日本企業が抱えるDX人材の不足問題とは?具体的な対応策を3つ紹介
各方面から企業のDX化を急かされて、なにをすれば良いかわからなくなっている方はいませんか?DX化は予算的にもコストがかかり、実現は決して容易ではありません。そこで、経済産業省はDX推進ガイドラインを発表しました。DXを取り入れるための明確な手段が記載されているため、経営陣にとっては非常に有力な情報でしょう。
本投稿では、経済産業省のDX推進ガイドライン、DXを推進するための経営体制とITシステムを解説します。DXの推進に不安を抱えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
経済産業省が掲げるDX推進ガイドラインとは
経済産業省は有識者を集めて、2018年5月に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設立しました。この組織の立ち上げがきっかけとなり、各企業に対してDXが本格的に推進されはじめたのです。
また、同年9月には「DXレポート」を発表。この資料は5月に行った有識者同士の会議をもとに作成されました。2025年以降に起こる日本企業の衰退を危惧し、DXを取り入れないことへの重要性を煽っています。同時に、DXを取り入れるための重要ポイントが明確化されているため、このレポートは経営陣にとって非常に有力とされます。
そして経済産業省は、2018年12月に「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」を作成しました。DXを導入する上で必要なアクションプランを記載しており、経営陣に企業のDX化を進めてもらうことが目的です。
DX推進ガイドラインを作成した背景
DX推進ガイドラインはなぜ作成されたのでしょうか?このDX推進ガイドラインが作成された理由は、2025年以降に日本企業の衰退が予想されているからです。日本は2025年までにIT人材の引退、さらには各種サービスの技術的負債を抱えるとされます。また、海外に比べて日本企業のDX化は後れを取っているのが現状です。
日本における国際競争への後れが懸念されていると同時に、2025年から年間で約3倍、約12兆円もの経済損失が発生すると予測されているのです。以上の背景から、経済産業省は日本企業のDX化を推進しています。
DX推進ガイドラインの内容
経済産業省が発表したDX推進ガイドラインでは、ITシステムを構築する上での課題点を明確にしています。そして、DXを推進する際に経営陣が抑えるべきポイントを下記2つに分けて提言しています。
- DX推進のための経営のあり方、仕組み
- DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築
デジタル技術を用いた変革がDXとされますが、ITシステムの構築だけではDXを実現できません。ITシステムを構築するための事前準備として、経済産業省は経営戦略の重要性を示しています。そのため企業にDXを推進する際には、その2つの重要性を十分に理解しておく必要があります。
DX推進ガイドラインによる経営体制の整備
DX推進の基盤となる経営体制から解説します。DX化を成功させるためには必要不可欠である要素となります。各項目を1つずつ順番にみていきましょう。
経営陣による経営戦略
企業にDXを推進するには、経営陣による経営戦略がキーポイントとなります。DX推進ガイドラインでは「経営戦略・ビジョンの提示」の重要性を提言しています。
デジタル技術やITシステムを活用しようにも、経営の方向性が定まっていなければ当然うまくいきません。DX化を進めている最中で肝心な軸がブレてしまい、中途半端になるリスクが高まるからです。
そのためDXの導入を成功させるには軸となる経営戦略を用意し、掲げたビジョンを会社全体に周知する必要があります。また、どんなビジネスモデルを目指していくかを明確にし、方向性を都度共有し合うことも大切になります。
なお、DX推進ガイドラインによる失敗例は下記のとおりです。
- 経営戦略がないまま取り組み、検証やデモンストレーションを繰り返して疲弊する
- 経営陣がビジョンを持たないためDXの推進が部下に任せっきりになる
経営陣が主体のコミットメント
DX推進の最終意思決定を行うのは経営陣です。従業員がいくら熱意を持って取り組んだところで、経営陣にその気がなければ成功しません。経営陣が主体になってコミットメントする必要があるのです。ちなみに、DX推進ガイドラインは「経営トップのコミットメント」と明示しています。
DXがもたらす影響はデジタル技術の変化にとどまらず、組織・人事の仕組み、企業文化の変革といった、あらゆるリスクが考えられます。結果として、DXは会社全体に関わる意思決定をしなければならないため、経営陣によるコミットメントが必要不可欠となるのです。
仮に社内で否定的意見があがったとしても、経営陣がリーダーシップを発揮して判断しなければなりません。中には退職する従業員が現れるかもしれませんが、ときにはリスクを許容した意思決定が必要になります。
社内体制の構築・整備
企業にDXを取り入れることにより、社内環境が大きく変化します。データやデジタル技術を活かし、新しいビジネスモデルが構築されることもあるでしょう。社内状況が変化し続けるなか、モチベーションが低下しないためにも社内体制を構築・整備する必要が出てきます。DX推進ガイドラインでは以下の3つに分けて提言しています。
- マインドセット
- 推進・サポート体制
- 人材
経済産業省が掲げるマインドセットでは、各事業部門において挑戦を積極的に行えるマインド構築が考えられています。PDCAサイクルを適切にまわせる社内体制の重要さも指摘されています。
また、経営戦略やビジョンを実現するためのDX推進部門の設立が必要だとされており、それに伴う人材育成に注力すべきともいわれています。ときには既存従業員にこだわらず、優秀な人材を外部から確保するのもキーポイントとなるでしょう。
経済産業省は「仮設を立てずに実行すること」「失敗を恐れすぎていること」を失敗ケースとして掲載しています。
実現するための投資・対応力
企業にDXを推進するには当然初期コストが発生します。しかし、DXへの投資を恐れすぎていてはDX化は進みません。投資に対する重要性を十分に考慮し、長期目線で意思決定する必要があるのです。会社の予算管理状況に合わせて投資額を決定しましょう。
また経済産業省では、デジタル技術に対しての対応力も指摘しています。ITシステムの発展に柔軟に対応するためにも、常にDXの動向を追従し続けなければなりません。
DX推進ガイドラインによるITシステムの構築
ここまで、DX推進ガイドラインによる経営体制の整備を解説しました。続いてITシステムの構築についてみていきましょう。DXはデジタル技術による変革が目的なので、ITシステムの構築が必要不可欠です。DXを推進したいのであれば必ず抑えておきましょう。
ITシステムの体制・仕組みづくり
ITシステムを本格的に実行するまえに、体制や仕組みづくりを行いましょう。各事業部門のデジタル技術を活用できる基盤づくり、ITシステムを正確に連携できる体制づくり、それら2つが整っているかの確認が必要です。
DXを推進すると、既存業務に加えてデジタル技術を用いた新規業務を行わなければなりません。業務量の増加に直結するため、従業員に対する負担も当然増えます。その負担が蓄積すると従業員のストレスとなり、業務のブラックボックス化が発生します。技術的に手に負えなくなってしまうため、ITシステムを導入するまえに体制をつくっておく必要があるのです。
また、DX推進ガイドラインでは「経営レベル、事業部門、DX推進部門、情報システム部門」から人材を招集し、少人数チームを結成して取り組む事例が紹介されています。なお、失敗例は下記をご参考ください。
- 付き合いのあるベンダー企業からの提案を鵜呑みにして社内連携が損なわれる
- 経営者がリスクを懸念して実績あるベンダー企業の判断に委ねてしまう
- 情報システム部門に任せっきりにした結果、開発されたITシステムが不出来になる
ITシステムの実行プロセス
体制・仕組みづくりが順調に進めば、ITシステムの実行プロセスに移ります。とはいえ、DXを推進したビジネスモデルの変革といっても、ほとんどが既存ビジネスの効率化や再構築によるものです。そのためITシステムの実行プロセスでは、既存ビジネスプロセスのシステム回りの一新や、デジタル技術の導入・見直し作業を行います。具体的な実行プロセスは下記のような作業が考えられます。
- リモートを可能にするためのコミュニケーションツールの導入
- 業務効率化のための情報共有・タスク管理ツールの活用
- PC・サーバー・ソフトウェアなどのIT資産の分析や評価
- 廃棄すべきものを廃棄してコストを低減する
- 全体の技術的負荷を低減できているか再度確認する
上記のITシステムの実行プロセスは、DX推進におけるほんの一部分でしかありません。社内状況に合わせて随時DX化を図る必要があります。DX推進ガイドラインが記載している先行事例はこちらをご参考ください。
- 業務の簡略化や標準化による取り組み製品の見直しを行う
- 費用対効果の低いものは現状維持かほかシステムと連携させる
企業のDX化は一度行って終わりではありません。世の中のビジネスモデルは常に変化しています。そのためデジタル技術の変化に伴い、その都度新しいITシステムを導入し続ける必要があります。そのことを念頭に置いて企業のDX化を進めていきましょう。
まとめ
本投稿では、DX推進ガイドラインについて、経営体制の整備とITシステムの構築を解説しました。
各企業に対してDXが推進され始めたのは、経済産業省が2018年5月に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設立したことがきっかけです。2025年までにDXを取り入れる必要があるため、企業がDXを推進する際の重要ポイントが提言されています。
新型コロナウイルスの影響もあり、デジタル技術は常に発展し続けています。そのことにより、企業のDX推進はさらに加速していくでしょう。DXを活かしたビジネスモデルを構築するためにも、ぜひ本投稿とDX推進ガイドラインを参考にしてみてください。