成年後見制度とは?—判断力がなくなったときの法的支援

西田隆博

西田隆博

テーマ:気になる、親の終活。

親の物忘れや判断力の低下が進むと、日常生活だけでなく法律上の手続きにも制約が生じます。
親御さんの銀行口座のお金の出し入れ、
介護施設の入所契約、
実家や土地の売却—



—これらはすべて、たとえ家族であっても勝手に代行することはできません

そんなときに利用されるのが成年後見制度です。

成年後見制度とは?


成年後見制度とは、
すでに判断力を失った本人に代わって、家庭裁判所が選んだ後見人が財産管理や契約を行う仕組みです。

家庭裁判所に申立てを行い、裁判所が後見人を選任します。
後見人は本人の財産管理や生活支援のために必要な法律行為を行う権限を持ちます。

成年後見の申立ての流れ


1.申立て
家族などが家庭裁判所に申立書を提出(診断書や財産目録などを添付)。

2.審理・調査
裁判所が事情を調べ、必要に応じて本人や親族の面接を行います。

3.後見人の選任
裁判所が後見人を決定。選ばれた後見人が活動を開始します。

誤解その1:「親子だから代理できる」


よくある誤解が、
「親が認知症になったら、子どもが代わりに手続きをすればいい」
という考え方です。
親が認知症になり判断力を失ってしまったら、
たとえ親子であっても子どもに自動的に代理権が与えられることはありません。
銀行や不動産の契約を子どもが勝手に進めてしまったら、それは法律的には「他人が勝手にやったこと」とされてしまいます。


誤解その2:「家族がすぐに後見人になれる」


もう一つ多いのが、
「裁判所に申立てをすれば、家族がすぐに後見人になって手続きできる」
という思い込みです。
実際には、後見人を選ぶ権限は家庭裁判所にあり、親族が必ず選ばれるとは限りません
むしろ実務上は、あらかじめ登録された司法書士や弁護士などの専門職が選任されるケースが大半です。
さらに、申立てから後見人の選任までには、診断書の準備や裁判所での調査・審理があるため、数か月単位の時間がかかるのが通常です。なかには数年かかるなんてことも。
「家族がすぐに動ける」だろうという目論みとは大きく異なります。

成年後見のメリット


  • 本人が判断力を失ってしまっても、法的に有効な手続きが可能になる
  • 財産の不正使用や契約トラブルから本人を守れる
  • 家族が独断で動いて「無効」となるリスクを防げる



成年後見のデメリット・限界


柔軟性に欠ける

成年後見は「本人の財産を保護・維持すること」が最大の目的なので、家族のために使ったり、何か積極的な運用みたいなことはまずできない。

専門職が選ばれるケースが多い

報酬が必要(月1〜2万円程度。裁判所が決定)となり、長期的な費用負担が発生する。

開始までに時間がかかる

申立てから選任まで数か月は要する。「すぐに親の口座から資金を引き出したい」と思ってもすぐには動けない。

よくあるケース


80代の母が認知症を患い、介護施設への入所契約が必要になった。
そこで近くに住む息子さんが「母のことは息子の私が全部やります」とおっしゃったものの、ご本人は判断能力を失ってしまった以上、家族だけでは手続きできなかった。
 けっきょく家庭裁判所に成年後見の申立てをしたが、後見人に選ばれたのは子どもではなく、会ったこともない弁護士。
 息子さんがお母様のことを全て把握していたが代理する権限がないので、逐一、後見人を通して進めなければならず、なにかにつけ不便であり、報酬の負担と「家族では自由にできない」という制約を実感することになった。

まとめ


成年後見制度は、本人がすでに判断力を失った場合に利用できる大切な制度です。
ただし、
・親子だからといって当然に代理できるわけではない
・家族がすぐに後見人になれるわけではない
・申立てから利用開始までに時間も費用もかかる
といった現実があります。
だからこそ、「成年後見があるから大丈夫」と思い込むのではなく、任意後見契約など事前の備えもあわせて検討することが重要になります。


私たちの 終活ナビサポート(セカンドライフまるごとサポートの一部サービス) では、

  • 親の判断力や状況に応じた制度の選び方
  • 任意後見契約の作成サポート
  • 成年後見制度を利用する際の家庭裁判所申立の準備

など、実務的な支援を行っています。
「まだ大丈夫だと思うけど心配になってきた」
「どちらを選べばいいか分からない」
そんなときこそ、専門家の視点で一緒に整理してみませんか。


┃相続、認知症、死後の事務手続まで──
┃あなたの“これから”を法的にしっかり支える事務所です。
┃行政書士西田法務事務所


┏━━━━━━━━━━━━━━━
■■セカンドライフまるごとサポート
人生100年時代 セカンドライフの「安心」を、
ひとりひとりに寄り添ってトータルに支援します。
https://pd-office.jp/
┗━━━━━━━━━━━━━━━


┏━━━━━━━━━━━━━━━
■■終活サポート「安心ナビ」
「終活って、何から始めればいいの?」という方へ。
家族に迷惑をかけたくないが、整理が苦手。
ネットの情報ではよく分からず、不安がある。
「やらなきゃ…でも進まない」そんな方に
https://pd-office.jp/navi
┗━━━━━━━━━━━━━━━


┏━━━━━━━━━━━━━━━
■■認知症になったときの代理人指名プラン
将来、認知症などで判断力が低下したときに備える”保険”として。
「私が本当に信頼できるあの人に後見人を任せたい。」
「自分で後見人を決めたい。」という方へ。
https://pd-office.jp/kouken
┗━━━━━━━━━━━━━━━

\プロのサービスをここから予約・申込みできます/

西田隆博プロのサービスメニューを見る

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

西田隆博
専門家

西田隆博(行政書士)

行政書士西田法務事務所

相続業務の経験豊富な行政書士です。今できる親孝行として、これからの安心を約束する「人生の卒業アルバム」の制作や、任意後見契約、家族信託の手続きを通して、理想の終活の実現をサポートします。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

家族が繋がり、後悔のない相続をサポートする行政書士

西田隆博プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼