仏壇には、ご本尊として「木の仏像」を
仏教とクリスマス その2── 日本で最初にクリスマスを祝ったのは、仏教徒だった?
「クリスマスはキリスト教の行事」
そう思われがちですが、日本の歴史をひもとくと、少し不思議で、そしてどこか仏教的とも言える物語が見えてきます。
日本で最初にクリスマス(当時は降誕祭)が祝われたのは、1552年。
場所は現在の山口県。宣教師として来日していた
フランシスコ・ザビエル一行が、イエス・キリストの誕生を祝ったのが始まりとされています。
ところが、その場に集っていた人々は、生まれながらのキリスト教徒ではありませんでした。
多くは、つい最近まで寺に手を合わせ、仏教の教えの中で生きてきた元・仏教徒たちだったのです。
つまり――
日本で最初にクリスマスを祝った人々は、仏教的な精神文化を身にまとったまま、新しい信仰を受け取った人たちだった、とも言えるでしょう。
さらに時代が下り、江戸時代。
禁教令によってキリスト教が厳しく弾圧される中で、人々は信仰を完全に捨てることなく、驚くほど静かで深い“融合”の道を選びました。
それが「マリア観音」です。
観音菩薩の姿を借り、そこに聖母マリアの面影を重ねる。
一見すれば仏像、しかし祈りの先にはマリアがいる。
中には、像の背や台座に、そっと十字架を刻んだものもあったと伝えられます。
仏の姿で、キリストの誕生を想い、祈る。
そこには対立ではなく、「守りたいものを、守り抜くための知恵」がありました。
仏教とキリスト教。
異なる教えでありながら、日本ではときに重なり、溶け合い、人の心を支えてきました。
クリスマスに灯る静かな光は、
実は、観音の慈悲とどこか似ているのかもしれません。
今年のクリスマス。
ツリーの下で、あるいは仏壇の前で――
そんな日本ならではの信仰の記憶に、そっと思いを馳せてみるのも、悪くないのではないでしょうか。
マリア像



