【事例公開】中世教会建築の3Dレーザー測量・図面化プロジェクト
歴史的建築物における現況把握とBIMデータ整備

今回は、海外に所在する教会建築(延床約1,500㎡)を対象とした、3Dレーザー測量及び図面化の実例をご紹介します。
外部・内部ともに固定式3Dレーザースキャナーを用いて計測を行い、取得した点群データをもとに、1/50スケールの3Dモデル(BIM)およびCAD図面として取りまとめました。
本建物は19世紀後半に建設された教会建築で、当時の歴史主義建築の流れを背景に持ちます。
新ロマネスク様式の影響を受けた重厚な外観が特徴的で、現在は州の歴史的建造物に指定されています。その文化的価値を踏まえつつ、自治体が管理する建物として、将来的な保存・改修・活用を見据え、意匠面だけでなく構造的な構成まで読み取れる、信頼性の高い基礎資料の整備が求められました。
装飾性の高いファサードを高精度に図面化するための測量手法


中世建築様式を再解釈した本建物では、その特徴がファサードに色濃く表れています。
半円アーチや壁面の凹凸、装飾帯など、曲線や段差を多く含む意匠、従来の手計測では計測に時間を要し、記録精度にもばらつきが生じやすい部分です。
本件では、固定式3Dレーザースキャナーを用いて建物外周を複数点から計測。ミリ単位の精度で取得した点群データにより、外壁形状や開口部位置、装飾要素を三次元的に把握しました。
その後、点群をCADに取り込み、設計スタッフが意匠や構造の成り立ちを読み取りながら、図面として成立する情報へと整理・トレースしています。
大空間をもつ教会内部の測量とBIMモデル化
内部についても、固定式スキャナーを用いて人が立ち入ることのできる範囲を網羅的に計測しました。教会建築特有の天井の高さや空間の広がり、梁や柱の配置関係を三次元で把握できる点は、3Dレーザースキャナーならではの利点です。
取得したデータは、
- 平面図・断面図・立面図などの2D図面
- 空間構成・情報を立体的に確認できる3Dモデル(BIM)
として整理します。
これにより、改修検討時の基礎資料としてはもちろん、関係者間での情報共有にも活用できる、汎用性の高い現況データを整備しました。
歴史的建築物の調査・図面化で求められる専門的視点とは
歴史的建築物の測量・図面化では、単に形状を正確に写し取るだけでは十分とは言えません。
建物がどのような構造で成り立ち、どの部分が意匠的・構造的に重要であるかを読み取ったうえで、「将来使える資料」として情報を整理する視点が不可欠です。
当社では、3Dレーザー測量による高精度なデータ取得から、建築設計や改修実務での利用を前提とした図面化までを一貫して行っています。単に現況データの取得にとどまらず、保存・改修・用途変更といった次の検討段階につながる図面を整備することが、最も重要なポイントです。



