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遺言書作成を弁護士に依頼するメリット

松野絵里子

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テーマ:相続・遺言

自分が亡くなった後、財産をどのように分配するかを決めることができる遺言書。

遺言書の書き方を調べて、自分で作成しようとする方も少なくありませんが、間違った知識に基づいて遺言書を作成すると無効になったり、相続人がかえって困ることもあることをご存じでしょうか。

今回は、遺言書の種類やその必要性、また、弁護士に遺言書作成を依頼すると、どのようなメリットがあるのかについて解説します。

遺言書の種類

遺言書の種類として「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」が挙げられます。それぞれの特徴は以下の通りです。

【自筆証書遺言】
自筆証書遺言とは、遺言者本人が書いた遺言のことを指します。遺言書の相続財産の目録以外の全文と日付、氏名を自分で作成して押印すると完成するので、費用や時間がかからないことが特徴です。

【公正証書遺言】
公正証書遺言は、(多くの場合弁護士が案をつくったうえで)公証人が作成する遺言書です。この遺言書のメリットは、遺言者が自筆できない状態であっても作成できる点にあります。また、公証人が遺言内容を確認するので、遺言の効力をめぐる争いが起きにくい点も、公正証書遺言ならではの利点です。弁護士が関与する遺言は、これであることが多いです。もっとも公証役場に費用を払う必要があり、弁護士費用とダブルで費用がかかるので遺産がそれなりにある方にお勧めです。

【秘密証書遺言】
秘密証書遺言は、遺言者が遺言内容を誰にも知られたくない場合に使われます。遺言者本人が作成し、署名と捺印をして封印をし、公証人に提示することで、遺言の存在を公証してもらえるので、そこに利点があります。

これら3種の遺言書の他にも、緊急時のみに使用される「危急時遺言」と、遺言者が隔絶した環境にいる場合に認められる「隔絶地遺言」もあります。

・危急時遺言
これは、遺言を残したい人が、急に様態が悪くなって死亡の危険が高まって、署名押印ができない状態のとき、口頭で遺言の内容を言って、証人が代理で書面にしてつくる遺言です。
病気などの場合につくるのが「一般危急時遺言」といわれていますが、船や飛行機が遭難した場合に認められるのが「船舶遭難者遺言」です。

病気の場合につくるものが一般的でしょうが、この場合は判断能力があるかが後で問題になりやすいのでできたら、具合が悪くても弁護士に頼んで公正証書遺言にする方がよいでしょう。

・隔絶地遺言
伝染病によって隔離されている者と船舶中にある者が書くことができる遺言です。立会いが必要などの要件がきまっています。

遺言書

遺言書の作成を、弁護士に依頼するメリットは?

遺言書を残しておくと、亡くなった後、その通りに分けることになるので、相続人同士が協議せず、もめることなく、遺産を分けることができます。

しかし、亡くなった方が遺言書を残さなかった場合、法定相続人がその法定相続分に従って相続しますが分け方についてまとまらないことがあります。

遺産の分け方について法定相続人全員の意見を一致させなければならないので、遺産分割協議を行うことになるのですが、そこで、方法や額をめぐり相続人同士にしばしば争いが発生します。

遺言書があれば、「財産を誰にどの程度相続させるか」についてあらかじめ決められているので、遺産分割協議を行わなくてよし、相続人が「お父さんはこういう風に分けたかったんだね」と納得して登記などの手続きをしますので、争いを防ぐことができます。

遺言書の作成を、弁護士に依頼するメリットは?

「自筆証書遺言」など、遺言書は遺言者本人が作成することが可能です。では、弁護士に遺言書の作成を依頼した場合は、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

【メリット=法的トラブルを防ぎ、丁寧で喜ばれる遺言にできる】
自筆証書遺言は簡単に作成できる点がメリットですが、遺言書の作成過程などに問題があると遺言書が無効になったり、有効でも相続人同士の争いなどのトラブルへと発展する場合もあります。あるいは、内容が不明瞭で、後で争いが起きることもあります。

遺言執行者を誰にしておいたらよいのか、登記が簡単にできるような文言にしてあるのか、不動産登録免許税が多くならないような工夫など、遺言の場合には、かなり法的知識が必要です。

法律のプロである弁護士に依頼することにより、そうした問題を解決しつつ、残してもらった人が喜ぶような遺言書を作成することができます。

例えば、あなたは息子二人が喧嘩をしないように遺言を残したくて、たとえば賃貸アパートをふたりにあげようとして50%ずつの共有としようとしているとします。しかし、これは本当に良い方法でしょうか?息子さんたちのひとりが売りたいと思ったとき、喧嘩が起きるかもしれませんし、賃貸するかどうかもいちいち話し合わないといけませんので、片方が病気になって判断能力がなくなったりしたら、もうひとりがしたくでも賃貸そのものができない可能性もあります。

将来のことはわからないので、なるべく相続人ひとりひとりが別の財産をもらえるようにしたほうが喜ばれます。どうしても、二人に賃貸物件をあげたいなら今のうちに二つの区分所有の物件に買い替えておくのがよいかもしれません。

それから、そこにローンがついている場合、ローンの相続人も忘れないで決めておかないと相続人のほうで大きな紛争になります。債務は通常、可分債務とされて各相続人がそれぞれ負うことになるのです。

また、ペットがいてそのことも気になっているような場合とか、一定額は慈善団体に寄付したいというような場合とか、相続人である子どもたちにメッセージをいれた遺言にしたいというような場合も弁護士ならば相談にのれます。

【相続する財産を正確に調査することができる】
遺言書を作成するには、どのような財産をどの程度持っているのかを調査する必要があります。弁護士に遺言書作成を依頼した場合は、そういった遺産をまずリスト化して、今後使ってなくなってしまうだろうもの、残るだろうものなど、整理していくことができます。

また、今後介護をしてくれるだろう人には、多めにしておくほうが平等感がでるでしょう。

財産の中に不動産が含まれているような場合、

お金にしてわけるのか、
誰かひとりにあげてその人が他の人に代償をはらうのか
共有にするのか

などなど、相続人が納得でき、かつ簡便に相続できるよう、考えて遺言をつくる工夫が必要でしょう。

ペットがいるのでそれについても遺言に入れて対応してほしいというような場合の相談も、弁護士ならできます。

また、相続人が海外にいたり、忙しい時、なるべく金銭化してわけてあげるというのもとてもよい案になりえます。そういうときには、遺言執行者をきめておいて、金銭に換価してもらってそれを分けてもらうというのもよいでしょう。

そういった複雑な遺言であれば、素人ではつくるのはむずかしいでしょう。

自分で遺言書を作成する際の注意点

自筆証書遺言は、市販されている遺言書作成キットを使うと簡単に作成できますが、記載方法を間違えると遺言の内容そのものが無効になってしまうこともあります。

まず、自筆証書遺言は、自筆での記述が定められているため、パソコンで作成してプリントアウトしたものは無効となります。また、押印・署名・日付がないなど、必須記載事項に漏れがある場合も認められません。遺言者以外の人物が書いた遺言書、2人以上で共同して作成した遺言書なども全て無効となります。

なお、改正相続法により2019年1月13日から自筆遺言の要件が緩和されました。不動産や預貯金口座など、相続財産を特定する目録においては、登記事項証明書や預貯金口座の通帳のコピー、あるいはこれら一覧をパソコンで作成したものを財産目録として別紙に添付することができるようになりました。

自筆証書遺言は、遺言書を作成した本人が保管します。そのため保管場所を相続人に知らせていない場合は、亡くなった後、遺言書の保管場所がわからず、発見されないままになることもありますが、2020年7月10日に施行される「法務局における自筆証書遺言にかかる遺言書の保管制度」により、法務局に申請することで自筆証書遺言の原本と画像データが保管されますので、これを利用することをお勧めします。

公正証書遺言

公正証書遺言は無効にならないのか?

公正証書遺言は、法律の専門家(通常は弁護士が関与して丁寧に内容を考えて案をつくります)によって作られたものですので、基本的に無効となることはありません。

しかし、以下のような事例では例外的に公正証書遺言が無効となるので注意しましょう。

【公証人に口授せず、身振り手振りなどで遺言を伝えた】
遺言者が、言葉を話すことができない場合は、遺言の内容を通訳人の通訳によって伝えることで有効となります。自分で文字を書いて伝えても有効です。

【被相続人、証人、公証人の署名押印がない】
公正証書遺言の原本には遺言書を残す人(被相続人)、証人、公証人の署名押印が必要であり、原本に署名押印がない場合は無効になります。

【証人が2人以上立ち会っていなかった】
未成年者や、相続人になる予定の人やその家族、公証人の家族などは、証人になることはできません。もし、このような人が証人になった場合、公正証書遺言は無効となりますので、注意してください。

【公序良俗に反している】
公共の秩序に反する、常識的な概念にそぐわない内容の場合は無効になります。公証役場ではふつうこれは公証人が確認するのであまりないでしょう。

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専門家

松野絵里子(弁護士)

東京ジェイ法律事務所

資産の種類が多い複雑な遺産相続でも、裁判所の調停において、幅広い知見で依頼人のために相手の代理人とともに総合的かつ早期の解決を図る。

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