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栗原憲二プロは静岡新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

服薬指導は内服の患者利益を最大化するものです

栗原憲二

栗原憲二

テーマ:在宅医療、薬剤師、配薬

富士市富士宮市にて在宅医療に携わっている薬剤師の栗原です。

最近は臨時の対応で日曜日や祝日に夜間に出動する機会も増えてきました。

薬剤師が薬局に留まって患者様がやってこられるのを待ち構えているのではなく、患者様の生活圏に飛び込んで指導するのですから、当然、それをするだけの理由があります。それを今日はお伝えさせていただければと思います。

1)在宅薬剤師は自宅までお薬をお届けします

在宅と言っても、いつでも薬剤師が自宅に訪問させていただいているわけではありません。医師や看護師が定期的(基本は2週間に一度)訪問して処方箋を出してもらうとしても、お薬を近郊の薬局に取りに行かれる方も多くいらっしゃいます。

日常的な行動範囲の中で、例えばドラッグストアで処方箋を取り扱っている店舗があればとても助かりますね。

ただし最近は高齢者家庭で独居だったり、運転免許を返納された方も多くなってきております。お薬を自分で取りに行くことができなくなっている患者様がいらっしゃいます。

そういう場合に薬剤師が家までお薬を届けてくれるのであれば、それはとても助かるはずです。

2)服用状況を確認させていただきます

しかも薬剤師がなすべきことは、単にお薬をお渡しするにとどまりません。

  • お薬を飲んでどうだったか?
  • お薬に変更があるとしたらそれは何故なのか?

などを聴取させていただくことによって薬剤師としての知見を患者様に直接に活かしていくことが出来るのです。

しかも在宅での働きとなれば尚更、患者様の生活の現場に向かうわけですから、実際のお薬の服用状況を直近で目撃する機会を得ることになります。そのため、薬剤師が介入するレベルも、薬局に患者様に出向いていただく場合よりもはるかに深いものとなります。

【薬剤師が患者様から確認すべきこと】
お薬を正しく服用されているか?
お薬の効果を理解した上で服用されているか?
お薬を飲むことの副作用としてはどんなものがあるか?


薬剤師はこういったことをチェックさせていただいてます。

3)お薬の用法用量を守ることはとても大切

お薬を正しく飲むことはとても大切です。

お薬には用法用量が定められています。成人であればこの割合で飲めば適切な効果を発揮する、小児であればこれで十分効果を発揮するといった具合です。もしもそれから外れた飲み方をしていれば、お薬を飲む効果よりも、副作用による被害の方が大きくなってしまいます。

4)お薬に副作用はつきものです


お薬には必ず副作用がつきものです。たとえば痛みを抑えるお薬にロキソニンというお薬があります。痛みを誘発するプロスタグランジンという体内物質の生成を抑えるお薬で、疼痛抑制のみならず炎症などにも効果を発揮するなくてはならないお薬です。

ところがプロスタグランジンは、胃の粘膜を保護する粘液を作り出す機序にも関わっているため、ロキソニンの内服によって胃の粘膜を痛めてしまうことがあります。痛み止めは高齢者に継続的に処方されるケースが多いため、ロキソニンによる胃炎は起こりうることです。

そのためロキソニンは胃の粘膜を保護する胃薬と一緒に処方されることが多いのですが、その胃薬をいっしょに飲めているか?空腹時に飲んだりしていないか?などを確認することが大切です。

5)患者様によるお薬の自己調整は当然の権利

また、「正しく飲めているか?」ということに関しては、薬剤師として医師の処方通りに飲んでいただくことをお願いしています。薬袋に記載された通りの服用方法を患者様にお伝えし、そのように飲めているかを確認します。


その場合、ちゃんと処方通りに飲めているのであれば良いのですが、中には患者様が自己判断でお薬を調整されている場合もあります。

患者様の体のことに1番身近に接しているのは患者様自身ですし、そのお身体も患者様のものです。ですから、もしもお薬の服用方法を理解した上で自己判断で調整しているとしたら、その場合は患者様の選択を尊重しなければならないと私は思っています。

でももしもその自己調節が、不十分なお薬についての理解が原因だったり、お薬についての誤解であったとしたら、それは薬剤師としてとても歯痒いことであると感じます。そのために、そういった問題が生じないよう、お客様のお時間を多少は頂いても、お薬の説明をさせていただきたいと思っています。

6)お薬の自己調整があれば処方医に報告することが大切

ただその場合、「自己調節して服用している」ということを医師や看護師にフィードバックさせていただきたいのです。飲んでいないお薬を、あたかも飲んでいるかのように振る舞われたりするのは、その後の医師の診断を狂わせる原因にもなりかねないからです。

時々、薬剤師が内服状況の確認をしようとすると、それを嫌がり、自分で調整していることを押し隠す患者様もおられます。患者様のお身体のことですから、私どもは患者様の選択を最大限尊重したいのです。ですけども、自己調整して内服しているということは、医師と情報として共有しておくことが、次回以降の処方を相応しいものにするので、この点については患者様にご理解をお願いしている次第です。

7)お薬の効能効果を理解して服用することが大切

お薬の効果を理解した上で服用しているか?ということは、意外と大切なことです。

お薬がどのように体に効くのか、薬剤師のように薬理学的に理解していただく必要はありません。でもそのお薬の効果がどのようなものなのか?を理解していただくことは大切です。

コンプライアンスが良い、とは、患者様が医師の指示通りに服用しているということを意味しますが、より能動的に、患者様が自らお薬についての理解を深めてお薬を飲むことを「アドヒアランスが良い」と表現します。


お薬の説明をする立場として、そのように患者様が積極的に薬物治療に参加していただけるように、日々努めさせていただいてます。

たとえば頻尿のお薬であれば、それは排尿筋に作用しておしっこの漏れを防ぐのか?、それとも膀胱に作用しておしっこを溜めようとするのか?そういったことを理解していただくことは、お薬が実際に効果を発揮しているかどうかを自覚する上でとても有効なことです。お薬の効果を実感するために、まずは頭でお薬の働きを理解しておくことは大切ですし、有効と考えます。

8)副作用症状に気が付きやすくなるための説明が大切

もちろん、お薬の説明を聞いても理解ができないし、むしろ理解しなくて良いと思っている患者様も多くいらっしゃいます。そういう患者様に対応させていただくことも薬剤師の働きとして大切なことであると覚えています。

薬剤師の話を聞かないで薬局を帰ろうとされる患者様も稀にいらっしゃいます。何がしかの経験から薬剤師に対する不信感を抱かれている場合もあるでしょうし、自分のことは自分で管理する、という考え方の方もいらっしゃるでしょう。

その場合、最低限押さえておくべきお薬の内服上の注意点を簡単にお伝えすることになります。こちらの考えとしては、そうすれば副作用が出たとしても、それに気が付きやすくなると考えての事です。

お薬の副作用としては色々なものが考えられます。例えば先ほどのロキソニンについては、お薬の添付文書には以下のような「副作用症状」が一覧として掲載されています。


では、果たして薬剤師がこれらの副作用について事細かにチェックするか?というと、そうではありません。添付文書に掲載されている副作用情報には、根拠が不明なものも多数含まれているため、お薬の持っている薬効から、当然帰結される副作用症状について、その有無を優先的に確認することが多いです。

その上で、添付文書に記載されているような典型的な副作用症状の発現の有無をチェックさせていただいています。


お薬の効果と副作用は、言ってみれば表裏一体とも言えるので、その副作用症状に忍容性があるのかどうか?がポイントになります(ここで言う「忍容性」は、そのリスクを確認した上で、それでも内服を続けたりするメリットがあるかどうか?の判断です)。

最後に お薬の内服で心得るべき3つのポイント

お薬を飲む上で大切な点は以下です。

  • お薬を飲むことは治療の一環であると理解すること
  • 副作用の発現があればいち早く自覚していただくこと
  • 自己調節しているのであれば申告していただくこと


1)お薬の内服は治療行為の一環と理解して頂く

お薬を飲むということは【治療】なのだと理解していただくことが大切です。お薬の内服は外科的に物理的に体に働きかけるものではなく、お薬という化学物質を飲むことで、体が持っている自然な反応を刺激したり抑制したりすることで症状を緩和させたり無くしたりすることです。

外科的な処置は、体にメスを入れたりするといった処置を伴い、患部を切り取ったりすることで劇的な効果を発揮することがある一方、それなりに体に負担をかけます。

それに対してお薬の内服は、外科的な、劇的な効果は期待できないけども、継続して内服することで体が持っている本来の機能を活かしつつ治療を行う治療法と理解して良いでしょう。

2)副作用に早めに気がついていただく

お薬を飲んで副作用が出たかどうかについては、患者自身が内服して気がつける部分とそうでない部分があります。内服して「なんかおかしいな?」と薬剤師に問い合わせをして副作用発現が発覚する場合と、あらかじめ薬剤師が「副作用としてこういった症状がありえますので、何か気がつくことがあればお申し出ください」とお伝えしている場合があります。でも経験的には明らかに後者の方が副作用に気が付きやすいと思います。

薬剤師はお薬の効果から類推して「こういった副作用があり得る」と患者様にお伝えしているので、患者様にとってもお薬の内服と関連付けやすいと思います。・・といいますか、お薬が確かに効いているのでとしたら、少なからず副作用は発現しているので、あとは問題はそれがどの程度、忍容性を持っているかの話になるのです。

3)お薬の自己調節は出来るだけお申し出ください

また、自己判断でお薬の内服を中断したりスキップすることは、当然ながら患者様に認められた権利です。処方にそのように出たからといって、必ずそのように飲まないといけない、という義務はありません。

ただし、お薬には、すでに述べたように、用法要領の設定は、治験的にデータが取られて定められたものなので、処方通りに内服していただくことで最もお薬の効果を得られると考えて頂きたいのです。

そのため、もし自己判断で内服していないのであれば、それは次回以降の処方内容に反映されるべき事柄です。薬剤師はそれを聴取し、処方医に伝達し、次回以降の診断の材料としていただくよう報告することになります。

以上、在宅薬剤師が患者様に服薬指導する上で心掛けていることを記載しました。薬剤師が「どうしてそういうことを言っているのか?」。薬剤師の技量にもかかってくることですが、薬剤師の意図を理解していただけば、より良い薬物治療を進めていくことができると考えます。

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栗原憲二
専門家

栗原憲二(薬剤師)

ふじやま薬局

店舗は整形外科並びに内科、透析医院の処方の授受を受けているため、普段から幅広いお薬を取り扱っています。在宅では、個人宅並びに施設担当。富士・富士宮地区を幅広く車で訪問させていただいております。

栗原憲二プロは静岡新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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