「相手が変わってくれたら」と思う前に試してほしいこと
「パートナーが来てくれない」という悩み
夫婦カウンセリングを受けたいと思っても、パートナーが同意してくれない。「カウンセリングなんて必要ない」「行く時間がない」と断られてしまう。
そんな時、「やっぱり一人では無理なのか」と諦めてしまう方が多くいらっしゃいます。
でも、実は夫婦カウンセリングは一人でも受けられます。そして、一人で受けても効果があります。この記事では、その理由を説明します。
よくある誤解:「二人で行かないと意味がない」
「夫婦カウンセリング」という名前から、「夫婦二人で行くもの」と思われがちです。確かに、二人で来ていただくことも可能ですし、二人で取り組めればより良い面もあります。
しかし、夫婦カウンセリングの本質は「夫婦という関係性」を扱うことであって、「二人が揃って来る」ことではありません。
一人でも、夫婦の関係性について話すことができます。一人でも、関係性を変えていくことができます。
なぜ一人でも効果があるのか:システムの考え方
家族療法では、夫婦や家族を「システム」として捉えます。
システムとは、すべての部分が互いに影響し合っている関係のことです。ある部分に変化が起きると、システム全体がそれに反応して、バランスを取り直そうとします。
例:シーソーのイメージ
公園にあるシーソーを想像してください。片方の人が動けば、もう片方の人も必ず動きます。片方だけが動いて、もう片方が完全に静止したままということはありません。
夫婦関係も同じです。あなたが変われば、パートナーも変わらざるを得ません。あなたの行動が変われば、パートナーの反応も変わります。
具体例:追う・逃げるパターン
前回の記事で紹介した「追う・逃げる」のパターンを思い出してください。
妻が追う → 夫が逃げる → 妻がさらに追う → 夫がますます逃げる
このパターンで、妻が「追わない」を試してみたらどうなるでしょうか。
妻が追わなくなると、夫は逃げる必要がなくなります。逃げる必要がなくなると、夫の方から話し出すことがあります。
一人の行動が変わっただけで、パターン全体が変わります。これがシステムの性質です。
「相手を変えよう」ではなく「自分の関わり方を変える」
大切なのは、「相手を変えよう」とするのではなく、「自分の関わり方を変える」ことです。
パートナーを変えることはできません。しかし、パートナーへの関わり方は変えられます。
よくある相談:「夫が話を聞いてくれない」
「夫が話を聞いてくれない」という相談をよく受けます。
カウンセリングでは、「どのような状況で」「どのように話しかけて」「夫がどう反応するのか」を詳しく伺います。
すると、パターンが見えてきます。
- 夫が疲れて帰ってきた直後に話しかけている
- 一度に多くのことを話している
- 「どうして〜してくれないの」という責める言い方になっている
このパターンに気づいたら、「いつもと違うこと」を試してみます。
- タイミングを変えてみる(夕食後、休日の午前中など)
- 一つのことだけに絞って話してみる
- 「〜してくれると嬉しい」というお願いの形で伝えてみる
このような小さな変化が、夫の反応を変えることがあります。
一人で参加するメリット
実は、一人で参加することには、いくつかのメリットもあります。
1. 自分のペースで話せる
パートナーがいると、「こんなことを言ったら傷つけるかな」「怒らせるかな」と気を使うことがあります。一人なら、遠慮なく自分の気持ちを話せます。
2. 自分の行動に集中できる
二人でいると、どうしても「相手が悪い」「相手が変わるべきだ」という話になりがちです。一人なら、「自分に何ができるか」に集中できます。
3. 相手のプレッシャーにならない
パートナーにとって、カウンセリングに行くことは心理的なハードルが高いかもしれません。「あなたも一緒に来て」と言われることが、プレッシャーになることもあります。
一人で行くことで、そのプレッシャーを避けられます。そして、あなたの変化を見たパートナーが、後から「自分も行ってみたい」と言い出すこともあります。
カウンセリングでできること
一人で参加される場合、カウンセリングでは以下のようなことを行います。
パターンの確認
あなたとパートナーの間で、どのようなパターンが繰り返されているか。お話を伺いながら、一緒に確認していきます。
自分の行動の見直し
そのパターンの中で、あなたがどのように関わっているか。「いつもと違うこと」として、何ができそうか。一緒に考えていきます。
試した結果の振り返り
次回のカウンセリングで、試してみた結果を振り返ります。うまくいったことは続け、うまくいかなかったことは別の方法を考えます。
この繰り返しが、少しずつ関係性を変えていきます。
「後から一緒に来たい」となったら
一人で数回カウンセリングを受けた後、「パートナーも一緒に来たい」となることがあります。
その場合は、もちろん二人でのカウンセリングに切り替えることができます。柔軟に対応しますので、遠慮なくご相談ください。
逆に、最初は二人で来ていただいて、途中から一人になることも可能です。
大切なのは、あなたとパートナーの関係が改善することです。そのための形は、状況に応じて変えていけば良いのです。
まとめ
夫婦カウンセリングは、一人でも受けられます。一人の行動が変われば、関係性全体に影響が広がります。
「パートナーが来てくれないから」と諦める必要はありません。あなた一人でも、関係性を変えていくことができます。
一人での参加について、より詳しく知りたい方は、当カウンセリングルームのWebサイトもご覧ください。
ご相談やご質問がありましたら、お気軽にお問い合わせください。



