処方箋の取り扱いの上で薬剤師が気をつけている点はここです。
富士市にありますふじやま薬局の栗原です。私どもの薬局は在宅の働きをさせていただいていますが、薬局は富士市本市場町に位置する田辺整形外科の隣です。整形外科には救急の患者様も来られますが、定期的に関節や腰の痛みで通院される高齢者の方々も多くいらっしゃいます。
台風の中、皆様のご自宅は大丈夫でしたでしょうか?今日はだいぶ風や雨も落ち着いてきましたが、タクシーの運転手さんは忙しそうで、薬局でもタクシー待ちの患者様がなんと2時間近く薬局の中で待っておられました。車を自分で運転してくるのが難しい患者様の大変さを目の当たりにして、何かお手伝いはできないものかと思いを巡らしていました。
薬剤師が来局される患者様について観察する点はいくつかあります。薬剤師によって観点は異なるでしょうが、私は、以下の3つです。
- お薬手帳
- 処方箋
- 患者様の様子
1)お薬手帳
お薬手帳は患者様が今現在、どのようなお薬を飲まれているのか、また過去にどのようなお薬を飲まれてこられたのかを知るもっとも便利な道具です。今現在、私の感覚では、患者様の8割方がお薬手帳をお持ちであると思います。もちろん全く病院に来られない方も多くいらっしゃるのが事実ですが、お薬手帳もだいぶ市民権を獲得してきたと言えるのではないでしょうか?
お薬手帳を拝見させていただくと、どのようなお薬の服用歴があるかが一目瞭然ですから、その患者様の重要な情報が集まります。新しくお薬が出たとすれば、他のお薬との飲み合わせには問題がないのか?その患者様にとってそのお薬を飲むことそのものに問題はないのか?またお薬手帳には、アレルギー歴を記入する欄があります。そこにご自身のアレルギー歴を記載されている方もだいぶ増えてきましたが、当然それも重要な情報になります。
お薬は一旦、体に取り入れてしまうと、そのお薬を体外に排出するのはひと手間がかかる問題ですから、薬剤師の知見は、問題が生じる入口で問題を止める役割を担っています。ぜひ、薬剤師が皆様に問いかける質問には、出来るだけ誠実にお答えいただくことをお勧めいたします。
2)処方箋
町の薬局の薬剤師は、お医者さんの書かれているカルテを参照することが出来ません(少なくとも今現在は)。そこで処方箋を見て、その内容から、来局された患者様の病態、疾病、症状を推察して患者様に接することが求めらています。当然、処方箋の内容から、糖尿病だとか高血圧だといったことはある程度推察はできるのですが、中には糖尿病に用いられているお薬が腎臓の働きを助けるために処方されているような処方のやり方がありますので注意が必要です。そこで「今日はどうされましたか?」といったと生かせをさせていただくことがあります。
中には薬剤師は、処方箋に基づいてお薬を出すだけが仕事と思われている方もいらっしゃるかもしれません。でも、例えばお医者様が、間違ったお薬を処方箋に書かれていたら大きな問題が生じます。決していつもあるわけではありませんが、月に何度か医者様に処方内容を問い合わせるものです。
いつも飲んでいるお薬に変更がある場合もあります。お薬手帳にシールが貼られている場合が多いでしょうが、もしかすると何かのトラブルで貼られていない可能性もあります。薬局では、少なくともその薬局で出されたお薬についての情報を整理しておく必要がありますから、それと照らし合わせてお薬の変更点を確認します。どうしてお薬が変更になったのか・・。それを患者様にお伺いしたうえで、その情報と処方箋の内容とを照らし合わせて齟齬がないか、確認させていただいているのです。
3)患者様の様子
最後は来局された患者様の様子を見て、判断材料を集めます。特にわたしどもの薬局では、整形外科の処方箋を受けることが多いので、身体的な症状をお抱えで薬局に来局される患者様が多くいらっしゃいます。何か痛みを抱えられた患者様に1から聴くのは申し訳ないと感じる事が多いので、患者様の様子を観察することはとても大事なことだと思っております。
漢方を専門に出されている薬剤師の方に、昔、薬局に来られた患者様の様子でかなりのことが分かる、と教えられたことがあります。漢方には「症」という見方があります。患者様一人一人が持っている体質のようなものをしっかり見分けたうえで漢方薬を選択するのです。昔は日本には「漢方医」という専門職が有りましたのが、その伝統を受け継いでいるのが漢方を専門に出す薬剤師さんです。
患者様を観る薬剤師として
「症」ではないけれども、私どもも、お薬手帳や処方箋、そしてお客様の様子からいろいろ判断材料を集めているので、ある意味、似たような手続きを踏んでいるのではないかと私は考えています。
特に在宅の働きで患者様のご自宅を訪れますと、その患者様の生活の様子が見えるわけです。専門的な知識を持って患者様の顔色や様子から「症」を見定めるのとはまた別な筋道から患者様にアプローチすることが出来ます。
訪問薬剤師として、私などももっと知見を高めて、患者様に貢献していきたいと思っています。お薬の知識も当然のことですが、薬剤師として場数を踏んで得られる経験を、次の患者様に生かしていくこと。そのことにさらに努めていきたいと思っています。