町で見かける地域包括支援センターって何するところ?
富士市富士宮市にて在宅医療に携わっている薬剤師の栗原です。
在宅の現場にいると、介護を受ける立場の人たちが、いかに最後までその人らしい生活を維持していくことができるのか?という課題に真剣に向き合わなければならないと日々感じています。
その人の人生はその人が選び取ってきたものだけども、それは同時に社会の側がその人に選び取らせた結果でもあります。そういう考えに立って1人の人格に向かい合うことが大切です。
目次
1)基本は自己決定権
ただし、注意が必要な点があります。それは、介護の現場ではその被介護者のために周りがいろいろなサポートをしていますが、周りから見て「こうした方がいい」と感じることも、実際にはそれはその人の望むところではない場合もあるということです。
要するに、介護する人(ヘルパー、看護師その他の医療従事者)が、「良かれ」と思うことも、本人にとっては「余計なお世話」ということにもなりかねないわけです。
それはその人の尊厳にも関わる部分だからです。それは最も重視しなければならない点です。
2)社会がその人に持っている責務
難しいところは、その人が自分に与えられた権利を知らないがためにそういう選択(価値観)に行き着いている、ということだってありうるという点です。
10年、20年前には不可能だったけど、今は医療技術や社会制度の整備によって可能になっていることも少なくありません。
介護を受ける立場にいる人にとって、何が最善のことであるのか?
介護や医療、また福祉事業に携わる人であれば、正しい知識を持って被介護者にアプローチすることが必要です。もしもその人が陥って自分ではどうにも解決できない問題に直面しているのだとしたら、時期に適って、相応しい選択肢の提供を心がけていくことが大切です。
被介護者の尊厳は尊重しつつも、この社会に生きる1人の人格として、どのように捉えることが可能なのか?
3)ソーシャルワークという考え方
大変難しい問題かもしれませんが、最近出てきた「ソーシャルワーク」という考え方は、この問題に対して有効なアプローチ方法を提供しています。
ソーシャルワークとは、簡単にいうと社会の側が個人である人格に対して関わる責務を表した言葉です。
確かに1人の人生はその人のもの。自己決定の原則があります。
でもその人の人生、状況は、社会がその人にもたらしたものであるという見方もできます。だとするなら、その人の人生を生み出した社会の側にもその人への責務があり、その責務のあり方について、3つの視点が大事だと考えられています。
4)最小単位であるケースワーク
1つ目は個別な関係性を意味するケースワーク。この場合、その人個人というよりも、その人の家族、親族関係、親しい個人的関係を前提とした個人の捉え方です。
ケアマネージャーが作成するケアプランの前提に、その被介護者の背景が詳細に記録され関連機関において情報共有されます。
その人の生い立ちから始まり、家族構成、現在の家族関係、職務履歴などが詳細に記録され共有されます。その人の人格はその人個人のものでもありますが、こういった背景からいかにその個人が形成されているのかを浮かび上がらせることがある程度可能です。ミクロ・ソーシャルという言い方もされる社会的関係です。
5)最も具体的なグループワーク
2つ目はグループワーク。現在であればデイサービス、グループホームなどの施設における関係性のことで、メゾ・ソーシャルとも言われます。その人が持っている最も具体的な社会的関係と言っても良いものです。こういった場所で発揮されるその人特有の個性に着目することがとても大切です。
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6)コミュニティーワーク
3つ目がコミュニティーワーク。マクロ・ソーシャルとも言われます。町内会、またより広範囲な、その市町村特有の文化・社会コミュニティーと言うこともできます。
7)グループワーカーという大切な働き
どの段階もその人格を支える上で大切な要素ですが、実際的には2つ目のマゾ・ソーシャルに着目してその人にアプローチするということが最も実際的であるともいえます。
なぜならその人の来歴、家族構成などについて他者が何か変化をもたらしうる領域というのは限られており、介入できるとしてもかなりの時間と働きかけが必要であると考えるのが一般的だからです。
その点、デイ・サービスなどの人間関係においては問題が起こったときに、具体的・共時的(きょうじてき)に介入しやすく、その出来事を通してその人の人生や価値観の問題に介入しやすいと言えるからです。
そのためデイサービスなどではグループワーカーという役割に立って介入することが行われています。
その人の持っている人格を社会としてどう捉え、アプローチすべきなのかという点において、このソーシャルワークという個人の捉え方は大変有効です。全ての被介護者に関わる介護支援者ならびに医療者が持つべき視点といえます。