これ、な~んだ?
我々質屋業界の取扱う古物の品目は多く、非常に幅広い知識が要求されます。宝石・貴金属に関しては教育研修機関が複数存在するので、しっかり学習することも可能ですが、その他の分野では系統立てて正しい知識を習得することが難しいのが現状です。とはいうものの、店で一人経験と勘に頼って商売していると、思いもかけない落とし穴に陥る場合もあり、やはり自分自身に甘えず日々自己研鑽する努力が必要です。
今回は、時計修理技能士の資格試験に挑戦した体験談をまとめてみたいと思います。
時計修理技能士って?
時計修理技能士(とけいしゅうりぎのうし)とは、国家資格である技能検定制度の一種で、都道府県知事(問題作成等は中央職業能力開発協会、試験の実施等は都道府県職業能力開発協会)が実施する、時計修理に関する学科及び実技試験に合格した者をいう。
等級は1級から3級まであり、それぞれ学科試験と実技試験があり、3級の実技試験ではアナログ水晶腕時計の裏ブタの開閉、パッキンの交換、電池の選択ならびにセット、電池電圧・消費電流・歩度測定、バンドの取外し取付け、バンドのコマ詰め、及び包装などを行う。なお実務経験が1年以上ないと受検できない。私は質屋なので時計修理が専業ではないが、電池交換やブレスレットの調整等を日常的におこなっているので大丈夫だ。
しかし、2級となると話は変わってくる。実務経験3年以上で、試験内容はアナログ水晶腕時計の分解掃除が出来るかを問う試験になる。さらに与えられた日差以内に精度を修める技能を求められる。さらに1級時計修理技能士は実務経験10年以上で、試験内容は2級の内容に加え、機械式腕時計の分解掃除・注油等が正確に出来るかを問う試験になる。こちらも与えられた日差以内に精度を修める技能を求められる。
2級以上は時計のオーバーホール(分解掃除)に日常的に携わっていなければならず、質屋業務での必要性を考えると、3級の資格があれば十分だと思われ、今回は3級資格を受検することにした。しかし、そもそも何を勉強していいのかわからない。大きな書店にも該当する資料やテキストが並んでおらず、資料収集から手探りの状態でのスタートとなった。
資料集めと受検申し込み
インターネットでいろんな情報をかき集めているうちに、「全時連」(全日本時計宝飾眼鏡商業協同組合連合会)という組織が「時計修理読本」というテキストと、学科試験問題&解説集を9,450円で販売していると知り、早速電話で問い合わせてみたところ、学科試験問題集は在庫があるが、肝心の時計修理読本がすでに売り切れとのことで、仕方なく試験問題集だけを送ってもらった。テキストは古本などを探してみたが見つけることができ八方手を尽くして所有している方を探し出し、しばらくお借りすることになった。
次に受検の申込みについては「大阪府職業能力開発協会」に問い合わせてみた。技能検定には前期日程と後期日程があり、時計修理は後期日程でしか開催されない。時計修理は都道府県によっては試験すら開催されないので、他の技能検定にくらべて受検者が非常に少ないかなりレアな資格である。後期日程の場合、受検申し込みは10月1日~12日の間に行わなければならず、受検料は16,500円と高い。さらに職種によっては取りまとめ団体が別に存在するらしく、時計修理に関しては大阪では「大阪時計宝飾眼鏡商業協同組合」が窓口となっているとの説明を受けた。
というわけで10月の初旬、職歴・学歴まで記載欄のある技能検定受検申請書と受検料をもって同組合の門を叩いた。質屋組合以外の事務所を訪ねるのは初めてだったが、年配の女性事務員の方が一人座っておられた。質屋が飛び込みで受検申込にきたと知って、ずいぶんモノ珍しそうに眺められた。
実はこの組合事務所には「大阪府時計高等職業訓練校」が併設されており、入学金、授業料(1年分)として25万円、さらに非組合員は別に66,000円を納入して組合員資格を取得すれば、当校に入学が可能だ。(ただし、大阪府民に限る)訓練期間は1年間。2級技能検定の合格を1つの目標としてカリキュラムが組まれている。当校を修了すると、「時計修理技能士補」の称号が得られ、2級技能士試験の学科試験が免除される。また受検に必要な実務経験数が通常よりも大幅に短縮されるという特典がつく。
(次号へ続く)