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上村公彦プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

システム企画書を作る Part1

上村公彦

上村公彦

テーマ:システム開発・アプリ開発

・システム開発を行うことになったが、次に何をすべきだろうか?
・システムの企画とはどんなことなのか良くわからない。あるいは、理解を深めたい。

せっかく自社のDX新規事業が発想できたのに、企画が通らなかったら意味がないですよね。
システム企画書は、システム開発の開始を社内で承認してもらう、あるいは予算を取る上でとても重要な資料です。

この投稿をご覧頂きますと
・システム企画書には何を記載すべきか
・そもそもなぜシステム企画書が必要なのか
がご理解頂けますのでぜひ最後までご覧ください!

このテーマは2回に分けて投稿します。第1回目となる今回はシステム企画全体について、そして第2回目は架空のシステム開発を例にして今回の内容を具体的に説明します。
→第2回目はこちら「【システム企画書を作る Part2】」

このコラムの内容は動画で公開しています。
Youtube版「システム企画書を作る Part1」Youtube版はこちらをご覧ください。

システム企画書の必要性

システム企画書の必要性
システム企画書を作るといいつつも、もし、あなたがシステムのエンジニアで、かつ自分で開発に関する全ての権限を持っているならば、本投稿は必要ないかもしれません。

大企業ならまだしも、トップ主導のプロジェクトだったり、形式にこだわらない企業文化であるなら、システム企画書を求められることはないでしょう。
実際、私の経験上で、これまでに「これはキッチリと書いてるな」と思わせるようなシステム企画書はほとんど見たことがありません。

それは相手が一部上場企業さんであっても同様でした。それがリアルです。

ただ、会社として必要とされない場合であっても、システム企画書を作ることはぜひお勧めしたいです。
それはなぜでしょうか?

システム企画書を作る3つの理由

システム企画書を作る3つの理由

①システム開発の背景や目的、開発で得られる効果を整理し、システム開発プロジェクトの方向性、優先順位を明確化する。

②関係者のコミュニケーション手段として利用する。

③自身の考えを整理し、洗練させる。

それぞれを具体的に説明します。

①システム開発の背景や目的、開発で得られる効果を整理し、システム開発プロジェクトの方向性、優先順位を明確化する。

正直、これがないとしてもシステムは開発できます。
どんな背景があろうが、どんな目的だろうが、プログラマーが作るプログラムは同じものが出てきます。
それは、プログラマは設計書どおりにプログラムを書くのが仕事であるからです。

では、なぜ背景や目的が必要なのでしょうか?

システムの開発。これは、単純な内容でない限り、数カ月、時には数年をかけて実施するものです。長いプロジェクトになるわけですね。
長期間に渡りプロジェクトを進める場合、特にシステムの機能の詳細を詰めていくような時点では、細部に目がいき方向性を見失う。そんなケースは枚挙にいとまがありません。

開発に参加している本人たちにしてみれば、その時々を真剣に考えているのですが、ある時から方向性を見失い、いつしか道に迷ってしまうことがあるわけです。
また、同様に詳細を考えて行くときに、あの機能も必要、こんな機能もあると便利だ。という話しは必ず出てきます。

現場の人たちが真剣に考えれば考えるほど、様々なアイデアが出てきて、議論も盛り上がるのですが、目先のことだけを見てしまうと、本来の目的からそれてしまっていると言うことに気がつかないですし、考えた機能は全て必要だと考えてしまうのです。

その結果は、スケジュールが遅延、予算が膨大に膨れ上がるということになってしまいます。

そんなことが起きる前に、1度原点に立ち戻って、なぜこのシステムをどんな目的で作るんだろうかということを振り返るために「システム開発の背景や目的」ということが、とても重要なことになるのです。
これは、旅行において旅の目的と地図と捉えてもらってもいいでしょう。

②関係者のコミュニケーション手段として利用する。

開発したシステムに関係する人たちは、もちろんその内容にもよりますが、色々な部署・人に関係することが多いです。

例えば、ECサイトを作るとしても、そのサイトの運営担当部門、サイトで売れた商品を梱包する部門、商品を配送する部門、売上を計上する経理部門、商品の仕入部門、サイトのプロモーションを行う部門、経営陣、そしてシステムの開発者などです。規模によって、その役割を兼務したり、アウトソースしたりすることもありますが、1人だけでシステムを開発・運用するということは少ないと思います。

これら関係者の間で、システム開発の明確な基準を定義し、効果に対する期待を共有し、関係者がひとつの方向を向いて、よりよいシステムを作るための議論の元にもなるものです。

仮にシステム企画書がなく、関係者に都度口頭で企画内容を伝えるとなると、大変でしょうし、言った言わない問題もついて回ることになります。

③自身の考えを整理し、洗練させる。

システム企画書を作る理由の最後です。

これが最も重要ではないかと考えるくらい大切なことだと思っています。
自分の意思を相手に伝える際、文章で伝える。
意外に難しいですよね?ドキュメント作成って、エンジニアも苦手です。
天才かと思わせるプログラムを書くエンジニアでも、A4 1枚に報告書をまとめて作ってと言ったところで、いいものができません。プログラムを書くスキルと文章をまとめるスキルは違うもので、仕方がないことでしょう。

この難しいというところにポイントがあって、文章にまとめるのは難しいからこそ、どうやったら人に誤解なく伝えることができるのか、自身での検討を繰り返し、何度も書き直すということが必要になります。そしてその過程において、必ず検討不足の点が見えてきたり、新しいアイデアが生まれてきたりします。

この感覚は自分自身何度も体験してきており、システムに関わらず企画に携わったことがある人には共感頂けるものだと思います。

システム企画書の構成

システム企画書の構成
さて、システム企画書を作る理由についてはご理解頂けたでしょうか。
では、具体的にどんな内容を書くのか。システム企画書の構成について説明します。

システム企画書は次のような構成で作ります。実際、開発のパターンによって記載内容は変わります。例えば、基幹システムをリプレースする企画書と、新規事業でシステムやアプリを作る場合とでは、変わってきます。
今回は新たにシステムを開発する場合を想定しています。

1.システム開発の背景と目的
2.課題
3.解決策と導入効果
4.機能一覧
5.プロジェクト実施体制
6.スケジュール
7.予算

この7つの章立てで記載します。
では、それぞれについて説明します。

1.システム開発の背景と目的

これは「システム企画書を作る3つの理由」の一番最初に記した通り、これからの開発の道しるべにもなる重要なものです。
自社で、システムを開発することになった背景や、その目的を記載します。

2.課題

自社にどんな課題があるのか。
会社によって様々な課題はあるでしょうが、例えば、
・売上増に伴う残業時間の増加を解決したい。
・サービス品質の低下を抑制するために先輩社員のノウハウを共有したい。
・社員の高齢化による生産性の低下防止のために、一部業務を自動化したい。
等々です。

その内容を抽象化してしまうと、どの企業にでも当てはまることになってしまうことは多々ありますので、より具体的に自社に当てはめて考えてみてください。

3.解決策と導入効果

このシステムを開発し、導入することによってどんな効果が得られるのか。
売上や利益が向上するのか、あるいは顧客の満足度が上がるのか。社員の業務の生産性があがり、残業を抑制できるのかなどです。
理想的には数値で表現したいところですが、システムの内容によっては必ずしも定量的な効果が期待できず、定性的なものになることもあるでしょう。

定性的評価だと、費用対効果を測定しにくくなりますが、その場合は経営判断に委ねられます。

4.機能一覧

課題を解決するための、システムに必要とされる機能です。
システム開発に不慣れな場合、ここが記入しづらいところかもしれません。

そんな時に役立つのが、身近なシステムやアプリをどんどん記録していきましょう、ということなのですが、そちらにつきましては、前回の投稿「DX時代の新規事業発想法」をご覧頂ければと思います。

5.プロジェクト実施体制

どんな体制でシステム開発プロジェクトを実施するかです。
社内向けならば、どの部署の誰にどんな点で協力を求めたいのか。
それには、どれだけの時間を費やす必要があるのか。

ただ名前をあげるなら簡単ですが、システム開発を行う目的は元より、体制について経営者が、あるいは権限を持つ人に承認して頂くということは非常に大切です。

それは何故か?
システム開発の過程においては、必ずと言っていいほどシステム開発の窓口となる担当者だけでは解決できない疑問や課題が出てきます。

そんな時に、答えを出せる立場の人が責任をもって、かつ、速やかに答えを出してもらわなければなりません。しかし大抵の場合、そのような立場の人は忙しくて、なかなか答えが出ないということが多々あります。
そうすると、プロジェクト全体が停滞して、スケジュール超過や予算増加につながってしまいます。
そうならないためにも、「この体制図に書かれている人たちは責任をもって関わってもらいます」ということを宣言し、承認してもらうことが必要になるわけです。

6.スケジュール

システム開発に不慣れだと、どんな作業があって、それぞれどれくらいの期間が妥当なのかは想像しにくいものかと思います。
そんな場合は、最低限リリース目標だけでも定めておけばいいかと思います。
絶対にずらせないリリース日がある場合もありますが、だからと言って、10階建てのビルを1カ月で作ることはできないように、開発規模に対しての妥当な開発スケジュールはあるので、最終的には開発パートナーと相談のうえ決定することになるでしょう。

7.予算

スケジュール以上に、システム開発の予算策定は難しいものです。
パッケージ・クラウドシステムの導入であれば費用は決まってますが、新規のシステム構築の場合いくらかかるのかは、我々のように開発経験が豊富であっても簡単なものではありません。
とは言え、社内で企画を通す場合に予算不明とは書けないでしょうから、情報収集をしたうえで、記載することになるかと思います。

その場合、開発時の予算は当然ながら、運用での予算も忘れてはなりません。

まとめ

システム企画書を作る理由、システム企画書の概要をご理解頂くことはできたでしょうか。
実際、この投稿よりももっと優れた書籍やセミナーはあることでしょう。
それらを一度見たり聞いたりしたからと言って、いきなりできるようになるものでもないことは理解できます。

システム企画に関わらず、企画というもの自体何度も挑戦し、時には失敗することを繰り返し、身に着けることができるようになるものだと思います。
その一方で、ユーザー側の立場だと、経験を積んだシステム担当部門でもない限り、システム開発をたくさん経験するという機会は少ないことも事実です。
そんな場合には、身近でシステム開発を経験された方から話しを聞く、システムのコンサルタントへ協力を仰ぐなどもひとつの手段だと思います。

今回はシステム企画全体について解説しました。
冒頭にあるとおり、このテーマは2回に分けて投稿します。
次回は架空のシステム開発を例にして今回の内容を具体的に説明します。

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上村公彦
専門家

上村公彦(システムコンサルタント)

株式会社クラボード

新規事業のためのシステムコンサルティングおよびシステム・アプリ開発で豊富な実績。ベンチャー企業での事業開発経験で培われた「提案力」を発揮し、ニーズに対応。経営者目線でIT戦略を導きます。

上村公彦プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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