SORA-Qにワクワクするもう1つの理由
富士市にて在宅医療に携わっているふじやま薬局の薬剤師栗原です。
今日は果たして「薬剤師は薬を飲まない?」のかどうかについて現場に関わる者として自分なりに答えを用意してみたいと思いました。
お薬は正しい服用が基本
そもそも論として自分が飲まない(飲むことを推奨しない)お薬を患者様にお勧めするというのは自己欺瞞ですね。それでも私は薬剤師として現場でお薬を出しているので、少なくとも私は言行一致の観点から、お薬を飲むことを推奨している人間の1人です。
お薬は副作用はあるにしても、正しい服用を守れば、その効果はマイナスを補うに余りあるものです。特に販売されてから3年以上経っても広く流通している新しいお薬(たとえばリウマチ薬や糖尿病のお薬など)、また昔から飲まれていて今も多く飲まれているお薬(例えばカロナールやバイアスピリン)については、もし医者が処方箋を出せば間違いなく飲んだ方が良いです。
ではそれ以外のお薬は?
新しいお薬は既存のお薬に対して優位性を持つ
新しく販売されるお薬は、少なくともデータ上は、先行するお薬に対して薬理薬効上の優位性を持つものと判定されたものです。でもさらに後で出てきたお薬がより有効性を持っていたり、(数として多くはありませんが)何かしら重大性のある副作用が出て販売中止になったりするといったこともあるわけです。ですから基本は、お薬として販売されているものの殆どは、疾病を抱えた人にとっては利益をもたらすものと考えて差し支えありません。
大事なことは、自分に必要なお薬を飲むこと
でも、以上のことに矛盾するようですが、お薬そのものは良いものですが、「その人」にとって飲まなくて済むのであれば、当然、飲まないに越したことはありません。「飲まなくても良いお薬」を飲むと、むしろ副作用というマイナスが大きくなるからです。
お薬の効果作用というものは、一人一人の疾病や体質、状態を考慮した上で判断すべき事柄であって、お薬だけ見て良い悪いを判断できるものでは無いわけです。例えば抗がん剤は、細胞の分裂を阻害するという点では「生」とは反対方向のベクトルを持ちますが、がん患者にとっては最も細胞分裂の激しいがん細胞の増殖を防ぐという点で良い場合があるといった具合です。つまり「一人一人の疾病や体質、状態に合わせたお薬の服薬」ということが大切なのであって、お薬だけ見て良い悪いを判断することは出来ないのです。
薬剤師はお薬を飲まない?
でも、こう考える人もいらっしゃるでしょう。
「実際のところ『薬剤師は薬を飲まない』といったタイトルの本も売られており、ベストセラーになっていたりするではないか?」と。それは本当なのか?と。
この点について簡単に薬剤師としてお答えすると、「薬剤師はお薬のことを知っているので、無駄なお薬の服用はしない」のだと、私なら答えます。
刺激的なタイトルに踊らされないのが大事
本は売れるために刺激性のあるタイトルをつけることが少なくありません。刺激的なタイトルだなと思って読み進めてみると、意外とバランスの取れた内容であることも珍しくありません。どんなタイトルの本であれ吟味ということが必要なわけです。ですからタイトルだけ見て、それを盲信してお薬を自分や家族から遠ざけるのは避けた方が良いと私は考えてます。
さて、以上のことを踏まえた上で、私は次のようにも提案したいと思います。
努めて調べてみるのが大事
もしもお薬について疑義があるのであれば、自分が飽きる程度には調べたほうが良い、と。そのために身近な薬剤師に質問したり、出来たら自分で本を読んだりインターネットを検索していただきたい、と。
お薬の勉強をしている薬剤師だって、お薬の全てを知っているわけではありません。「お薬反対」の内容を持った本から、むしろ学ぶこと(というか、内容に同意すること)も無いわけではありません。「確かにそうだよな」と思わされることもあるわけです(表現の刺激性や、お薬の良い面が見えないなどの欠点こそあれ)。
大切なことは、お薬と正しく付き合っていくということです。そのために、今後も自分の経験や知識を1人でも多くの方々と共有していきたいと思っています。今後ともよろしくお願いします。