伝説の窯大

伝説の窯大

時に地方には
とてつもない学校があるもの
である。

昔々、遠い九州の空の下
佐賀県、有田町に
たった34年間存在した
県立の白磁の殿堂があった。
その名も
佐賀県立有田窯業大学校。

今も記憶に鮮やかに残る
夢の時間。

講師は人間国宝　井上萬二
を筆頭に
工芸界の錚々たるメンバー。

しかも
お金のない学生も
本物を学ぶ事ができる
稀有な学校だった。
　
そこに
1人
東京から
生きる事に
考えあぐねた学生がやって
きた。
大学には入ったけれど
自分がこれから
どう生きていくのが
幸せなのか
皆目、見当もつかない。

ただ、
自分がどうかして
何か光を見つけたいと
必死だった。

動きなさい。

何処かで
そんな声が
聞こえた。

とりあえず
その声に従おう。

好きなこと
当時
思い浮かんだのは
磁器。
すぐに
飛行機の切符を買い飛び乗った。

二十代のはじめ。
馬鹿な大学生が
飛んだ。

本当はそんなこと
しなくても
幸せになれたかもしれないのに。

思い込みとは
恐ろしいものだ。

〜つづく〜