デンソーが取り組むDX推進事例を紹介!DXが今後もたらす製造業の未来とは?
経済産業省は有識者を集め、2018年5月に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設立しました。さらにその翌年には、DX推進の課題を明確化した「DX推進指標」を公開しています。今回はこのDX推進指標を基にして、企業にDXを導入する方法を詳しく解説します。
一刻も早く推進しなければならないDXについて悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。DXを実現するために必要なことがわかるはずです。
経済産業省によるDX推進指標とは?
DX推進指標とは、各企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するために、経済産業省が2019年7月に公開した指標のことです。経営陣や各事業部門の関係者の間に発生する課題を明確にし、次のアクションにつなげる機会を設けることを目的としています。現状のDXに対する自己診断が行え、会社全体で取り進めていくことができます。
また、DX推進指標は9つのキークエスチョンとサブクエスチョンで構成されており、各項目に回答することで現時点の成熟度を6段階で認識できます。6段階の成熟度レベルは下記のとおりです。
- レベル0【未着手】:経営者は無関心、もしくは具体的な取り組みを行っていない
- レベル1【一部での散発的実施】:企業戦略が明確でなく、部門単位での実施にとどまっている
- レベル2【一部での戦略的実施】:企業戦略に基づく一部の部門で推進
- レベル3【企業戦略に基づく部門横断的推進】:企業戦略に基づく部門横断的推進
- レベル4【企業戦略に基づく持続的実施】:定量的な指標による持続的な実施
- レベル5【グローバル市場におけるデジタル企業】:グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル
DX推進指標で行える自己診断の特徴として、経営陣が中心となって取り組むクエスチョンが多いことがあげられます。つまりDX推進を部下に任せるのではなく、経営陣が自発的に取り組むことをDX推進指標を介して促しているということになります。
DX推進指標が公開された背景と狙い
新型コロナウイルスの影響もあり、デジタル技術は日々発展し続けています。特に海外企業からは新しいビジネスモデルが次々登場しており、さらなる変革が予測されます。しかし、多くの日本企業はDXの導入を検討しているものの、ビジネスに直接つなげられていないケースがほとんどです。それどころか「他の企業がDXを実施していないから大丈夫」という認識しかなく、DXの本質を見失っています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術を活用した大規模なIT変革です。その本質を見失っている日本企業に対し、経済産業省は「DXレポート」を公開しました。このDXレポートは2025年以降に訪れるであろう日本企業の衰退を危惧しており、DX推進に向けた課題点やアクションプランがまとめられています。
さらに経済産業省は危機的状況を乗り越えるため、2019年7月に「DX推進指標」を提示し、経営陣や社内関係者に向けてDX推進のアクションを促しています。海外と比較したDX化の後れから、各企業に対しDXの重要性を訴えているのです。以上のことより、危機感を持って企業のDXを推進させる必要があります。
DX推進指標の使い方
経済産業省が発表したDX推進指標。このDX推進指標には自己診断をベースとした3つの使い方があります。それぞれ順番に解説していきます。
認識の共有
DX推進指標を活用することにより、DXに対しての認識を深めて経営陣や事業部門、DX部門、IT部門など、社内の関係者に周知することができます。今後のDX推進の方向性を明確に定め、議論を活性化できるはずです。
経済産業省からの注意点として、経営陣のみが活用しても効果が薄いことがあげられています。そのため経営陣一人が回答するのではなく、社内全体で取り組んでDXに対する認識を共有しましょう。
アクションにつなげる
DX推進指標には自己診断で自社の成熟度を共有したのち、実際のアクションにつなげる役割があります。成熟度ごとに課題が明確化されており、社内で十分に議論することで具体的な行動に移せるはずです。
なお、自己診断は各項目に点数をつけるだけでは意味がありません。社内でしっかり議論した上でDXを推進しましょう。
進捗の管理
DX推進指標の自己診断は一度行って終わりではありません。何度もDXの進捗具合を確認して継続的に推進しましょう。何度も自己診断を行うとその都度ブラッシュアップされ、ビジネスモデルの変革につながります。
進捗の管理や共有を行うためにも、DX推進指標を持続的に活用しましょう。
DX推進指標による経営のあり方・仕組み
ここまで、DX推進指標の使い方について解説しました。続いて、DX推進指標による経営のあり方・仕組みをみていきましょう。DX推進はITシステムだけが重要だと思われがちですが、スムーズに進める上では経営のあり方もキーポイントとなります。
ビジョンの共有
DXを推進する際にはビジョンの共有が必要です。企業の方向性を明確に定めることにより、会社全体でDX化を進めることができます。
DXを導入する過程で社内環境が大きく変わります。環境が変わると同時に、従業員の心境も変化するためDX化を進める目的を見失いがちです。そんなときに明確なビジョンを掲げておけば、軸がブレることなく最後まで遂行することができます。従業員のモチベーションにもつながるため、まずはビジョンを共有しましょう。
経営陣のコミットメント
ビジョンを実現するにあたって、経営陣のコミットメントが必要不可欠となります。「とりあえずAIを使って」というように、部下に丸投げするような状況ではDXの実現は不可能です。それどころか、従業員のモチベーションを低下させる原因になります。なにより、企業のDX推進はただデジタル技術を導入すれば良いというわけではなく、経営陣の意思決定がキーポイントとなります。
DXを推進する際には、組織の整備、権限移譲、企業文化などのあらゆる変革を起こします。それに伴ってプロジェクトの管理や人事評価の見直しも行うため、会社全体に関わる意思決定が多い傾向にあります。そのため、スムーズにDX化を進めるには経営陣がコミットメントしなければなりません。
企業体制の構築
DX推進を成功に導くためにも企業体制を構築しましょう。DX推進指標の「DX推進の枠組みに関する定評指標」では下記の3つに分類されます。
- マインドセット、企業文化
- 推進・サポート体制
- 人材育成・確保
DXの導入後も継続してチャレンジできるよう、諦めないマインドセットを持つことが望ましいです。前向きな企業文化を構築することができれば、新しいデジタル技術が流行したときに失敗を恐れず取り入れられるでしょう。
新しいデジタル技術を取り入れるにあたって、適応するための人材教育が必要になります。既存の従業員だけでは難しい場合、即戦力として外部から人材を確保するのも1つの手でしょう。
事業につなげる
企業にDXを導入したところで、事業に活かせなければ意味がありません。顧客目線で物事を捉え、デジタル技術を用いたビジネスモデルを構築しましょう。新しいビジネスモデルの構築が難しいのであれば、既存ビジネスを変革・高度化させるのも良いとされます。いずれにしても、事業とDXのかけ合わせがキーポイントとなります。
また、DX推進指標では「経営者自らがリーダーシップを発揮しているか」というように、ここでも経営陣のコミットメントが重要だとされています。新規事業を成功させるためにも、強いリーダーシップを持って従業員をリードしましょう。
DX推進指標によるITシステムの構築
DX推進指標による経営のあり方・仕組みは理解できたでしょうか?最後に、DX推進の肝となるITシステムの構築について説明します。
ITシステムの構築
DX推進のためにはITシステムの構築が必要不可欠です。とはいえ、一気に新しいITシステムを導入すれば良いわけではありません。時間が経てば解消されるものの、新しい技術を導入すれば従業員の負担も当然増えます。新規のITシステムを導入することも大切ですが、まずは既存ITシステムを再構築して生産性を向上させましょう。
業務のブラックボックス化を避けるためにも、業務の全体像を把握できているかの確認も重要です。ITシステム構築の具体例は下記をご参考ください。
- コミュニケーションツールの導入
- タスク管理・情報共有ツールの検討
- 利用されていないシステムの廃棄
- IT資産の分析・評価
- 負担軽減のための業務分担
ITシステムのガバナンス
ITシステムの構築ができたらガバナンスを進めましょう。ITシステムのガバナンスは、システムの統括や管理などを意味します。経営陣が掲げたビジョンを実現するため、システムの管理、新規に投資すべきものを選定、標準化や共通化など、部門を超えて横断的に判断できる体制を整えましょう。
ガバナンスの失敗例として、付き合いの長いベンダーに業務を一任した結果、ITシステムの複雑化が進んでしまうことがあげられます。ITシステムは基本的に自社で管理をしなければならないため、システム回りを整えると同時に全体設計を行える人材を採用しましょう。できる限り自社でデータの管理・活用を行い、各事業部門がオーナーシップを持って企業のDX化を進めていきましょう。
まとめ
本投稿では、経済産業省によるDX推進指標、経営のあり方とITシステムの導入を解説しました。
DX推進指標とは、経済産業省が2019年7月に公開した各企業のDXを推進するための指標のことです。この指標は日本企業の衰退を危惧していると同時に、DX推進にあたっての課題とアクションプランを明記しています。DX推進の方法は「経営のあり方・仕組み」と「ITシステムの構築」の2つに分けられており、どちらも企業のDX化には欠かせません。
企業のDX化は初期コストが一定量かかってしまうものの、既存ビジネスを効率化できる、新しいビジネスモデルを構築できるといった多くのメリットがあります。ぜひDX推進指標を参考にして、企業のDXを推進していきましょう。