「SWISS MADE」 の本当の意味は?
前回のコラムに引き続き、時計修理技能士の資格取得までの体験談を綴っていきます。
筆記試験
さてさて、申し込みも無事済ませ、まるでもう試験に合格したような気分になってしまったが、本番は筆記試験が翌年1月27日、実技試験が2月14日と、かなり間があいた。日常業務の合間に筆記試験の問題集を問いてみたが、ほとんどが小・中学程度の理科と技術、そして時計の一般常識があれば解ける内容で安心した。感覚的には運転免許試験に近いだろうか、一応は勉強しておかないとまずいが、大して難しいことは聞かれないといった具合だ。とはいうものの、わからない問題もいくつか混ざっているので、借りたテキストをダラダラを読んでは試験日まで過ごしていたが、これがよくまとまった面白いテキストで、非常に勉強になった。
筆記試験は大東市の大阪産業大学の大講義室で実施されたが、ひとつの教室で同時に複数の技能検定をするので、隣の列は「パン製造」、その隣は「めっき」、お次は「積層防水加工技術」の技能試験という感じで、様々な分野の一線で活躍している方々がそれぞれ別の資格を受検されていて非常に興味深かった。時計修理3級にはおよそ40名ほどの受検者がいたようだが、姫路や滋賀など、地元で試験が開催されない地方都市からの受検者も多数見かけた。
試験時間はいずれの技能検定でも3級は1時間、真偽法(◯×選択式)で、30問のうち20問以上正解が合格ラインだ。それすら知らずに試験に臨んだので、2/3の正解でいいと当日に聞かされて拍子抜けしてしまった。
試験開始後30分経過すれば退席することが可能だったが、30分後には7割以上が退席した。外の喫煙コーナーでは同僚友人同士で答え合わせがはじまり、さながら大人のセンター試験のようだった。ひさしぶりの緊張と弛緩で私もずいぶん疲れた。
翌日には中央職業能力開発協会のHP上で正答が発表されたが、自己採点では満点だったので、ほっと一息。
実技試験
実技試験は事前に課題が発表されていて、時計本体とブレスレットの分離、裏ブタの開閉、パッキンの取外し取り付け、ムーブメントの消費電流&歩度測定、電池の電圧測定、電池寿命の算出、ブレスレットの長さ調整、そしてラッピング。試験時間は1時間。
測定器による消費電流や歩度測定も含まれるので、事前に測定器の操作に習熟しておく必要がある。私の店には簡易な測定器しかなく、某時計卸業者の修理センターに測定器があるということで、無理を承知で測定器の使い方をレクチャーいただくことにした。取扱い自体は簡単ではあるが、知らないと使えない。
試験当日に使う工具類は、すべて自前のものを用意しなければならない。事前に持込可能な工具リストが配布されるが、デジタル回路計(電池の電圧を計測するために必要なテスター)をはじめ、ドライバーやピンセット、裏ブタ側開閉冶具、指サック、チリ吹きなど、必要なものはすべて持ち込む。
さて実技試験はバレンタインデーの2月14日にシチズンの大阪支店で開催された。緊張の面持ちで会場に入室すると、受検番号が書かれた机が並べられていた。どこかの企業の研修なのか、10名ぐらいで団体受検するグループがいくつかあった。
まず背中に受験番号の書かれた紙を貼り付けられ、すべての行動が監視されることになった。試験官は10名もおり、身だしなみ、工具の取り扱い、受検態度等までチェックしているようだった。指定以外の工具を持ち込んでいないかチェックを受けた後、受検に関する諸説明を受け、今回の課題時計であるSEIKOのアルバが手渡された。
課題は落ち着いてやれば十分に余裕がある時間だが、ブレスレットのコマが精度の悪い板バネ式で、運悪く固いコマが混ざっていると非常に苦戦する。私が手にした時計も1つだけやたらと固いコマがあり、焦って作業したのでガリッと傷をつけてしまった。
測定器による消費電流&歩度チェックは、事前にレクチャーを受けたおかげで問題なく測定することができた。
苦手なラッピングは事前にかなり特訓していたので、課題の木型をスムーズに包むことができた。
そして合格
実技試験から約1ヶ月後、無事合格通知が自宅に届いた。
合格証書ならびに技能士章は、さらに1ヶ月後に無事受け取ることができた。