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胃腸の不調――忙しい30代ほど起きやすい「胃のサイン」を薬剤師が整理します

栗原憲二

栗原憲二

テーマ:かかりつけ薬剤師

富士市・富士宮市で在宅医療に携わっている薬剤師の栗原です。

「最近、胃が重い」
「胸焼けやゲップが増えた」
「ストレスが続くと、みぞおちが痛む」
「市販の胃薬でごまかしているが、スッキリしない」

こうした胃腸トラブルは、特に忙しい30代の働き盛りに増えやすい印象があります。
 胃は“気合い”で動く臓器ではなく、睡眠・ストレス・食事・薬の影響をダイレクトに受ける、いわばコンディションの指標です。

実際、胃薬として今も用いられているスルピリドは、飲むと精神的にも落ち着くという面があり、その作用を手がかりに新しい薬の研究が進んで、現在流通する精神系のお薬の原型にもつながっていきました。
 それだけ、胃の状態は私たちの日常生活にとって身近で、心身のバランスとも深く関わる問題と言えます。

本記事では、①胃腸の不調の原因②代表的な疾病(症状)、それらに対する③有効な対処法と予防を、できるだけ整理して紹介していきます。




0) まず確認:早めの受診を考えたいサイン

胃腸の不調は多くが生活習慣やストレスで起こりますが、次のような場合は自己判断で引き延ばさず、消化器内科での相談をおすすめします。
•症状が長引き、日常生活に支障が出る
•痛みが強い、または悪化していく
•便が黒っぽい、出血が疑われる
•体重が落ちる、食欲が落ちる

「仕事が忙しいからこそ、受診の判断を後回しにしがち」ですが、ここはリスク管理として押さえておきたいポイントです。



①胃腸の不調の原因


胃腸の不調は、原因が一つだけとは限りません。
 しかし整理すると、概ね「6つの要因」に分けて考えると見通しが良くなります。



1)胃酸が出過ぎ・バランスが崩れる


胃は体において、生命維持に必要な栄養素を分解して消化吸収しやすくする目的を持っています。
 食物が胃に入ると、刺激に反応して胃酸やタンパク質を分解するペプシンが放出されます

胃酸は非常に酸性度が高く、食べ物を分解する反面、胃そのものにも攻撃性があります。
 通常は、胃粘膜を覆う粘液が胃酸やペプシンから胃を守っています。

しかし自律神経の乱れなどで交感神経が優位の状態が続くと、胃腸の血管が収縮し、血流量が減ると同時に胃酸産生も抑制されます。
 一方で、自律神経は交感神経と副交感神経のバランスによって成り立っているため、反射的に副交感神経も働き、胃腸の活動が不安定な形で継続されることがあります。
結果として、胃酸と胃粘液のバランスが崩れて胃腸が痛む原因となるのです。



2)胃を守る成分が不足している(防御力低下)


胃の表面は粘膜ですが、その粘膜を覆うのが胃粘液です。
 胃酸が産生されると同時に胃粘液もつくられ、この胃粘液が、強い酸性度(pH1~2)をもつ胃酸やペプシンから胃を守っています。

ところが交感神経が優位になり続けると、胃粘液の産生が遅れ、胃酸から胃を守りきれなくなることがあります。



3)精神的な失調(ストレスと自律神経)


緊張状態が続くことで交感神経が優位になり、自律神経の乱れが生じます
精神的な緊張が身体症状として現れるとき、胃腸の変調が出やすいのはよく知られています。

「胃腸を整えること」は、単なる胃の問題ではなく、心身の健康を保つための重要な土台でもあります。



4)食生活・生活習慣・嗜好品


夏場は暑さで食欲が低下し、水分摂取が増えがちです。
 水分を摂りすぎると胃酸が薄まり消化能が低下し、食物が長く胃に留まり胃が疲れる→胃もたれが起こります。

キャンプや外食などで肉類など脂っこいものを摂ると胃内に食物が長く留まり、同様に胃の疲れが生じることもあります。
 季節が変わっても、食べ過ぎで膨満感や逆流が起きたり、食道炎につながる場合もあるため、通年で注意が必要です。

また、激辛食タバコなどの刺激は胃の保護粘膜を痛めやすい因子です。
 塩分の取りすぎも胃に良くないことが知られており、炎症や胃がんの発生頻度との関連が統計的に示されています。

アルコールも注意が必要です。
少量の食前酒は胃酸分泌を促し消化を助ける一面がありますが、空腹時に過度に摂ると胃粘膜を傷め、胃炎の原因になり得ます。



5)薬による副作用は軽視できない


お薬には必ずといって良いほど副作用があります。
 副作用とは、本来は望んでいないお薬の働きです

特にセレコキシブ、アスピリン、ロキソニンなどのNSAIDsは、痛みの原因となるプロスタグランジン産生を抑えます。
 ところがプロスタグランジンは同時に、胃の粘膜保護にも関わる因子です。
そのため、継続的な痛み止めの服用は胃の障害の有無について注視していく必要があります。

また、感染症で抗菌剤を服用した後に出血症状が起こることもあります。
 原因は不明な部分もありますが、抗菌剤によって腸内細菌のバランスが崩れることや、腸内炎症などの可能性が考えられます。



6)ピロリ菌感染は胃炎・胃がんの大きな原因


20世紀に入り、pH1~2という強酸の胃内でも生存できる菌がいて、それが胃炎や胃がんに関与していることが明らかになりました。
 それがピロリ菌です。

胃潰瘍や胃がんを持つ方の胃からピロリ菌が高確率で検出されることが知られています。
 この菌は尿素を分解してアンモニアをつくり、胃酸を中和して自分の身を守るのですが、
 そのアンモニアが胃壁への攻撃因子となり得るのです。



②胃や消化器の代表的な症状・病気


ここからは「症状から当たりをつける」ために、代表的な疾患を整理します。
 忙しい方ほど「放置→悪化→長期化」になりやすいので、早めに見立てを持つことが大切です。



1)逆流性食道炎


胃には食物を保つために「幽門」と「噴門」という扉があります。
 噴門の閉まりが悪くなると、胃液が食道に逆流し、食道を傷つけることが起こります。

逆流性食道炎は再発しやすく、長期的に胃薬を用いる場合も少なくありません。
 ゲップや胸焼けが続く場合は、早めに消化器内科の受診をおすすめします



2)胃潰瘍・十二指腸潰瘍


粘膜だけでなく、その下層にある筋膜層などにも障害が及ぶ状態を潰瘍と言います。
 粘膜にとどまる場合はびらんで、一般に胃炎と呼ばれることがあります。

潰瘍はびらんより治るのに時間がかかり、根治に手間を要します
 早い段階で薬物療法や生活習慣の調整が重要です。



3)胃痛・胸焼け


胃痛はみぞおち周辺に出ることが多いとされます。
 症状が出たら、バリウム検査や胃カメラなどの診断を早めに受けることが大事です。
 胸焼けが中心なら、逆流性食道炎の可能性も考えます。



4)機能性ディスペプシア


胃炎など明確な病変がないのに、胃痛や胸焼けに似た症状が続く状態です。
 ストレスや生活習慣が複合的に関係し、胃腸運動が低下していると考えられています。



③胃腸の不調をどう整えるか(対処法)


対処は大きく4本柱で整理できます。
 「何から手をつけるか」を明確にすると、改善までの道筋が見えやすくなります。



1)胃酸の産生を抑える


最も直接的に効果を発揮するのが、胃酸の産生を抑えるお薬です。
 ヒスタミンの働きを抑えるものや、胃酸分泌のポンプ機能を阻害する(プロトンポンプ阻害薬)などが知られています。



2)胃の保護作用を強める


胃粘液をつくらせたり、炎症を修復する薬としてテプレノン、レバミピド、マーズレンなどが用いられます。
 アルロイドGゲル剤や、ポラプレジンクなどが選択されることもあります。

食事面では、納豆、オクラ、山芋、メカブなど水溶性食物繊維は胃粘膜の保護に役立つことがあります。
 胃腸を守る工夫は、薬だけでなく「日常の運用」でも作れます。



3)胃腸の運動を促す


胃から腸への排出を促し負担を軽くするモサプリド、アコファイドなどがあります。
 漢方の大建中湯も、高齢者に用いられることの多い薬です。

便秘は腸の動きを妨げ、全体の消化機能に影響します。
 便秘治療にはマグミット、モビコール、センノヒド、大黄甘草湯などが使われます。

慢性的に腸の動きが低下している高齢者は少なくありません
 また、不定愁訴(不安・不眠・体調不良)を抱え、本人だけが抱え込んでいることも珍しくありません。
 胃腸の動きが滞ることが、それらの症状に関与している可能性も考えられます。

自律神経の調整という意味では、「休む時間」と「動く時間」を曖昧にしないことが重要です。
 サウナと冷水浴の“整う”感覚が分かりやすい例ですが、交感神経と副交感神経の切り替えは生活全体の設計に関わります。
 夜更かしや断続的な昼寝が続くと、胃腸にとっては休みと活動が中途半端になり、消化不全や炎症の原因になり得ます。



4)除菌する


除菌とは、胃内にピロリ菌が存在する場合に抗菌剤でなくすことです。
 胃酸が抗菌剤の効果を弱めるため、胃酸を抑える薬も併用します。
 除菌は「正しい服用」が重要で、服用方法に問題があると効果が半減し、失敗につながります。
 疑問点があれば、その場で薬剤師に確認していただきたいと思います。



④胃潰瘍・胃炎・胃がんをどう予防するか


予防は「気合い」ではなく、再現性のある仕組み(習慣)を作ることです。
 ビジネスでいうなら、再発防止の運用設計に近いものです。



1)ストレスを溜め込まないこと


ストレスは交感神経を刺激し、自律神経の乱れを生じさせます
趣味、職場以外の人間関係、地域活動など、複数の「居場所」を持つことが助けになると言われています。
 要するに、ストレスが溜まる前に切り替える仕組みを作ることです。

運動、マインドフルネス、週3回程度の軽いランニングなどが心身の健康維持に役立つという報告もあります。
 暴飲暴食で紛らわせるほど、胃腸は悪循環に入りやすくなります。



2)刺激物・過度のアルコール・嗜好品との付き合い方


激辛、塩分、アルコール、タバコは胃腸に負担がかかります。
 完全にゼロにできなくても、「守る工夫」を入れることが現実的です。

キャベツに含まれるビタミンUは胃粘膜を保つ働きが知られています。
 牛乳の乳タンパクも胃の保護作用が期待されます(冷たい牛乳で胃もたれが出る方は温めるのがおすすめです)。

アルコールは、空腹で飲むほど胃壁への刺激が強くなりやすいので、食事と組み合わせることが基本となります。



3)食生活(脂・水分・食べ過ぎに注意)


脂っこい食事は消化に時間がかかり、胃に負担をかけます。
 水分ばかり摂ることも胃酸を薄め、消化不全のきっかけになり得ます。
 食事中の水分は「喉を整える程度」に抑えるのがポイントです。

胃に入った食物は2時間前後かけて消化され小腸へ送られます。
 脂の摂りすぎと水分摂取量を意識することが、胃腸の負担軽減に直結します



4)不調を感じたら消化器内科に迷わず相談する


胃がん患者の大多数にはピロリ菌が胃内に存在していると言われています。
 幼少期に感染していると、症状が出た時には侵害が進んでいる場合も考えられます。
 両親に胃腸障害があったり、自分自身がそうである場合には、子どもたちの検査も含めて一度検査を検討するのが良いでしょう。



5)服用しているお薬は専門家の力を借りる


NSAIDsなど、胃粘膜の働きを阻害し得る薬があります。
 貼り薬でも長期使用では影響を疑う場面があります。
 抗菌剤では腸内環境が乱れることもあるため、自己判断の中断は避け、処方通りに服用しましょう。

そのうえで、気になる症状があるときは遠慮なく薬剤師に相談してください。
 お薬の内容や飲み合わせ、胃腸への影響をチェックするのが薬剤師の役割です。



まとめ:今日からできる「胃腸の再発防止チェックリスト」
•食事は「脂+水分」を増やしすぎない
•就寝前の食事・飲酒を減らす(逆流の予防)
•胸焼け・胃痛・胃もたれが続くなら、自己判断で引き延ばさない
•痛み止め(NSAIDs)や抗菌剤を使っている人は、胃腸症状を記録する
•気になる時は、薬局で「飲み合わせ」「胃への影響」を必ず確認する

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栗原憲二
専門家

栗原憲二(薬剤師)

ふじやま薬局

店舗は整形外科並びに内科、透析医院の処方の授受を受けているため、普段から幅広いお薬を取り扱っています。在宅では、個人宅並びに施設担当。富士・富士宮地区を幅広く車で訪問させていただいております。

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