『マクリーンの川』を読んでみた
こんにちは。富士市富士宮市にて在宅医療に携わっている薬剤師の栗原です。
お薬の飲み合わせに注意って、一度は言われた事があると思います。もしかしたらテレビやラジオでで注意喚起がされた番組に接したこともあるかもしれません。
1)複数の病院にかかっている場合
お薬の飲み合わせの問題が生じることが多いのは、複数の病院にかかっている患者様の場合です。
たとえば整形外科にかかっていて、同時に内科で慢性疾患のお薬(たとえば高血圧とか糖尿病とか)を出されている場合もあるでしょう。
基本的にはお薬を出す医師は患者様が他の病院にかかってあるかをチェックしているため、併用して都合の悪いお薬は出されることはありません。
ただし、患者様がお薬手帳を持っていなかったり、患者様が重要なことではないだろうと自己判断して医師に使用中のお薬を伝えなかったりする場合などは飲み合わせの問題が生じる事があります。
2)飲み合わせの問題が生じる背景
ここで言う「飲み合わせ」の問題とは、一緒に服用することでお薬の作用が増強してしまったり、逆に減少してしまうことです。
通常お薬は体にとって「異物」であるため、お薬を服用するとその作用を減弱させるように体の生理反応が生じます。いわゆる「代謝」です。
ところが複数のお薬を併用することによって体内の「代謝酵素」が足りなくなって、お薬の作用が想定よりも強くなってしまう事があるのです。
お薬の「用法用量」は成人や小児、体重や年齢によって大まかに決められているのですが、お薬の「併用」が想定外の作用を生じさせてしまうのです。
3)副作用症状の増大
お薬の作用が強くなってしまう、ということは、反面、お薬の持っている副作用が強く出てしまうということでもあります。
たとえば痛み止めのロキソニンは、痛みを誘発する生理物質の生成を抑えますが、同時に胃粘膜を守る生理物質の生成も抑制してしまう作用も持ちます。この、お薬が本来目指していない作用のことを「副作用」と言いますが、お薬の併用によってそれが生じてしまう可能性が高まってしまうわけです。
また、併用薬による副作用症状の増大には当然気をつけなければならないのですが、健康食品や嗜好品なども、お薬との飲み合わせの問題が生じる場合があります。
例えば骨粗鬆症の危険性を指摘されている方で、カルシウムウエハースを日常的に摂られている方の場合、病院で処方かれる骨粗鬆症のお薬との飲み合わせについて(この場合は、血中カルシウム値の値などです)、血液検査などを通してやはり注意する必要があります。
またグレープフルーツは作用が強めの特定のお薬の作用を増大させてしまうということで、現在は病院食で出てくる機会はほとんどなくなっています。これは通常であれば体内から代謝(分解、排泄)されるはずのお薬の血中濃度が、そのお薬を代謝(分解)する酵素が阻害されることで増大してしまうことがあるためです。
4)飲み合わせで作用が減弱させてしまう場合
逆にお薬を併用する事でお薬の効果が減弱してしまう事があります。
たとえば貧血などに処方されるクエン酸第一鉄や便秘に処方されるマグマットは、抗生物質と併用する事でその作用が少なくさせる事があります。これは鉄剤やマグマットに含まれるマグネシウムが抗生物質と合体してしまう事で作用しなくなるからです。
お薬の用法用量は、お薬が製剤化される段階で統計的に考慮されて決まっていますが、「併用」がその設定を台無しにしてしまうのです。
5)1番良い対策はお薬手帳を作成すること
お薬の飲み合わせの問題を回避させるために最も有効な方法は、お薬手帳を作成し、病院にかかる際だけでなく、常に自分以外の人でも取り出せる形で保持しておくということです。自分自身に何か緊急事態が生じて、自分の意思を表すことが難しくなる事態も想定しておくことが大切です。
お薬手帳には、これまでのお薬の服用歴が履歴として残ります。それだけでなく、副作用歴やアレルギー歴、現病名などを表の方に記載して頂くと尚良い。専門家が見た際に、服用もしくは併用して良いお薬とそうでないお薬を見分けることが出来るからです。
もしもご家族が病院にかかる際にコミュニケーション上の課題を抱えている可能性があったりしたら、一緒に付き添って頂きたいと思います。また出来るだけ「お薬手帳」を薬局で作って頂いて病院ならびに薬局に提示する事を習慣づけて頂きたいと願います。