【システム開発】ITベンダーが準委任契約を提案する本当の理由
システムを導入する際、スクラッチ開発のような自社で作る方法と、パッケージソフトやSaaSなど他社が開発したものを使用する方法の2つの選択肢があります。
- スクラッチ開発などの言葉を聞いたことはあるが、それは具体的にどういうものなのか?
- 自社で開発を行う際、スクラッチ開発にするかパッケージソフトやSaaSを使用するかの判断基準がわからない
そんな方が本投稿をご覧頂きますと、
- スクラッチ開発・パッケージソフト・SaaSのそれぞれの特徴、メリット・デメリット
- スクラッチ開発を選ぶ理由
についてご理解頂けますのでぜひ最後までご覧ください!
スクラッチ・パッケージなどの特徴をすでにご存知で結論を知りたいという方は、目次からスクラッチ開発を選ぶ理由を選択しご覧ください。
※このコラムの内容は動画で公開しています。Youtube版はこちらをご覧ください。
スクラッチ開発の特徴
スクラッチ開発は独自開発とも言われ、オーダーメイドでシステムをゼロから作り上げていく方法です。例えばスーツを買う際、スポーツで上半身が発達しており既製品が合わない人でもオーダーメイドなら体にフィットするモノを作ることができる、正にこれです。
この開発方法は明確なメリットもありますが、同時に多くのデメリットもあります。最大のメリットは完全に自社のビジネスにフィットするシステムが構築できることが挙げられます。技術的に可能なことならば自社のいかなる要件も実現できるわけです。つまり、
- 全ての機能を自社業務に完全にマッチした仕様にできる
- 費用対効果を鑑み業務フロー全体・段階的強化など計画的に導入できる
- 独自性あるシステム構築が可能
- 事業環境の変化へ柔軟に対応できる
- 経営情報を必要な切り口で入手できる
- 他システムと連携し社内システム全体の最適化を図ることができる
このように、スーツのフルオーダー同様、自社に完璧にフィットするシステムになりますが無視できないデメリットもあります。
- 開発費が高額
- 開発に時間がかかる
- 要件定義が完了しなければ開発費、開発期間も確定できない(→参考:【危険】甘く見るとシステム開発で失敗します!要件定義にまつわる本当にあった怖い話3選)
さらに運用保守フェーズに入っても保守運用担当者を当てなければなりませんし、税金などの制度改正も独自に情報を集め、必要ならばシステム改修を行わなければなりません。
また、システムのセキュリティ、データバックアップなども常に監視、対応が必要です。
パッケージソフト、SaaSの特徴
パッケージソフトは特定の業種や業務で汎用的に利用できる既製のソフトウェアです。経理、財務、人事などの業務ソフト、小売業、飲食業、建設業向けなどがあり、自社のPCやサーバにインストールして利用します。
メリットは、設計も開発も不用なので、すぐに利用ができること、導入コストが安く済むことです。さらに、使い方に迷っても売れているソフトならサポートが充実しており、ネットでもソフトの利用者が情報を上げていることも少なくありません。消費税率変更など制度変更があっても、黙っていてもベンダーが対応し、対応バージョンを配布してくれますし、定期的に機能追加改善も行われます。
良いとこ尽くしのようですが、デメリットはと言うと、機能が自社の業務に合わないことがあることです。例えば、管理項目が足りない、業務フローに合わないなどです。この場合、パッケージソフトの仕様に、自社の業務を合わせなければなりません。いままで慣れ親しんだやり方を変えるということは、現場に混乱を招く要因となります。機能追加改善も必ずしも自社にとってプラスとならないこともありますが、その場合であっても、受け入れざるを得ません。
SaaSは、Software as a Serviceの略語で、ソフトウェアをインターネット経由で利用できるサービスのことです。パソコンなどにソフトウェアをインストールする必要がありません。厳密な定義はともかく、クラウドサービスや、少し前ならASPと呼ばれていたサービスと同じものと考えて差し支えありません。
SaaSのメリットもパッケージソフトに同じく自社で設計・開発をすることなく、アカウントを開設すれば直ぐに利用できること。インターネットに繋がればどこでも利用できること、保守・管理コストが安いこと、データの共有・共同作業がしやすいことが挙げられます。
デメリットはこちらもパッケージソフト同様、自社業務に合わないということが上げられます。
スクラッチ開発を選ぶ理由
前述したスクラッチ開発の特徴では、メリットよりもデメリットが多いようにも感じられたことでしょう。しかし、多々あるデメリットを許容してでも、スクラッチを選ぶ理由があります。あなたのビジネスが次の3つに合致する場合、スクラッチ開発一択と言ってもいいでしょう。
- システム導入の対象が独自性を持つビジネスであること
- 業務全体あるいは一部に他社と差別化を生み出せなければならない場合
- 特異性が高いビジネスモデル
ひとつずつ解説します。
1.システム導入の対象が独自性を持つビジネス
これは、いま世の中にない新しいビジネスモデル・サービスが挙げられます。世の中に存在していないのですから、それに合わせたパッケージなども当然存在していません。かなり古い話ですが、楽天ができた時も自社で苦労して開発しています。今でこそ、日常生活に欠かせないECモールは当時ポピュラーではありませんでしたから、自社で作る以外に選択肢がありませんでした。
2.業務全体あるいは一部に他社と差別化を生み出せなければならない
差別化するということは、業務に違いが生じます。パッケージやSaaSは汎用的に作られているので、一般的業務と違いがある場合、それに対応できないことが多いでしょう。パッケージをカスタマイズして対応する方法もありますが、パッケージのメリットであるすぐに利用ができる、導入コストが安く済むという点は犠牲にならざるを得ません。
カスタマイズ量が多すぎて、「最初からスクラッチで作成した方が良かった」ということもよく聞く話です。
3.特異性が高いビジネスモデル
業界業種は他にも存在するもののITベンダーにとって、マーケットが小さいなどの理由でパッケージやSaasベンダーがソフトウエアを提供していない場合、自社で作成するしかありません。しかし、他の業種で業務が類似している場合、類似業種のパッケージ・SaaSを使う方法もあります。その場合パッケージソフトの提供業者に相談する、試用期間を使って予め検証するなどし、慎重に見極めを行ってください。
スクラッチは全てゼロから作る?
さて、スクラッチ開発だからと言って、全ての機能をゼロから作らなければならないのかというと、多くの場合そうではありません。インターネットを経由して、他のサービスと繋ぐことで、開発期間やコストを短縮できるサービスが登場しています。
例えば、決済サービス。WEBでもアプリでも決済できます。カード決済は当然ながら、コンビニ決済、キャリア決済、さらには定期課金も可能など、とても便利に利用できます。決済に関して言うなら、決済サービスを自社で構築するのはリスクが高いですし、当然コストも高額となるため、お勧めしません。自社のニーズに合わせて提供業者を選定しましょう。
まとめ
今回はスクラッチ開発の特徴、パッケージソフト、SaaSの特徴、そしてスクラッチ開発を選ぶ理由について解説をしました。
あなたのビジネスが独自性を持つビジネスである、また、業務全体あるいは一部に他社と差別化を生み出せなければならない、特異性が高いビジネスモデルなら、スクラッチ開発を選択することをお勧めします。
スクラッチ開発は高いコストで、時間もかかり、デメリットも少なくありませんが、それらを踏まえても、選ぶだけの価値があります。