「自分は行けるけど、子どもは…」お墓の将来を考え始めたら

西田隆博

西田隆博

テーマ:気になる、親の終活。



「自分の代はちゃんと守れるし、まだまだ大丈夫だけど…」


お盆や命日には、欠かさずお墓参りに行く——。

「自分の代はちゃんと守れるし、まだまだ大丈夫」そう思っている方も多いでしょう。
でも、ふとこんな不安がよぎったことはありませんか?

「自分は行けるけど、子どもや孫はどうだろう?」

「遠方だし、維持費もかかる…負担になるのでは?」

現代では家族や暮らしの形が変わり、
「受け継ぐのが当たり前」だったお墓も、
次の世代にとっては負担になる場合があります。

なぜ今、お墓のことが問題になっているのか


かつては親子三世代が同じ家、同じ地域に住み、日常的にお墓を守るのが普通でした。

しかし今は少子高齢化・核家族化が進み、

  • 維持管理に通えない
  • 後継者がいない
  • 費用負担が大きい

といった理由から、
「このお墓をどうしていくか」ということが深刻な課題になっています。

厚労省の統計によると、
墓じまい件数は20年前の約2倍に増加。
2017年度以降は毎年10万件を超え、
今後も増加が見込まれていて、もはや社会問題といっても過言ではなくなりました。

とはいえ、もし、いざ墓じまいをしようと思ったら、どうすればいいのでしょうか?

墓じまいの基本的な流れ


墓じまいは、単なる墓石撤去ではなく、
親族間の合意・行政手続き・宗教的儀礼が絡む複雑な作業です。

基本的には以下のような流れで進めることになります。

1.親族と話し合って合意を得る
 感情的な対立を避けるため、現状や費用の見積もりを共有。

2.墓地管理者(お寺・霊園)に相談
 離檀料や撤去条件を事前確認。

3.新しい納骨先を決定
 永代供養、樹木葬、納骨堂、散骨など、将来の管理体制も考慮。

4.自治体で改葬許可申請
 遺骨ごとに許可証が必要。埋葬証明書・受入証明書の取得も必須。

5.供養・遺骨の取り出し
 閉眼供養などの宗教儀礼を行う。

6.墓石撤去・更地化し返還

7.新納骨先へ納骨

費用は供養方法や墓地条件によって異なるようですが、概ね30万〜300万円となることが多いようです。


墓じまいで気を付けること・よくあるトラブル


1. 親族間で意見が割れる


遠方のお墓を永代供養に移そうときょうだいに提案したところ、一人が強く反対して話がまとまらないということはよくあります。
たとえば、まず現状写真や費用試算などを用意し、必要なら現地の荒廃を全員で確認するなどして、感情論だけでなく、客観的情報をもとに話すようにしましょう。

2. 名義人が故人のまま


墓じまいの前に名義変更が必要となることもあります。相続人全員の同意を取るために、戸籍収集だけで何カ月もかかってしまったということもあります。名義人が誰なのか確認して、故人の名義のままなら早めに変更の手続きを取りましょう。

3. 離檀料をめぐるトラブル


寺院の墓地だと墓じまいの際に「離壇料」が必要になることがあります。墓地の管理料を滞納していたりすると離檀料が高額になったりしてしまうことも。普段からお寺との関係性を良好に保つように気を付けましょう。

4. 改葬書類の不備


墓じまいには役所の許可が必要です。
改葬許可の申請はそれなりに手順が定められていて、何かと手間がかかります。勇み足で墓じまいを進めてしまって肝心の許可が下りないなんて事態にならないよう、行政手続きの手順をしっかり確認しましょう。


実家とお墓、両方を見据えた準備が必要


実家の処分とお墓の整理は目的こそ違えど、「次の世代に負担を残さない」という点で同じです。
名義人が元気なうちに方向性を決めておけば、将来の混乱や費用増を防げます。
お盆や法事は、こうした話を切り出す絶好の機会です。


「自分はいいけど、子どもは…」という不安は、やがて現実になります。
それを先送りにするか、元気な今のうちに動き出すかで、家族の負担も気持ちも大きく変わります。
今年のお盆や法事をきっかけに、まずは状況の棚卸しから始めてみてはいかがでしょうか?



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西田隆博(行政書士)

行政書士西田法務事務所

相続業務の経験豊富な行政書士です。今できる親孝行として、これからの安心を約束する「人生の卒業アルバム」の制作や、任意後見契約、家族信託の手続きを通して、理想の終活の実現をサポートします。

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