先人の技を読み解き文化財をよみがえらせる古建築修復のプロ
鈴木大祐
Mybestpro Interview
先人の技を読み解き文化財をよみがえらせる古建築修復のプロ
鈴木大祐
#chapter1
「先人が数百年もの長きにわたり積み上げてきた知恵と技巧を尊び、受け継いでいくことで、歴史ある日本建築を守ります」と話すのは、「鈴木古建築」の代表・鈴木大祐さん。社寺の新築や改修、文化財の修理・復元を請け負い、拠点を構える彦根市のみならず、全国から寄せられる依頼に応えています。
「柱や梁など、傷んだ箇所の補修はできるだけ同じ材を用い、伸縮やしなり具合を近づけ、ゆがみが生じるのを防いで構造全体のバランスを整え、木目も合わせて美観を高めます。長く文化財の修繕に携わってきた左官や瓦職人とも連携して、土壁や床の塗り直し、屋根のふき替え、分解移築なども承ります」
風格あるたたずまいを末永く保つため、耐震補強工事も実施。クギやボルトを使用せず木材を組み上げる伝統工法で、山門や鳥居、橋といった建造物を構築したり、移築したり、写真や資料をもとに図面を起こし、在りし日の姿も再現します。
「文化財の修復は、建物の当初の姿を推し量るところから始まります。例えば壁をめくった時に用途の分からない穴が出てきたとしましょう。その掘り方を見て、建物がいつ建てられ、どのように使われていたのかを考えます。推理小説のように、一つの穴からさまざまなことを推測していくのです」
見立てた内容をもとに設計方針を固め、模型を作成。補助金を活用する事業であれば、大学教授ら有識者で構成される審議会に提案し、承認を得て着工します。
「文化財は唯一無二の存在で、柱1本、部材1本でも、処置を間違えれば二度と元には戻りません。常に緊張感と責任感を持って作業に臨んでいます」
#chapter2
鈴木さんは1966年に埼玉県北本市で生まれました。実家は、祖父の代から続く宮大工の家系だったものの、家業を継ぐつもりはなかったそうで、高校卒業後は外構工事の現場監督として働くように。2年目を迎える頃、転機が訪れます。
「当時はバブルの真っただ中で、夢を持ってアメリカに渡る人がたくさんいました。私も行ってみたいと思ったのですが、ビザが下りなかったのです。今後を思案する中、知人から、『来てほしいと呼ばれる人間になればいい』と言われたのを機に、原点に立ち戻りました。木の性質を見極め、適材適所で使い分け、『大工の最高峰』とも称される宮大工の素晴らしさを再認識し、道を極めようと思い立ちました」
父親に相談したところ、「まずはどこかで勉強してきなさい」とアドバイスされ、社寺建築が盛んな滋賀県の工務店に入社。それまで木工事に触れた経験はありませんでしたが、もともと手先の器用さには自信があり、入社から1年後には技能五輪の滋賀県大会で1位を獲得。県代表に選ばれた経験もあります。
その後は京都の工務店に移り、神社仏閣の修復工事に5年間従事。父の会社に戻った後、滋賀の修行時代に世話になった先輩が営む会社を経て、2002年に「鈴木古建築」を立ち上げます。
「独立する前から、私が大切にしてきたのはお客さまとの信頼関係です。人のために尽くせば、仕事は後からついてくる。今も変わらず信条としており、人と人とのつながりを丁寧に紡いできたからこそ、今日があると感じています」
#chapter3
祖父の代から続く社寺建築家の3代目として、後進の育成に力を入れている鈴木さん。未経験から迎え入れ、一人前になるまで細やかに指導。時代を超えて息づく匠の技を引き継いでいます。
自社職人だけでなく、業界全体の人材育成にも尽力。木造建造物を建てたり、手入れしたり、木工技術の継承を目的とする「日本伝統建築技術保存会」では理事に就任。宮大工の棟梁を育てる研修では、委員長として運営を担っています。
「地域との関わりも深め、小学校への出前授業で、生徒さんに大工の仕事について話す機会もあります。ワークショップも開催し、カンナで木を削って香り高いヒノキのお箸をこしらえるなど、ものづくりの魅力を若い人や子どもたちに知ってもらい、興味を持ってほしいと思っています」
また、商工会議所やロータリークラブの活動に参加し、観光協会では理事も務めています。2019年から、彦根市の伝統的建造物群保存地区にある古い蔵を改装し、日本料理店も展開。犬上郡の古民家を再生した際は「第1回びわ湖建築賞」(滋賀県建築士会主催)の住宅部門で特別賞を受賞。2026年には彦根城の世界遺産登録に向けた国内推薦が決まり、鈴木さんも取り組みに加わっています。
「私たちが手掛けた神社やお寺に、皆さんが手を合わせてくれる。こんな幸せはありません。培った知見を生かし、海外からご指名いただくことも目標の一つ。伝統建築の保全でお困りの方、新たに建てたいとお考えの方は、お気軽にお声がけいただきたいですね」
(取材年月:2026年9月)
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Profile
先人の技を読み解き文化財をよみがえらせる古建築修復のプロ
鈴木大祐プロ
建築業
株式会社鈴木古建築
木工事を軸に、左官や瓦の職人とも連携し、屋根から壁、床、門まで古い建物全体の修復を手掛けます。傷んだ箇所を直すだけでなく、建物に残る痕跡から当初の姿を推測し、先人の技術を生かした修復を目指します。
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