明する機会を設けますが、忘れずにおいて頂きたいものです。
まとめ
今回は会員管理機能をテーマに、要件定義の具体例として会員管理機能を構成する各機能の詳細について説明しました。
会員管理機能は、BtoCのシステムでは必ず必要な機能です。
システムの中でも非常に重要な役割を果たしますので、前回の会員登録機能と合わせてご理解を深めてください。
(→前回投稿:実践!システム開発の基本:機能要件をマスターしよう【会員登録編】)