ドラえもんとお薬の関係
富士市富士宮市にて在宅医療に携わっている薬剤師の栗原です。
息子たちのサッカーの練習試合で初めて御前崎市を訪ねました。富士市からは車で1時間半。広島県出身の私が来たのは初めてですが、静岡出身の妻に聞いても「行ったことがない」とのことでした。今回は息子らの練習試合で来たわけですが、今後ここに来る機会はそうないだろうと思って興味深く気候風土、人々の生活の様子など観察する機会となりました。
高速を降りると長く続く茶畑がありました。
試合が早く始まるため前日に民宿に宿を取りました。息子たちと久しぶりに男たちだけで過ごす時間が取れて楽しかったです。
1)前向きな休息
「休憩」とか「休暇」というと、とにかく「休む」というイメージから「体を動かさない」と受け止めがちだと思いますが、最近はむしろ体に負荷をかけて活動的になることが推奨されている風潮になってきました。
厚生省が発表している「健康日本21」においても運動の効用について次のように言われています。
身体活動量が多い者や、運動をよく行っている者は、総死亡、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、結腸がんなどの罹患率や死亡率が低いこと、また、身体活動や運動が、メンタルヘルスや生活の質の改善に効果をもたらすことが認められている。
これらの効能をお薬で解決しようとしたら大変な量のお薬を内服しなければならなくなるでしょう。「運動」は、「中等度以上」(健康日本21)が勧められており、具体的に「これらのスポーツが良い」といったたことはないのですが、以下にあるように、普段行っている生活・運動習慣の延長で意識的に活動を行うことが推奨されていると言えるでしょう。
家事、庭仕事、通勤のための歩行などの日常生活活動、余暇に行なう趣味・レジャー活動や運動・スポーツなど
バトミントンでもジョギングでも、自分の得意で負担にならない運動を習慣的に行うこと、またそのサークルに入って活動することが推奨されているとも言えます。
またより実践的で有効な方法としては歩行が特別に取り上げられており、成人男性であれば1日あたり10,000歩が推奨されています。
10,000歩といえば大変な数値のようですが、健康日本21では当面の目標として、平均的な歩数である8,000歩に加えて意識的に、1,000歩、歩くことが推奨されてます。
男女とも歩数の1,000歩増加を目指し、1日平均歩数を男性9,200歩、女性8,300歩程度を目標とする。1,000歩は約10分の歩行で得られる歩数であり、距離としては600~700mに相当する。
2)薬剤師はまずお薬内服を勧める立場にない
薬剤師は薬事に関わることで公衆衛生の向上に寄与する働きを担っています。しかし(言うまでもないことですが)、何でもお薬で直せば良いと考えているわけではありません。
薬剤師が公衆衛生向上のために人々に伝えるべきことは、お薬との正しい付き合い方です。
確かに大抵の疾病に対してそれを治療するお薬は開発されているものです。でも取り組むべき課題は、その疾病を生じさせた原因そのものを取り除くことであって、その点に関してお薬が万能なわけではない。お薬を効果的に使用することで根本の原因が取り除かれる補佐をさせていただくのが薬剤の働きというものです。
3)お薬の服用の前にすべきこと
糖尿病患者や痛風を患っている方にまずお伺いするのは1)食事習慣、2)運動習慣、3)生活習慣などです。それらをほっといてお薬で疾病をコントロールすることなど到底不可能です。
繰り返しますが、薬剤師ができることは、体の健康を回復させるために効果的なお薬の使用方法を患者様に開示し服用を導くことです。
4)服薬指導は繊細な仕事
お薬に含まれる薬効成分はほんの微量なもの。大抵のお薬の用量はmg単位です。そんな、耳かき一杯程度の成分が体に作用して効果を発揮するのですから、その服用指導はとても大切です。
お薬を効果的に体内で働かせて元の健康的な体の回復のために知恵を絞って服薬指導をする。生活習慣の上での課題があるとしたら、患者様の様子を伺いつつ、適切に(時には腹を割って)指導していくのです。
患者様は色々です。プライベートなことには踏み込んでほしくない雰囲気を漂わせている人もいれば、積極的に自分を開示して薬剤師から情報を得ようとしている人・・。
薬剤師に対して心を開こうとしない理由は以下のような場合があるでしょう。
- 過去の経験から薬剤師に対する信頼を失っている
- そもそも自分のことは自分で決めるという考え方
- 自分の抱えている疾病について自分で調べて、「人から教えられるまだもなく自分のことは自分が1番わかっている」と考えている
当然、それぞれの立場に対して薬剤師は、手にしうる限りの情報から判断しアプローチしていくことが求められます。
5)患者様との関係を構築する
一度対応した患者様については「薬歴」という形でやり取りの情報を保持していきますから、来客の回数を重ねるたびに情報が収集されていきます。ところが、「この患者様はこういう考えの方」と対応を決めて対応していたとしても、対応する薬剤師が変わった途端にその患者様の様子が変わることは結構あります。
要するに、薬剤師は自分の主観で患者様を見るのだけども、反対に、患者様の側が自分をどう見ているのか?について、手探りしつつ、自分の対応を振り返りつつ対応を考えていかなければならないわけです。
ということはどういうことになるかというと、薬剤師という存在は、
- 自分という存在の色を限りなく固定化しないで、
- 色々な側面を患者様に提供しつつ
- 患者様との相応しい距離感を探っていかなければならない
ということなのです。
薬剤師が患者様と関わる上では、自分という色があるからこそ患者様と近づける一方で、その自分という色があるからこその障壁もあるのだと理解することがとても大切。
自分色のゆえの課題を克服するためには、自分自身に対するアンテナを見失うことなく、心身の健康を保って日々の業務にあたっていくということが大切と言えるでしょう。
御前崎は漁業と原発の街として知られています。福島第1原発の事故以降、運行は厳しい風を受けているようですが、原発は止めておくのも運用するのと同等(もしくはそれ以上?)のリスクを背負っていると聞いてます(私の理解で良いのかな?)。
この美しい風景を前に美味しい佃煮を頂きつつ、いろいろ考えさせられる小旅行でした。来週も子供達からもらった元気を仕事に生かしていきたいと思ってます。