顧客様の声と擦り合わせる
おはようございます。富士・富士宮地区にて在宅医療の働きをさせていただいているふじやま薬局の栗原です。
薬剤師として普段働きをしながら、それを生業(なりわい)としている以上は、どうすればもっと患者様に貢献できるかいつも考えています。特に対物業務の働きから対人業務の働きへとシフト移動してきた薬剤師として、ビジネス、すなわち人を相手としたサービスについて考えてみるのも、時代の流れであると考えています。
今回は、卓越論と最優先事項の天秤、というテーマで書いてみようかと思っていました。
・・が、そもそも「卓越論」自体、説明が必要な用語ですので、今回は「卓越論と薬剤師」をテーマに書いていきたいと思います。
1)卓越論とは?
卓越論とは何かというと、顧客の必要を最優先で考えていく仕事の考え方のことです。「卓越」とは、何かに対する優位性があるということですが、それは自分(労働者)に対して顧客の立場や必要は、常に優位にあるという考え方です。
これは、一見すると時代に逆行するような考え方とも見受けられます。というのも、最近は「働き方改革」ということで、無駄な残業時間を削ったり、週休二日制(今の時代週休三日かもしれませんが)でしっかり仕事のオフ時間を充実させようという流れにあるからです。顧客の必要を第一とする働き方を突き詰めると、結局は労働生産性の低い働き方になってしまうのではないか?という恐れも生じるでしょう。
でも「卓越論」というのは、お客様は神様だ、というような考え方とは少し違っています。ジェイ・エイブラハムが『ハイパワー・マーケティング』の中で展開している考え方ですが、それは、徹底的にお客様の立場に立って考えてみよう、という思考方法です。
2)インパクトドライバーに隠されたもの
①自分好みの棚を作りたい
たとえばそれは、インパクトドライバーを買いに来たホームセンターのお客さんの本当の必要が「自分好みの棚を家に作ること」だとするなら、その必要に応えるためには、インパクトドライバーを紹介するよりも、腕の良い、信頼できる大工を紹介することが最も理想的なことかもしれません。そのお客様の「本当の必要」を聞き出して、そこに然るべきサービスを提供するのが大切だ、というわけです。
②日曜大工の必要性
そのお客さんにとっての本当の必要は、日曜大工で有意義な時間を過ごす、ということであるかもしれないし、日曜大工を通して家族に尊敬されたい、ということかもしれません。前者であれば、インパクトドライバーを紹介するに伴って、大工道具を整理するためにとても使い勝手の良い入れ物を一緒に紹介するのが良いかもしれませんし、後者であれば、作った棚を綺麗に見せる少し根の張る塗料を紹介するのがいいかもしれません。
要するに良いセールスマンは、顧客の「本当の必要」を見抜き、そこから生じてくる様々な要望に答えるサービスを紹介していくものなのだ、というわけです。
3)患者様の本当の必要は何?
この卓越論の考え方が、どう薬剤師の働きに関わってくるのか気になるでしょうか?でも、根底では繋がっているのです。
たとえば腰を痛めて病院に訪れる患者様は、重たいものを持つのが難しいでしょう。庭の手入れも難しいかもしれません。そういった患者様のために、すぐ来てくれるタクシー会社を紹介したり、腕のいい庭師さんを紹介したりすることも、薬剤師の働きとは少し違うかもしれませんが、患者様の必要に応えるという意味では合っているでしょう。患者様の問題解決のためには、筋道は違えども、痛みを抑えるお薬をお出しすることも、タクシーをお呼びすることも、同じ方向に向いていると言えるはずです。
4)自分に出来ること/出来ないことを見分ける
薬剤師はお薬の専門家ですが、なんでもお薬で治せるわけではありません。体にとって必要な栄養素をちゃんと摂らなければ怪我の回復も遅くなります。生活習慣の指導をしなくても同様でしょう。薬剤師としての専門知識でお客様の必要に応えることは当然のこととして、お薬ではどうにもならないことについては、その問題解決の方法を知りうる限り提供するということ。薬剤師としても、それが誠実な態度だと私は思っています。
これは当然、他の業種についても言えることです。保険屋さんだとしたら、なんでも「保険」で不安を解決していくことがお客様にとって正しいわけではないでしょう。人生において向かい合うべき課題は保険でどうにかなる話ではありません。なのになんでも保険にかかれば「安心」と伝えるのは悪徳に近いでしょう。
同様に、心の問題が、心理学の考え方でなんでも解決するわけでもないでしょう。人間関係に問題が生じているとすれば、時には裁判沙汰になることも避けられないでしょうし、それが通常の生活を続ける上では必要なこともあるでしょう。問題をなんでも心理学的な問題と了解するわけにはいかないわけです。
わたしも薬剤師として、患者様が抱えている問題に対して、薬剤師としてできるサービスとできないサービスをしっかりと見分けていくために、患者様の「本当の必要」に心を留めていかなければならないと考えています。なぜなら、お薬で解決できる部分は、患者様の抱えている問題の一部分に過ぎないからです。お薬だけ飲んでいて生きていけるわけではないのです。
結論)お客様の声に耳を傾ける習慣を手にする
当然、課題もあります。多くの場合、お客様はその「本当の必要」を、なかなか他の人に開示していないからです。わかりやすい例で言えば、ヘアカットに来たお客様が、ある特定の異性に自分をアピールしたいために来たとしても、それを簡単には理容師さんには言わないでしょう。相当に気が合って友人関係になっていなければ教えてはくれないでしょう。
ですから、ことさら初見のお客様の「本当の必要」を知るためには、私たちの側にお客様の心の奥底の声に耳を傾ける習慣がなければなりません。「卓越論」というものは、まさにそのような「習慣」のことを言うのです。
どうしてこの患者様はこのお薬を必要としているのだろう・・。薬屋に来た患者様に対してそう考えるのはおかしいでしょうか?でも患者様は、お薬を飲むことを目的としているわけではないのです。目的は、病気から解放されること、痛みの根本がなくなること、またそれによって、より充実した、納得できる日々の生活を送っていくことなどでしょう・・。
ですから、卓越論の考え方をしていくことはとても大事なことです。あたかも薬剤師として、薬でなんでも治せるといった万能感に浸ることなど論外です。
信頼できる医療機関、薬剤師が知りたい方はぜひ一度お問い合わせください。ご連絡をおまちしております。