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栗原憲二

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栗原憲二(くりはらけんじ) / 薬剤師

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コラム

「今」に生きる技法

2023年6月18日

テーマ:時間管理、タスク管理、マインドフルネス

コラムカテゴリ:くらし

 おはようございます。富士・富士宮地区にて在宅医療に携わっている薬剤師の栗原です。今日は書評をしたいと思います。

1)薬剤師は日々、多くの判断を正確に下す必要に迫られる仕事

 薬剤師は日々、いろいろな判断を下す仕事です。お薬1つを棚から取り出して患者様にお渡しする行為をとっても、決して注意力が散漫な状態で行うことのできるものではありません。
 また毎月勉強会も行われ、新しいお薬についての情報収集も必要です。要するに薬剤師は、日々の忙しい業務の合間を縫って、学びを続けています。
 そのような中で、いかに仕事に向かい合うことにおいて自分の集中力を最適化していくかということは、当然大きなテーマなっています。

2)専門家の手解きから学ぶ

 『今日一日に集中する力』。堀田秀吾氏の一冊ですが、上記のような問題意識の中、手に取ったものです。https://amzn.asia/d/iBAzOdy

 (この本の内容について当然触れていきたいと思うのですが、以前から少し書評を書きたいなと思っていた本が溜まってきているので、それらにも触れつつ、この本の時代的な背景についても考えていきたいと思います。)
 
 はじめてこの堀田氏の本を読みました。大学の先生であるということもあるのか、情報がよく整理されていると感じました。自分でインターネットを色々検索して調べる手間も省けるような印象です。

 そう。意外と「自分で検索する」という手間はかかるものです。「調べよう」と思っていても、調べようとしていたキーワードや視点を忘れてしまったり、実際調べたとしても、意外と質の良い情報に辿り着くことができなかったり・・。
 
 誰もが情報にはアクセスできるはずなのにそれができない・・。また、出来たとしても、情報を整理することができなかったりします。結局、何の分野であれ、その道の専門家の方に情報の収集並びに整理をお任せし、あとは対価をお支払いしてしまった方が時間も労力も有効に活用できたりするものです。そういったことを改めて確認することができた読書体験でした。

3)統計学の説得力

 また、この本で用いられている手法にも見られるものですが、現代はビッグデータの時代背景の下、統計学的な見地からの研究発表も頻繁に行われるようになってきました。YouTubeやニコニコ動画でDAIGOさんのセミナーを聞かれる方も多いと思いますが、わかりやすくて興味深い「社会心理学」の成果に納得感を抱く方も多いと思います(そう、人は数字による説得に弱い・・)。
 
 「スタンフォードの心理学講義」シリーズで日本にもファンの多いケリー・マクゴニガル氏も、統計学を用いた社会心理学の本を多く書かれています(スタンフォードの自分を変える教室 (だいわ文庫) https://amzn.asia/d/iDWZiEs)。
 統計学による検証結果には、やはり大きな説得力を多くの人が感じているのだと思います。今後は、何かの研究も情報も、文字化され、インターネットに出回る時代ですから、すぐに何かの統計が提示され分析され、人間の行動分析に用いられていくのだと思います。

 薬剤師といえども、人間心理について知見を持っているからこそ、説得力のある説明、人への働きかけが出来るものですから、関心の惹かれる分野であることに間違いはありません。

4)「今」に集中できない原因

 さて、以下私の心に留まった点についてですが、いくつかこの本の内容に触れていきたいと思います。

 私たちが今日という一日に集中して取り組むことのできない要因について著者は次のような要因を挙げておられます。

SNS
マルチタスク
不安
混乱した優先順位の付け方
ネガティブな人間関係・・


①SNS

 「SNS」について、著者はタバコと同じような依存性があると指摘し、「今」に集中できない大きな要因となっていると指摘されております。ジェイク・ナップ他著の『時間術大全』では、スマホの通知設定をできるだけカッとオフすること、メールでさえスマホで書かないようにするなどの提案がなされていました。https://amzn.asia/d/go6GsNI
 『時間術大全』を読んで、一時私もSNSの通知設定を可能な限りオフにしたり、アプリを消したり目立たなくしたりしたことがあります。でもそれをすることでSNSで(無意識に)ハブられたりして必要な情報がタイムリーに手にできなくなり困ったことがあっため、今は前の状態に戻してしまいました・・。
 つまり私の場合SNSについては、時代的に避けられないこととして受け入れつつ、妥協点を探っていく筋道に落ち着いている感じですね・・。
 悩ましい問題ですが、「イイネ」など承認欲求をみたす反応に気にせず、むしろ自分と向き合う訓練としてSNSを活用している具合です(でも、意外と隠れた読み手がいてくれたりするものです)。

②マルチタスク

 「マルチタスク」について、著者は生産性や効率性が下がったり、またミスが生じる可能性が格段に上がってしまうなど指摘しておられます。これは経験的に納得できる点がありました。
 ただ、仕事の上では「マルチタスク」避けられない面があることも事実です。
 齋藤孝氏は『大人の知的習慣』の中で、2つのことを同時に行うことについてはいくつかの方法を提案されておられます(ただ面白いことに、コピーだけはどうにも出来ずシングルタスクにならざるを得ないそうです)。
 マルチタスク自体は、常に頭のメモリーチップを過剰に起動させることによる疲れなど、良いことはないことは確かです。でも実際のところ、仕事をしたりする中ではどうしても、マルチタスクとは言わないけども、いくつかの業務を同時並行させたりすることがあるため、私自身は齋藤孝さんの本が参考になったと思います。
 齋藤氏の言う「2つのことを同時にやる」は、どちらかというと片方のことはルーティーンに近いと言えそうです(音楽を聴いたり、歩いたりといった具体に)。同時に注視する事が必要な作業は、やはり並行して行う事は効率性の観点からお勧めできません。
 

③不安

 「不安」のうち、95%以上が、実際には起こらないということも、色々な文脈で言われております。なんでそれでも、起こり得なさそうなことに人は不安感を覚えるのか・・。それが生存のために人間が保持してきた本能だからだ、というわけです。だから人は、行動することをやめてしまう・・。適度に不安事項に注視し検証していくことは大事ですが、その本能さえ、私たちは、行動するために制御していかなければならない。特にこれだけ情報の蔓延る現代なら尚更ですね・・。
 「不安」を逆に利用して情報収集に活かす方法はあると思います。世間を賑わす事件、災害など、情報は収集は不可欠だと思いますし、最近では「chatGPT」とか、どんな仕事の上でも無視できない変化に気を配ることは必要です。でもそういう場合、情報源を集約させる事が有効と思います(私の場合はYahooニュース)。

④混乱した優先順位

 混乱した優先順位の付け方、に関しては、先日私も、コヴィー博士の「重要/緊急」フレームワークについて自分なりの見解を示したところです。特に相手(顧客)側の因子も関わる仕事の要請を考慮し、「卓越論」の視点を応用して検証していくことの必要性について私は触れさせていただきました。
https://mbp-japan.com/shizuoka/fujiyama/column/5138151/

⑤ネガティブな人間関係

 ネガティブな人間関係も、当然、大きな問題ですね。否定的な人と関わることで落ちる生産性や創造性、また集中力の低下やミスの誘因など、目を瞑るわけにはいかない問題です。この辺の問題については

「言葉によって結界をつける」
「本当に大切にしなければならない相手に挨拶する」
「無駄なエネルギーを使わないために、ネガティブな人から何かを回収・期待しないこと」
「自分を正しく評価し、自分をできるだけ客観化する視点を持つ」

ことなど、著者はある意味小手先とも言える技法を紹介してくれています(「小手先」と言いましたが、それだけこの人間関係の問題は、本質的に有効な手段の少ない、とても難しい問題、つまり深く考えても費用対効果は低く、考えない小手先の技法が一番効果的だと言えると思います)。

結論)「今」に集中する

 著者は、自分を高め、良い時に良い選択肢をとっていくために「もしもこういう時には〇〇をしよう」という「イフ・ゼン・プランニング(If then Planning)」を提唱されています。起こりうる状況に直面した時に、あらかじめ選択肢を決めておいて行動に移すことで、「今」に生きる選択の最適化を行なっていくことができる、というわけです。

 私が実践して、上手く行っていると実感している「今に集中する方法」は以下です。

1)スマホのアプリを立ち上げて一分間のマインドフルネスに取り組む

 たったの一分間ですが、意外とこれが難しい。仕事はなんとなく流れの中で、アドレナリンを出してしている事が多いからなのだと思います。アドレナリンよりもセロトニン。なかなかほんの一分間が取れないのが実情ですが、少なくともこの1分で、自分を振り返るきっかけを得る事ができます。またマインドフルネスについての職場の理解度も高める事も必要ですね(あいつは何をしているんだとか思われる事になりかねないので・・)。

2)紙にタスクや思いを書き出して整理する

 裏紙でもなんでも良いので、タスクや思いを書き出すことで、集中する事柄を意識的に選別する事ができます。この際、「何々についてはどう思うか?」とか「午後、第一にやらなければならないことは?」とか、あえて自分に問いかける事がとても有効です。
 自分に問いかける事で、考えをまとめるべき論点が明らかになり、改めて気づきが得られる事が多いのです。

3)SNSに気づきをシェアする

 自分が気が尽かされたことなどをSNSでシェアするアウトプットを通して、新しい発見をする事が出来ます。アウトプットは、情報を整理するのにとても有効です。考えをまとめるという作業を通して、「今」に強いて自分を集中させるのに近いと言えます。

 職場、職種によって、「今」に集中することを妨げる要因は異なってくると思うのですが、何か哲学的な方法ではなくても、ちょっとした工夫でもかなり変化をもたらすきっかけになることがあると感じます。改めて自分の具体的な状況の中で取り入れることのできる知恵を選び取っていきたいと思わされました。

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