「ゼロ葬」について

藤井俊平

藤井俊平

テーマ:QアンドA

【質問の内容】
葬儀を行わずお墓も作らない「ゼロ葬」に興味があり、独り身の母をこの方法で送りたいと思っています。まだ健在ではありますが、遠くない未来の事です。

母は親戚もなく、歳の離れた兄と、娘の私しか身内はいません。
父と離婚しているのですが、離婚時に旧姓に戻らず、父の姓で戸籍を作っているので、実家のお墓には入れません。

親しい友人を呼び最後のお別れだけしてもらって、何も残さずに旅立ってほしいのです。
仏壇もお墓も、いずれ子供に負担が来るものは残したくないので、このゼロ葬は理想のかたちです。

今はメリットばかり思いついてしまう状態ですがデメリットもあると思います。
ゼロ葬について客観的なご意見がいただきたいです。

【回答いたします】
「ゼロ葬」を、宗教者を招いての葬儀式を行わず、近親者のみでお別れをし、収骨をせず、お墓や仏壇も持たない形態として定義します。
【客観的なデメリット】
① 本人の真意が不明確であること
ゼロ葬を望んでいるかどうかは、本人に確認するしかありません。しかし、こうした話題は聞きづらく、仮に聞いたとしても「家族に迷惑をかけたくない」という思いから本心を語ってくれない可能性もあります。本人がゼロ葬を望んでいるのであれば、それは遺志として尊重すべきですが、文面からはお母様のご意向が読み取れません。
② 故人と対話できる場所の不在
お墓や仏壇がないこと自体が問題ではありません。ただ、ふと故人と心の中で語りたくなる瞬間に、祈るための「場」があることで心の整理がつくこともあります。初詣などの習慣を思い返すと、外形的な行為が心の支えになることもあるのではないでしょうか。
③ 次世代への影響
「なぜ祖母のお墓がないの?」と問われたとき、どう答えるか。仮にお子様が「親のお墓は建てたい」と考えていた場合、ゼロ葬という選択がその思いと食い違う可能性もあります。ゼロ葬を検討する際は、次世代との対話も欠かせません。
④ お別れの時間が十分に取れない可能性
葬儀社に「ゼロ葬」と伝えると、直葬(火葬式)と解釈されることがあります。その結果、友人とのお別れが火葬場での数分間だけになり、後悔するケースもあります。可能であれば、一晩、少なくとも1時間は故人と過ごす時間を確保できるようしていただきたいと思います。(※この点は私見が含まれます)

【私見】
ゼロ葬そのものに否定的ではありません。ただ、故人も遺族も「迷惑をかけたくない」という思いに偏りすぎているように感じます。「親が亡くなって迷惑だ」「自分が死んだら子供に迷惑」こうした考えは、一般的な親子関係ではあまり前面に出ないものです。「万が一の時にはゼロ葬にしよう、それでもいいよね」と家族で意向を共有しつつ、「でも、その時が来たら考えが変わるかもね」と柔らかく余白を残していただければと存じます。

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藤井俊平
専門家

藤井俊平(葬儀業)

株式会社せれもに

「ライフエンディングサポート」サービスにより、高齢者が抱えるさまざまな悩みをまとめて解決に導く。信頼関係を築き、葬儀について元気なうちから備えていただくことで、安心してお別れに臨んでいただく。

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