親が施設に入ったら実家はどうする? 空き家・管理・売却の最適解
目次
はじめに:この不安、実はとても普通です
不動産の仕事をしていると、
初めてご相談に来られた方から、ほぼ必ず言われる言葉があります。
「まだ売ると決めたわけではないんですが、相談してもいいですか?」
「話を聞くだけで、売らされるんじゃないかと少し不安で…」
この言葉を聞くたびに、
多くの方が同じ不安を抱えている ということを実感します。
新聞やインターネットで不動産会社を見つけても、
・強引に営業されるのではないか
・今すぐ売る話に持っていかれるのではないか
・断りづらくなるのではないか
そんな心配が先に立ってしまい、
本当は聞きたいことがあるのに、
相談する一歩が踏み出せない方はとても多いのです。
この記事は、
まさにその不安を抱えている方に向けて書いています。
「相談=売却」だと思われてしまう理由

なぜ、不動産の相談はここまで警戒されるのでしょうか。
理由はとてもシンプルです。
●過去に「売る前提」の対応をされた人が多い
•相談したら、いきなり査定額の話だけをされた
•その場で媒介契約を勧められた
•「今売らないと損ですよ」と急かされた
こうした経験をした方は少なくありません。
●不動産は“高額商品”だから
家は人生で一番高い買い物・売り物です。
だからこそ、
「失敗したくない」「後悔したくない」という気持ちが強くなります。
その結果、
少しでも押されると身構えてしまう のです。
実は、売らない相談の方が圧倒的に多い
これは意外に思われるかもしれませんが、
私のもとに来る相談の多くは、
「今すぐ売りたい人」ではありません。
•相続したけれど、どうするか決めきれない
•空き家になったが、売るか残すか迷っている
•親が施設に入ったが、実家の扱いが決まらない
•兄弟で意見が割れている
•そもそも売るべきかどうかを知りたい
こうした
“判断の途中段階”の相談 がほとんどです。
にもかかわらず、
「売ると決めてからでないと相談してはいけない」
と思い込んでしまう方が多い。
私は、ここに大きな誤解があると感じています。
本来、相談とは「決める前」にするものです

医者に例えると分かりやすいかもしれません。
•体調が悪くなってから病院に行く
•症状を聞いてもらい、選択肢を説明してもらう
•その上で治療するかどうかを決める
これと同じで、
不動産の相談も「決める前」が一番意味がある のです。
•売る
•残す
•貸す
•管理する
•しばらく様子を見る
これらの選択肢を、
冷静に整理するために相談があります。
「売却ありき」で話を進めるのは、
プロの仕事ではありません。
“売らされる相談”が生まれてしまう構造
ではなぜ、
「相談したら売らされた」と感じるケースが起きるのでしょうか。
それには構造的な理由があります。
●会社側が「成果=契約」になっている
営業会社では、
相談=成約につなげなければ意味がない
という文化があることも事実です。
すると、
•売却以外の選択肢を出しにくい
•早く決断させたくなる
•デメリットを伝えにくくなる
結果として、
相談者は「押された」と感じてしまいます。
信頼できる不動産会社の見極め方【5つの視点】

では、
本当に信頼できる不動産会社はどう見極めればいいのか。
私は、次の5つが大切だと考えています。
① いきなり「売りましょう」と言わない
相談内容を聞く前に、
売却の話ばかりする会社は注意が必要です。
まず聞くべきなのは、
•なぜ悩んでいるのか
•何が不安なのか
•家族構成
•将来の希望
ここを丁寧に聞いてくれるかどうかが重要です。
② 「今は売らない方がいい」と言える
信頼できる会社ほど、
売らない選択肢も正直に伝えます。
•まだタイミングではない
•管理した方が良い
•相続整理を先にすべき
•家族の話し合いが必要
こう言ってもらえると、
相談者は一気に安心します。
③ デメリットをはっきり話す
•今売ると価格が下がる
•修繕が必要になる
•税金がかかる
•兄弟トラブルになる可能性
良い話だけでなく、
都合の悪い話をきちんとするか が見極めポイントです。
④ 決断を急がせない
「今日決めましょう」
「今月中でないと損です」
こうした言葉が多い場合は注意が必要です。
大切な不動産は、
考える時間があって当然です。
⑤ 相談後も態度が変わらない
すぐに決めなかった途端、
連絡が雑になる会社もあります。
逆に、
決めていなくても丁寧に対応してくれる会社は、
長い付き合いができる会社です。
売らなかった相談も、私にとっては大切な仕事です

正直に言います。
私のもとに来た相談の中には、
結果的に売らなかったケースもたくさんあります。
•しばらく空き家管理をする
•親が戻る可能性を残す
•家族で改めて話し合う
•相続が確定してから考える
それでも、
「相談してよかった」と言っていただけることが多い。
それは、
判断材料を持って帰ってもらえたから だと思っています。
結果的に、納得して売却される方が多い理由
面白いことに、
「今は売らない」と判断された方の多くが、
数年後に再び相談に来られます。
そしてその時は、
•気持ちの整理ができている
•家族の意見がまとまっている
•条件も整理されている
結果として、
納得した売却につながる のです。
これこそが、
遠回りに見えて一番後悔の少ない道だと感じています。
新聞をご覧になった方へ
もし、この記事を
新聞をきっかけに読んでくださっているなら、
一つだけお伝えしたいことがあります。
相談することと、売ることは別です。
•今すぐ売らなくていい
•まだ迷っていていい
•家族と話がまとまっていなくていい
それでも、
相談していいのです。
おわりに:相談とは「覚悟」ではなく「準備」です

不動産の相談は、
何かを決断するための“覚悟”ではありません。
これから先、
後悔しないための 準備 です。
•情報を知る
•選択肢を整理する
•不安を言葉にする
それだけでも十分価値があります。
もし今、
「ちょっと話を聞いてみたい」
「誰かに整理してもらいたい」
そう思っているなら、
どうぞ気負わずにご相談ください。
売るかどうかは、
そのあとで決めればいいのです。




