システム開発の進め方

前回投稿から少し時間がたってしまいましたが、本日は「お墓参りのDX」と称して、江津市で構築した事例をご紹介したいと思います。
お墓参りをDXすることになった経緯
お墓参りと聞くと、墓石があり、お花や線香をお供えしてお参りする、というのを想像されると思います。
私も生まれた益田市では毎年お盆の時期にお墓参りに行っていましたし、父方の親族のいる京都まで、よくお墓参りに出かけたものです。
でも亡くなる方は増える一方ですので、土地の少ない都会では霊園が遠くにあったり、借りるのも高かったりと、お墓参りの文化を維持するのも大変になってきています。
特に共働き世帯も増え、時間に追われている人々にとっては、お墓を納骨堂に改葬されるというのも珍しくなくなりました。
墓石でなくコインロッカーのような中に納骨され、それがビルの中にあったりするため、従来と比べるとお墓参りしているという雰囲気が下がってしまうことも否めないかと思います。
でもそんな動きは、別の理由で地方にも広がっていくかもしれません。
地方はいろいろな産業で人不足が深刻ですので、お店を閉じたり、営業を停止したりといった動きが生じています。
そしてお寺も人不足から、無数のお墓を維持するのが大変になっている、という状況もあるかもしれません。
そのような中、江津市のあるお寺さんでは、門徒の方の付加価値向上になればという思いで庭園募と納骨堂への改葬を進められています。
庭園募はいわゆる樹木葬のように、自然の中に埋葬することで元の自然に戻すという意味も込められ、新たなスタイルとして注目されている分野です。
そのようなお寺さんから、「お墓の場所を簡単に認識できるようにしたい」「ご家族が喜ばれる情報も提供したい」といったご相談から始まったのがきっかけでした。
何がDXなのか
では次に、何がDXなのかということです。
DXとは簡単に言うと、様々な技術の導入によって、組織やコミュニティにおける業務の流れを一変させるような変革の取り組みです。
また企業の顧客に対し、新たなブランド価値であったり、革新的な体験をもたらすことによって、関係性を再構築することでもあります。
今回の場合、以下の2点でそのようなことに取り組みました。
バーチャルツアーでお墓の位置を特定
メインビジュアルに庭園募の画像を載せましたが、庭園募におけるお墓の位置とは納骨した位置、つまり穴を掘って埋めた場所ということになります。お庭ですので墓石はありません。スコップで穴を掘って納骨するのです。
この時当然ながらどこに納骨しかたかが後からわからなければ、ご先祖様に二度と会えなくなってしまいます。またお庭は景観も配慮されているためぐるりと石畳を歩いて回ることができるようになっています。
そのような場所で、誰もが正確に位置を認識する方法として、matter portというデジタルツイン技術を活用しました。この技術は、360度カメラでスキャンした画像を結合し、プライベートなストリートビューが作れるようになっています。この中であればピンを立てたり、タグ付けしたりすることが容易にできますので、庭園募をバーチャルツアー化し、その中に立てたピンの位置でお墓の位置を認識してもらうようにしました。またこうすることで、自分の立っている石畳の位置と変わらぬ景色のまま画像で確認できますので、どこにいても迷うことはないと思います。
公式LINEから故人情報を閲覧
さらに2点目のご要望である、ご家族が喜ばれる情報を提供することに対しては、スマホのLINEアプリからお墓の番号情報で問い合わせることにより、簡単に故人様の情報を閲覧できるようにしました。故人であって個人ではありませんので、個人情報保護法の枠組みには該当しないはずですが、ご親族に同意いただいた場合に限り公開するようにしています。
お墓とは故人と再会する場所だと思います。その意味でお墓参りをする際には、できるだけ故人に寄り添うことが最低限できることかと思います。しかしながら世代が変わると名前を確認するくらいしかできなくなると思います。でも考えてみると、今生きている皆さん一人ひとりが偉大なる人生を謳歌されているように、故人様も一人ひとり何十年も築き上げてこられた人生があったはずです。
その人生を、少しでも後世に残し、何かの役に立つことがあれば、きっと故人様も喜んでくれるのではないでしょうか。
またお参りに訪問した記録も同じくLINEから残すことで、ご親族の間で履歴としても確認することができるようにしています。
DXとは業務のやり方を変え、顧客との関係性を再構築することであると先述しました。
これまでのお墓参りは、自分の家のお墓をお参りすることだけが当たり前でしたが、庭園募となることで、実際にするかどうかは別にして誰でも他人のお墓をお参りすることが可能になったとも言えます。
さらに、LINEアプリを通して誰でも他人の故人情報を閲覧することができれば、数年に一回しか来れない親族以外からもお参りしてもらうことが可能になるのです。
実は特攻隊で壮絶な人生を送った方が、隣のお墓にいても気づくことはなかったですが、お寺のLINEを通してそういうこともわかるようになるのです。
人生で残したかった事や、後世に伝えたいことがそこに書かれていると、もはやお墓には様々な人生の記録とそこからの学びが博物館のように広がっていくのです。
何より、お寺がLINEを提供することで、お参りされる方との新たな接点の構築につながり、檀家の減っていく地方寺院では特に利用者との関係再構築につながっていくことを期待しています。そのような意味で、今回の取り組みはDXそのものであると思っています。
お寺に行くと公式LINEにアクセスできますので、ご関心のある方は是非一度訪れてみてください。
[[https://youtu.be/MHez0tEZxtE?si=_XPvUyYpBp7taADl]]
〒699-2841 島根県江津市後地町650
光善寺・真照寺・法正寺



