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栗原憲二

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栗原憲二(くりはらけんじ) / 薬剤師

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コラム

肝臓の働きって凄い

2024年3月9日 公開 / 2024年3月10日更新

テーマ:在宅医療、薬剤師、配薬

コラムカテゴリ:美容・健康

富士市富士宮市にて在宅医療に携わっている薬剤師の栗原です。

今日は「肝臓」の働きについて紹介していきたいと思います。


「肝臓」が大事ということは皆さんご存知のことと思います。肝機能の「数値」ということで身近な事例は、アルコール摂取によって肝臓の数値が高まるので、「休肝日」が必要だということでしょうか。


ということは、アルコールと肝臓とは何かしら関係があるのだろう、くらいのことはイメージがつきそうです。

1)肝臓の4つの働き

基本的に肝臓の働きは4つに分けることができます。


1)体にとって好ましくない異物を代謝(分解、排出)する
2)エネルギーを蓄える
3)体にとって必要な栄養素を体の隅々に行き渡すために血漿成分を作り出し血中に放出する
4)胆汁の生成

 
以下、順次説明していきたいと思います。

1)好ましくない異物を代謝する

肝臓に運ばれてきたものは、体にとって必要なものとそうでないものとに分けられます。それを区分けていくのが肝臓の役割です。つまり最初の肝臓の働きは、小腸で吸収された栄養素を、初めの段階で「ふるいにかける」ということです。

食物に含まれる各種の栄養素は、口腔内での咀嚼、胃酸による分解などを経て、小腸から吸収され、一度肝臓を通って全身に運ばれていきます。

しかし体に入るものは全てが体にとって好ましいものではありません。

まずは胃酸で殺菌されたのちに、吸収部位である小腸の上皮細胞でも異物があれば代謝(解毒、排泄)がなされて、肝臓に入り込んだものはさらに解毒される過程を経ます。

肝臓にある代謝酵素が、入ってきた「異物」に装飾を加え、体から排出されるための、いわば目印をつけるのです。

この肝臓による体に対する防御作用は、逆にいうと肝臓の側がダメージを食らってしまう可能性も作り出します。例えば過剰に取り込まれたアルコールは肝臓にダメージを与えます。肝臓の細胞が破壊されると、その中にある消化酵素が血中に流れ出ます。血液検査の数値で引っかかるのは、つまりはこの値なのです。

2)エネルギーを作り、蓄える

肝臓という器官は体内に最初に栄養素が入り込む入り口にあたりますが、ここでブドウ糖をグリコーゲンという長い糖鎖の形で保持し、主に脳で消費される血糖の産生を行っています。脳はブドウ糖を大量に消費する臓器ですが、この機能維持のために肝臓の役割は不可欠なものです。

血糖値が上がりすぎると血管の内皮細胞が損傷してしまいますが、肝臓は血糖値をうまくコントロールすることでこれを防いでいます。

また脂質を肝臓に溜め飲んで、エネルギーの枯渇という緊急事態に備え、必要な時に脂質を糖分に分解して全身に供給する働きを担っています。

3)血漿成分を作り出す

血中にアルブミンといった形でタンパク質(アミノ酸)を放出し、細胞成分を全身に供給することも肝臓の重要な役割となっています。アミノ酸には様々な種類のものが知られていますが、特定のアミノ酸が不足した時には肝臓がそのアミノ酸を他のアミノ酸から合成するという役割も担っています。

また全身の細胞は、この表面が細胞膜で形成されていますが、その細胞膜の成分をコレステロールという形で全身に送り出すのも肝臓の役割の1つです。細胞膜には生命を維持するための様々な情報伝達網(たとえば免疫系)が備わっておりますが、これを支えているのも肝臓というわけです。

4)胆汁の生成

胆汁は肝臓で合成され胆管を通って小腸に分泌されます。これは食物として口に入った脂質の消化吸収に用いられている他、余分なコレステロールをビリルビンという形で体外に放出する役割も担っています。体に吸収されないで便として放出される際は、便に油分を与えて大腸を上手く通りやすく痩せる働きも担っています。

以上が主な肝臓の役割になりますが、これらの働きを人工的に作り出すことは、現在は出来ません。それを成人男性であれば1kg〜1.5kgの肝臓が担っているのです。

2)肝機能維持のために用いられる薬剤

では、この肝臓が何らかの障害を受けた時には、現在、どのような薬剤があるのでしょうか?

肝臓が障害された時に、上記の1)解毒作用、2)エネルギー代謝、3)タンパク質(アミノ酸)代謝、4)胆汁合成という生命維持に不可欠な機能がうまく働かなくなるのですから大変なのはいうまでもありません。十分に肝臓の役割の代わりになるものではありませんが、少なくとも肝臓の機能を補ったり、その機能維持のために薬剤が開発されています。

1)解毒作用のある薬剤

解毒作用のあるお薬としてはラクツロースシロップなどが知られています。これは腸内環境を酸性に保つことで、腸内で生成されてしまう体にとって毒性のあるアンモニアの生成を抑える働きを持っています。

肝臓そのものが障害されてしまうと、肝臓の細胞内に保持されている消化酵素が血中に流れ出て、それが全身に悪影響をもたらしてしまいます。この流出する消化酵素を減少させるのが強力ネオミノファーゲンシーです。

2)エネルギー代謝に関わるお薬

肝臓のエネルギー代謝の主な働きは血糖値のコントロールですから、肝臓が障害を受けた時には血糖コントロール不良となり、いわゆる糖尿病の症状が出ます。このコントロールのために血糖値コントロールのお薬が用いられます。

大切なことは血中の血糖値をコントロールして血管壁の障害を生じさせないために、血中の血糖値をコントロールすることのできる唯一のホルモンであるインスリンの働きを助けたり(ピオグリタゾン、メトホルミン、トラゼンタなど)、補ったりするお薬(インスリン注射製剤)が用いられます。また血中のブドウ糖を尿中に排出するスーグラやフォシーガなどが知られています。

一方で肝臓による脂質コントロールがうまく機能しなくなる事に対しては、対策がとても難しいのです。なぜなら脂質コントロールのためのお薬はいくつもありますが、そもそもが肝機能が低下している場合、体による脂質コントロールが破綻している状態なので、お薬で対策することには限界があるのです。

この場合、有効な対策は、食事制限によって暴飲暴食、偏った食事を防ぐことです。つまり体に入ってくる脂質そのものをコントロールすることです。

3)タンパク質(アミノ酸)代謝に関わるお薬

肝臓が障害を受けて肝硬変などの疾病が進行すると、肝臓でうまく体に必要なアミノ酸を合成できなくなります。そのため筋肉で体に必要なアミノ酸が生成されるのですが、その際、バリン、ロイシン、イソロイシンという分岐鎖アミノ酸と言われるアミノ酸の仲間(必須アミノ酸と呼ばれ、体内で合成出来ない)が必要になり、体から不足します。それを補うのがリーバクト配合顆粒です。これは肝臓の機能を保つためのエネルギー源としても用いられるため、落ち込んだ肝臓の機能維持にとても有効なお薬です。

また体にとって毒性のあるアンモニアを解毒することにより、肝臓がさらに障害を受けることからも守ってくれるお薬です。「お薬」というと、何か人工的な合成物資をイメージする人が多いと思いますが、リーバクトといったアミノ酸製剤も立派な「お薬」なのです。

4)胆汁合成に関わるお薬

ウルソというお薬は、そのものが胆汁の代わりになってくれるものです。肝臓が胆汁を送り出す機能が低下しているために、薬として代わりに補ってあげるためのお薬です。

このウルソ自体が肝臓の保護作用も担っています。また肝機能低下により胆汁が枯渇すると胆管内で胆汁が石灰化して詰りを生じさせることがあります。これは膵炎を引き起こすことにつながるため、その予防のためにも多様されるお薬です。

その他、肝機能維持のために用いられるお薬としては、ウイルス性肝炎に用いられる各種の抗ウイルス薬が知られています。

3)肝機能維持のために必要な対策

さてここまで、肝臓の主な役割と、肝臓の疾病に用いられるお薬の紹介をしてきました。お薬そのものが肝臓の機能の代わりになるものではありません。疲弊した肝臓の代わりに役割を担うことで肝臓を休ませ、肝機能機能の回復をさせたり、肝機能が低下することによって体内に回る毒素を消去させたりする働きを担うものです。

では、肝機能を維持するために何ができるかを最後に考えたいと思います。

1)低下的に血液検査を受け、肝数値に以上がないかをチェックしましょう。

2)肝臓の機能が不全に陥る原因として多いのが、肝肥大です。肝臓に脂肪分が過剰に溜まることで生じるので、暴飲暴食を避けましょう。


3)アルコール摂取は程々にしましょう。過度なアルコールは確実に肝機能を低下させます。1日あたり、アルコールにして20cc(缶ビール1本程度)に抑え、その上で肝機能が回復するための休肝日を設けましょう。肝臓は本来はとても回復力のある臓器ですが、慢性的なアルコール摂取がこの回復を妨げることになります。

4)腸内環境を整えるよう心がけましょう。腸内には多量の腸内細菌がおり、この環境が悪くなると腸内でアンモニアが発生し、それが腸から吸収されて体のいろいろな場所を攻撃します。食物繊維の摂取を心がけ、発酵食品など、腸内環境に良いとされる食事を心がけましょう。

肝臓の持つ、多様かつ複雑な役割に十分にとって代わるお薬や機器は現在のところありません。あくまでも肝臓の働きを助けたり、それ以上悪くならないように助けてあげるお薬だけです。ですから、肝機能が低下する前に、日頃から肝臓を労っていくことがとても大切なのです。

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