【事例公開】中世教会建築の3Dレーザー測量・図面化プロジェクト-2

本事例は、海外に所在する教会建築(延床約3,000㎡)を対象に、外部・内部を含む3Dレーザースキャナーによる現況実測と、それを基にした図面化の実例です。
今回対象となった建物は、正確な建設時期は不明であるものの、12~13世紀のロマネスク建築が主要構造です。長年の歴史の中で増改築を繰り返しながらも、身廊や翼廊をもつ三廊式バシリカや円形アプシスなどの構成を保持し、地域を代表するロマネスク建築の遺構として、今なお教会として使用されています。
多世紀にわたる変遷によって、現行図面が不正確である、一部の部屋の情報が欠けているなどの課題があり、自治体より正確な測量データと現況図面の整備が求められました。
3Dレーザー測量による点群データ取得と整合性確保
外部および内部の主要構造部、開口部、ファサード装飾、屋根裏の小屋組みに至るまで、固定式3Dレーザースキャナー(TLS)を用いて網羅的に計測を実施しました。
ロマネスク建築に特長的な厚い石積み壁、連続するアーチ、経年変化による不陸や凹凸形状は、従来の手計測では正確な再現が難しい部位です。
3Dレーザー測量により、これらを空間全体として一貫性のある高度な点群データとして取得することで、建物全体の形状整合性を確保しています。
点群データをCAD図面・BIMへ落とし込む図面化プロセス
点群データの図面化において重要なのは、点の集合を線に置き換えることではありません。
本事例では、取得した点群をもとに、意匠的要素と構造的要素の役割を読み取りながら、平面図・断面図・立面図として整理しました。
図面化にあたっては、ソリッドな建築壁と軽量間仕切壁の区別や、造作家具と建築壁の切り分けを正確に行います。さらに、床梁や小屋組みなど、目視可能な構造部材も把握できるように整理することで、現況を正確に反映した実務的な図面へと仕上げました。
このように、歴史的建築における図面化では、測量精度と建築理解の両立が不可欠です。
3Dレーザースキャナーを用いた調査・図面化の意義と活用
本プロジェクトを通じて整備した図面および3Dモデルは、以下のような用途での活用が想定されます。
- 保存・補修計画立案のための基礎資料
- 構造健全性評価や劣化調査の補助資料
- 文化財としての価値評価や解説用資料
- 修復設計および工事仕様書作成のための現況図

歴史的建築物の調査は、単なる現況記録にとどまらず、将来にわたって建物を維持・継承していくための「共通基盤」を整える行為でもあります。本事例では、3Dレーザー測量と図面化を一体的に行うことで、その基盤整備に貢献しています。



