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心にそっと寄り添う絵と言葉を届け、「切り貼り絵」を通して自分の手で表現する楽しさを伝える

手描きの作品と切り貼り絵で創作の楽しさを届けるプロ

川井幸子

川井幸子 かわいさちこ
川井幸子 かわいさちこ

#chapter1

素材の質感と色の重なりを大切に、手描きのイラストやキャラクターで伝えたい思いを形に

 「絵や言葉を通して、誰かの心にそっと寄り添えたらうれしいですね」
 そう話すのは、静岡県焼津市の「アトリエKawai」で活動する川井幸子さん。「かわいさちこ」の名で、イラストやキャラクター、絵本を制作しています。

 「自分の手を動かす作業が好きなんです。ラフは何度も描き直し、線が決まるまで描き続けます。デジタルで描くことが身近な今だからこそ、手描きの味わいを求めてくださる方もいるのではないでしょうか」

 主に使うのは、クレヨンやアクリル絵の具。線のかすれや色の重なりなど、画材の持ち味を生かした表現を大切にしています。既存作品の提供に加え、新たなイラストやキャラクターの制作にも対応。出版やメディア、商品づくりなどに携わる人へ、自身の表現を役立てたいと考えています。

 2017年から2023年には、焼津市の男女共同参画情報紙の編集委員としてイラストを担当。市の事業を紹介するパンフレットの表紙やカットも手掛け、Tシャツやトートバッグへの作品提供も行ってきました。作品を目にする人との接点を少しずつ広げています。

 「2021年にはイラスト・エッセイ集『えがいて つむいで』、2024年には絵本『ちいさないっぽ』を出版しました。絵本は、世界で紛争が絶えない中、なぜ争いが起こるのかを皆さんと考えたいと思って作りました。大切な人を亡くした人に寄り添いたいという願いも込めています」

#chapter2

幼い頃から好きだった絵を描き続け、仕事や子育て、介護と向き合いながら表現と学びを深める

 川井さんにとって、絵を描くことは幼い頃から身近な楽しみでした。授業中のノートの端やテスト用紙の裏にもイラストを描き、中学生になると校内行事のポスター制作を頼まれるように。高校では美術部に所属し、社会人になってからも働きながら公募に挑戦していました。
 結婚、出産を経ても、創作への思いは変わりません。仕事と子育てのかたわら、当時暮らしていた浜松市の絵画教室に通い、油彩の基礎を学び直しました。公募展で入選を重ねる中、2007年からはイラストへと軸足を移します。

 「イラストに取り組んで、自分がやりたかったのはこれだと思いました。暮らしの中で絵を描き続けてきたことが、今の活動につながっています」

 2022年には京都芸術大学通信教育部芸術学部芸術教養学科へ入学。伝統や文化、情報、編集、空間や対話のデザインなどを幅広く学び、物事の本質を捉える思考を養いました。中でも関心を寄せたのが、芸術を通じた社会的な活動とコミュニティーです。

 「母の介護と重なる時期もありましたが、4年間で卒業することを目標にしていました。絵本の制作中は課題や試験もあり、時間を工面する毎日でしたね。編集者の方と絵や文章の細部までやりとりをして、思いの詰まった一冊になりました」

 2026年3月に卒業し、学士号を取得。「ハードな日々でしたが、やり遂げたことは自信になりました」と振り返ります。大学で得た視点は、自ら作品を生み出すだけでなく、人が創作を楽しむ場をつくる活動へとつながっています。

川井幸子 かわいさちこ

#chapter3

自分だけの表現ができる切り貼り絵の楽しさを伝え、地域や教室で創作に親しむ機会を広げる

 色を塗った紙を切ったり、ちぎったりして貼り合わせ、一つの絵に仕上げていく。川井さんが「切り貼り絵」と名付けて伝えている表現です。ワークショップでは、自分で色や模様を付けた紙をもとに、切り貼り絵の材料となるオリジナルのシールを作る方法から伝えます。

 「同じクレヨンや絵の具を使っても、力の入れ方や手を動かすときの思いによって、一人一人違う紙になります。一枚の中でも真ん中と端では表情が違いますし、どこを切り取るかによっても作品は変わります。同じものができないのが面白いですね」

 はさみで切れば形を整えられ、手でちぎれば切り口の味わいを楽しめます。はさみを使うのが難しい人も取り組め、貼った位置を変えたくなったら、はがしてやり直せるのも特徴です。シールが好きな子どもたちも、楽しみながら制作に向き合います。
 開催を通じて印象に残ったのは、参加者が夢中になって手を動かす姿。病気の後遺症で体が不自由な人から、楽しかったのでまた教えてほしいと声を掛けられたことも、活動の励みになりました。

 今後は地域のイベントなどで講座や体験の機会を増やすとともに、技術そのものを伝える取り組みにも力を入れたいと話します。ワークショップを企画・運営する組織や地域コミュニティー、絵画・造形教室などに向け、材料となる紙の作り方から紹介していく考えです。

 「子どもから高齢の方まで、切り貼り絵の面白さを知ってほしいですね。私自身が講座を開くだけでなく、技術が広がり、皆さんに喜んでもらえたらうれしいです」

(取材年月:2026年9月)

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専門家プロフィール

川井幸子

手描きの作品と切り貼り絵で創作の楽しさを届けるプロ

川井幸子プロ

イラストレーター・絵本作家

アトリエKawai

手描きのイラストやキャラクターの既存作品提供、新規制作に対応。素材の質感や色の重なりを大切にしています。地域団体や絵画・造形教室に向け、子どもから高齢者まで創作を楽しめるオリジナルの技法も伝えます。

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