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栗原憲二プロは静岡新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

薬剤師は各種医療系機関や情報インフラその他を活用して患者様の健康に寄与する働きをしています

栗原憲二

栗原憲二

テーマ:門前薬局、病院薬剤師、製薬メーカー、在宅

富士市富士宮市にて在宅医療に携わっている薬剤師の栗原です。

今日は医療機関との関わりについて私の思うところを記してみようと思います。

医療機関はどのように利用したら良いか?

 医療機関は健康な人にはあまり関わりのない場所と言えるかもしれません。
 慢性的な疾患(たとえば高血圧とか糖尿病)などは、多くの場合、ある程度の年齢を重ねることで罹患する疾病であるため、若い人には病院という場所は、運動中の怪我や風邪、インフルエンザ新型コロナなど、緊急時にお世話になる程度の関係性しか持たないといえるかと思います。
 ※(ただし、幼少期などから病院にお世話になる人も少なからずいます。特にアレルギー性の疾病など)

 慢性的な疾病を抱えていなくても、皮膚科ならあの病院、歯科ならあそこの病院と、できたら馴染みの病院を持っていくのが大切です。
 たとえば、一つ皮膚科を取ってみるとしても、あちこちの病院にかかっていると、経時的な変化を病院側も把握することができないため、その子にとって最適な治療を行うことが難しくなることもあります。
 もちろん、あちこちの病院にかかることではじめて、自分や自分の家族にとって最適な病院や医師を見つけることが出来ることもあるので、もしも合う合わないを感じることがあれば、いくつか、候補に当たってみるのも大切なことです。

ーかかりつけ医を持つ

 その上で「かかりつけ医」を持つことが大切です。
 ただし、「かかりつけ医を持つ」ということは、なんでもその分野についてはその先生のみに相談するということを意味しません。セカンドオピニオン、つまり別の医師の見解を参考に仰いでみる、いうことも大切なことです。それで劇的に症状が改善するということも珍しくありません。
 医師にも、それぞれ得意な分野とそうでない分野というものがあるものです。

 その上で、主たる相談相手としてのかかりつけ医を持つということが大切だというわけです。

 かかりつけ医としてのおすすめの基準

  1. 比較的近場にある病院
  2. コミュニケーションがうまく成立して会話を交わすことのできる病院
  3. なんでも相談できる敷居の低さ

などを目安として持つと良いと思います。
 何より、地理的に通いやすい場所、利便性の良い場所にある医院は大切にしたいものです。
 かかりつけの医師として最適なのは、経験値が豊かであること、医師として油の乗り切った年齢であること、などが参考になるかと思います。
 ただし、このことは、50歳くらいの医師が良い、とかいったことではありません。70代の医師だって良い医師は少なくありません。
 逆に、若い医師は、経験値の少なさを、新しい学問的知見や体力、集中力で補うことだって期待できるわけです。
 人としての自分との相性も大切といえます。自分の感覚や想いを伝えやすいということは、それだけ誤解のない関係性を作り出し、結果として良い治療になることが期待できます。

ーお薬についてなんでも相談できる薬局を見つける

 病院に行けばお薬の処方箋を出してくださいます。それを受け取って4日以内に調剤薬局に行けば、医師の処方に基づいて、また保険を活用して(3割普段なら千円のところ330円、1割なら100円で)お薬を手に入れることができるわけです。
 医師がどのような意図を持ってお薬を処方したかについては、患者様の方に医師からある程度説明があるものです。「あなたはこういう症状だから、このお薬を飲んでください。このお薬の効果はこのようなものです」といったことです。
 果たしてその処方箋を持って薬局に出向いたところ、薬剤師の手元にあるのは、新患の場合は、処方箋の情報と、初回に書いていただくアンケート用紙ということになります。
 そこで薬剤師がどのようなことを考えているのか?については、あまり認知が進んでいないと感じます。
 薬剤師はその初回情報から、処方内容のお薬が相応しいのかどうかを頭の中で検証することになります。
 なぜそうするかというと、そもそも処方を書いた医師の勘違いや手違いによって、全く別物のお薬が処方されていることが稀にあるからです。
 自分の疾病とは全く関係のないお薬が処方されており、それを飲んでしまうということは大変なことです。そういう事態を未然に防ぐために、用法用量はじめチェックさせていただいているという次第です。
 加えて患者様の方で他にお薬を飲んでいるとしたら、新しく出たお薬同士で喧嘩をしてしまうということもある(いわゆる相互作用)ので、お薬手帳の記録を参考にしたりして検証させていただいているという次第です。
 お薬については、多くの方々が医師や薬剤師を信頼して飲んでいただけていると思いますが、もしも患者様の方で何か誤解等があれば、薬剤師の側にとっては、それは解くべき課題といえます。
 その誤解によって、お薬を飲まなくなったりして効果を得られない事態は避けられなければなりません。
 また、お薬の服用状況は、次回受診時に、医師と薬剤師に可能な限り現状に即して申し出ていただきたいのです。医師や薬剤師は、処方通りに患者様がお薬を飲んでいることを前提に、新しい処方を検討します。それなのに、もしも本当は、お薬の服用を一方的に中止してしまっているとしたら、全く事実に則さない指導をしてしまうことにつながってしまうからです。
 お薬の処方通りに飲めているかどうかを「コンプライアンス」の良し悪しで判断しますが、今はさらに進んで「アドヒアランス」という観点からの評価が基準になっています。
 簡単にいうと、「お薬を飲むかどうかは患者様の主体的な選択であり、それを尊重する」という評価基準です。
 ですから、もしも処方通りにお薬を飲んでいなかったとしても、それで医師や薬剤師から責められることなどあり得ないわけです。
 もちろん、親や先生の様に指導しなければならない患者様もいらっしゃいますでしょう。でもそれは理想的な関係性ではないのです。
 この「アドピアランス」の視点で言うと、患者様は可能な限り薬剤師に、お薬についての疑問や不安を告白してもらって、相談に乗ってもらった方が、必ずメリットが生じると言えるのです。

ー自分で調べてみる

 また最近は、インターネット上の情報もかなり整ってきました。テレビを見ても、その道の専門家が分かりやすい健康指導をされていますが、インターネットを使えば、自分が正しいと思うことを強化してくれる情報もあれば、逆の立場からの情報提供もあります。結局はそれらの情報を読んで、自分の価値観や判断基準で良し悪しを決めていくということが大切になります。
 注意しないといけないのは、インターネットで得られる情報は、実のところ利用者である一人一人の嗜好に従ってすでにカスタマイズされている場合が多い、ということです。Googleなどの大手の検索システムは、一人一人の検索情報などに基づいて、検索する人が好ましいと感じる様なサイトを上位に表示します。
 たとえば地球は実は平らであるというフラット理論に立つ人が情報を検索された場合、その主張に叶うサイトが上位に上がってきやすくなっています。それと知らずに情報を調べる人は、「やはり自分の考え方はインターネットでも多く支持されている」と思ってしまうのです。
 なので、スマホで情報を検索するときなどは、DuckDuckGoというアプリ(無料)を入手して検索してみると良いと思います。そこで提示される上位のサイトは、いろいろな人がいろいろな立場から支持されているサイトで、参考にする上でバランスよく情報を集めることができるからです。


 最近はchatGPTなどのLLM(Large Language Model)と呼ばれる人工知能の質も素晴らしくなってきました。自分でインターネットを調べて色々なサイトを読んでみるのに対して、人工知能は、インターネット上のさまざまな情報を総括して平均的な見解を提供してくれるのですから、もし検索する時間に制約があるなら、chatGPTなどを利用するのが良いと思います(そもそも最近は、検索してもAIの回答が最上位に提示される様になってます)。

ドラッグストアはどのように利用すべきか?

 日常生活を送る上でドラッグストアは不可欠になってきたと言えます。手軽な値段で日用品がかなりの確率で揃えることができるので、困ったときはとりあえずドラッグストアに駆け込むような時代です(それでもなければホームセンターでしょうか)。
 ドラッグストアは、日本語訳すれば薬局です。つまりお薬を主体に置いてある店舗です。
 そしてお薬とは健康を支えてくれるものです。
 生活の必需品があらかた手に入って、その上で自分の健康をも支えてくれるのですから、このマッチはある意味最強とも言えるかもしれません。
 最近は、調剤薬局を併設している店舗も増えてきました。今の時代、新卒の薬剤師が就職先として、病院や調剤薬局よりもドラッグストアを選択することも多くなってきました。
 調剤薬局が併設されている場合は、その店舗内に薬剤師がいますので、たとえば子供が急な熱を出したときなど、薬剤師に相談してみるのも良いでしょう。
 ただし、薬剤師は疾病の診断をするのが仕事ではありません。つまり子供の症状を伝えたとしても、その子供が何の疾病にかかっているのかを薬剤師は判断することができません。
 ただし、風邪とかちょっとした怪我とかの場合は、診断はできないけどもその相談内容から言って、効果が期待できる市販薬を提案します。
 一般市販薬は、保険を用いて購入することができないため、通常、調剤薬局でお薬を購入するよりも高額になることが多いものです(一定以上の金額になると税金の控除制度があります)。ただし、病院にかからないでお薬を手に入れることができるため、場合によっては費用が総額として安くなったり、病院にわざわざかかる手間を省くことができるメリットがあります。
 一般市販薬として、愛用しているお薬がある方も多くいらっしゃいます。私の患者様の中にも、タイガーバームを今も愛用されている方もおられます。
 何を隠そう、私自身も、ロイヒつぼ膏を昔から愛用しています。
 一般市販薬には、処方薬にはない良さがあります。それは使用感が良いという点です。
 処方薬は臭いや使用感などよりも薬効重視です。それに対して一般市販薬は、各製薬会社の並々ならぬ努力がその使用感に注がれています。その使用感のせいで、薬効以上に効くかの様に感じてしまう面があります。
 実際、これは良い面もあります。お薬には副作用がつきものですので、より弱い作用しかない一般市販薬で症状を抑え込むことができるなら、それは良いことです。使い慣れた市販薬は、安心感ももたらしてくれます。

ドラッグストアは、いってみれば巨大な薬箱

 昔、祖父の家には薬箱がありました。薬局で買ってきた絆創膏や風邪薬を取り揃えた薬箱は殿田坂邸にもあるでしょうが、医薬品メーカーが定期的にやってきて、使った分のお薬代だけ支払うシステムです。
 ドラッグストアは、言ってみればそのお薬箱の巨大バージョンということが出来ます。利便性の良い立地にあり、駆け込み寺の様に使用する意義は沢山あります。
 自分の抱えている症状に対して、色々な商品を試してみるのも良いでしょう。一般に市販薬は、調剤薬局で手に入れることができるお薬よりは副作用が比較的少なめのものが揃っているという良い面もあります。
 ただし、他に病院でもらっているお薬がある場合に市販薬を服用してしまうと、効果が被ってしまったり、似た作用のお薬が入っている可能性が少なからずあるため注意が必要です。
 その様なことに気を使うのであれば、ドラッグストアにある市販薬は、少なくないメリットをもたらしてくれるものと言えます。

健康食品についてはどう考えるべきか?

 「医食同源」という言葉があります。これは近年に作られた造語であるのが実情の様ですが、由来はしっかりと古代中国の、今でいう医学の考え方にあります。古代中国でも、今の医学でいう内科医や外科医の職務があったと言われていますが、それよりも食事によって健康を維持することが重視されたことが分かっています。つまり「医食同源」の考え方は、病気に罹ってからそれをいかに治したら良いかを考える前に、食事によって病気にならないことをも医学的に価値を置いていたのです。
 これは実に理に適った考え方です。病気に罹ると、免疫が低下したり体質が変わってしまったりと、その病気に直接関係する部位以外にも悪い影響をもたらしてしまうのです。
 そういったことになる前に、健康を維持すること、特に食事に気をつけることを発明したのが古代中国の医学の、とても大きな特徴なのです。
 薬剤師はお薬を売ってそれを生業としますが、言うまでもないことですが疾病があることが良いわけではありません。疾病にかかる前に、それを予防すること。そのことをも薬剤師として考えることは当然の流れということが出来ます。

ー添加物などの問題は?

 そこで問題となるのが、いわゆる添加物の問題。世の中には、無添加物品を取り扱う食品店もあり、一定の評価を得ています。
 ただしそれは需要としては多数を占めてはいないので、商品の価格も比較的高くなっている様に感じます。
 添加物の影響は、全てが解明されているものではありません。なのでそれをあえて避けるということも、当然の選択肢の一つと考えます。特にアレルギー性疾患を持っている方々は、添加物に敏感である実情もあります。
 一般に食品添加物として食品に入っている添加物は、様々な検査によって、健康上、不都合な結果が出ない、とても厳しい基準が設定されています。添加物が入っていなければ起こりかねない食中毒などの危険性を考慮しているため、添加物が入っている食品は怖いと一方的に考えるのも間違っていると言えます。
 全ての事柄がはっきりとしているわけではない以上、一人一人が自分の判断と選択で、自分の口に入るものを選別していくことが求められていると思います。

ー栄養補助食品の利用法は?

 最近は、大変多くの栄養補助食品が出回っているようです。SNSの広告でも目まぐるしい商品開発がされている様です。
 栄養補助食品は、通常の食事ではなかなか摂取することの出来ない、体にとって好ましい成分の商品です。適切に使えば間違いなく、健康上のメリットはあると言えます。
 ただし、最近の紅麹サプリによる事故は大変大きなショックを持って受け止められました。ただの栄養補助食品によって命を落とす被害者が出たのです。にわかには信じがたい事件でした。
 この事件からも言えることは、栄養補助食品ならなんでも安全と言えるわけではない、ということです。

 体にとって健康上のメリットがあるものであっても、その人が持っている疾病や、飲んでいる内服薬との関係で、デメリットをもたらすことも起こりかねないのです。
 自分で調べるのはもちろんのこと、かかりつけの薬剤師に相談するなどして気を配るべきことと言えます。

そもそも食事で気をつけるべきことは?

 食事で気をつけるべきことは、第一には栄養摂取のバランスを考えるということです。
 タンパク質やミネラル、ビタミンや炭水化物また脂質など、どれをとっても偏って摂取しては無駄になるものもあれば、逆に体にダメージを与えてしまうことになります。
 タンパク質の過度な摂取は腎臓に負担をかけてしまいますし、炭水化物の過剰な摂取は肥満体質をもたらしてしまいます。脂質の摂りすぎもコレステロール値の向上によって血管を詰まらせることに繋がりますし、心臓に対する負荷を生じさせることにも繋がります。
 しかしら何をもって「健康的な食事」ということが出来るのか、専門知識がなければ判断が難しいものでもあります。
 よって、体に良い食事とはどんな食事かということを手軽に知る手段としては、「栄養士が考えた弁当」といった商品などを活用して、体で覚えることが最も手っ取り早い手法かと思います。
 また古代中国の食事に対する考え方には、色で食材を分けて、それぞれの色の効果を分類するといったものがあります。
 「色」は食事中のポリフェノールを由来とする物ですが、このポリフェノールには、抗酸化作用のほか、血糖値コントロール、免疫機能向上、心負荷軽減、コレステロール値の健全化などの、幅広い効果が知られています。「ポリフェノール」の正体がまだ知られていない時代に、食材中の「色」が持つ効能を分類した古代中国の医学者たちの洞察力には頭が下がります。
 ポリフェノールは様々な色合いで摂取することで相乗効果が期待できるので、「見た目」に心地よい食事を心がけることが有効と言えます。

薬剤師としてできることを突き詰めたい

 以上のことから分かることは、古代中国では、医師と薬剤師の役割は、実は1つであったということです。
 実際、日本に西洋医学の治験が入ってくる前には、歴史的には「漢方医」が医学の世界で活躍していました。
 彼らは患者の状態を「(しょう)」という視点から観察して、漢方薬を調合していました。
 「証」は、今でいう医学的な診断ではありません。顔色、聞き取りから分かる体質、声や体つきなどから患者の状態を区分する見分け方です。これらの「証」の見方は、今も薬剤師が薬局に入ってくる患者様を見るときの視点とあまり変わらないと感じます。
 もちろん薬剤師は医師ではないので「診断」を行うことはできません。
 しかし現代薬学の発展や、健康に関わる医療系機関や情報インフラを活用して、患者様の健康をサポートする様々な働きに着かせていただいてます。今後も学びを深めてその働きをより深くしていきたいと願ってます。

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栗原憲二
専門家

栗原憲二(薬剤師)

ふじやま薬局

店舗は整形外科並びに内科、透析医院の処方の授受を受けているため、普段から幅広いお薬を取り扱っています。在宅では、個人宅並びに施設担当。富士・富士宮地区を幅広く車で訪問させていただいております。

栗原憲二プロは静岡新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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