他者を通じて深まる自己理解

山崎孝

山崎孝

テーマ:カウンセリングとは

カウンセリングで自己理解が深まる理由―ジョハリの窓から考える


自己理解は他者を通じて深まる


「自分のことは自分が一番よく知っている」

そう思われるかもしれません。しかし、実際には自分だけで自分を理解することには限界があります。なぜなら、自分にとって当たり前すぎることは、自力では気づきにくいからです。

価値観や思考パターン、行動の癖といったものは、鏡で見える外見とは異なります。他者の視点を通じて初めて、自分の姿が見えてきます。自己理解は、他者との関わりの中で深まっていくのです。

ジョハリの窓とは


ジョハリの窓

ジョハリの窓は、心理学者ジョセフ・ルフトとハリー・インガムが提唱した、自己理解のためのモデルです。このモデルでは、自分自身を4つの領域に分けて考えます。

開放の窓(開放領域)


自分も他者も知っている自分です。例えば、自分が几帳面な性格だと自覚していて、周囲もそう認識している場合、それは開放の窓に含まれます。

盲点の窓(盲点領域)


他者は知っているが、自分は知らない自分です。例えば、周囲からは「いつも頑張りすぎている」と見えているのに、本人はそれに気づいていない場合がこれに当たります。

秘密の窓(秘密領域)


自分は知っているが、他者には見せていない自分です。人に言えない悩みや本音がここに含まれます。

未知の窓(未知領域)


自分も他者も知らない自分です。まだ発見されていない可能性や、深層にある感情などがこの領域にあります。

このモデルが示しているのは、自己理解を深めるには、他者との関わりが不可欠だということです。自己開示とフィードバックを通じて、開放の窓を広げることで、より深い自己理解が可能になります。

なぜカウンセリングが有効なのか


日常生活でも、家族や友人との関わりの中で自己理解は深まります。しかし、カウンセリングには、日常の関係性にはない特別な利点があります。

安全な関係性


カウンセリングは守秘義務で守られた、安全な空間です。普段は人に言えない悩みや本音を、安心して話すことができます。

専門的な視点


カウンセラーは心理の専門家として、来談者さんの話を理解し、適切なフィードバックを返します。日常の人間関係では得られない、客観的で専門的な視点が得られます。

関係性のしがらみがない


家族や友人との関係には、様々な感情やしがらみがあります。カウンセラーとの関係は、そうした複雑さから自由です。だからこそ、より率直に自分を見つめることができます。

カウンセリングで起こる2つのプロセス


カウンセリングでは、「自己開示」と「フィードバック」という2つのプロセスによって、開放の窓が広がっていきます。

自己開示による変化


自己開示(ジョハリの窓)

カウンセリングでは、来談者さんが自分の考えや感情をカウンセラーに話します。これが自己開示です。

普段は人に言えない悩みや本音を言葉にすることで、秘密の窓が開放の窓へと変わります。カウンセラーという守られた関係の中だからこそ、安心して自分をさらけ出すことができます。

自己開示には、もう一つ重要な効果があります。それは、言葉にする過程そのものが自己理解を深めるということです。漠然としていた感情や考えを言葉で表現しようとすると、自分の内面がより明確になっていきます。

フィードバックによる気づき


フィードバック(ジョハリの窓)

カウンセラーは来談者さんの話を聞いて、自分の理解が合っているかを確認します。「つまり、こういうことでしょうか」と問いかけます。

この確認に対して、来談者さんは「そうです、でももう少し正確に言うと...」と、より適切な言葉を探すことがあります。このやり取りの中で、考えや気持ちの解像度が上がっていきます。

カウンセラーからのフィードバックは、盲点の窓を開放の窓に変える働きをします。自分では当たり前すぎて気づかなかった思考パターンや行動パターンを、カウンセラーが言語化してくれることで、新たな視点が得られます。

これは、他者の視点を通じて自己理解が深まる、最も効果的なプロセスです。

未知の窓が開かれる瞬間


広がる自己理解(ジョハリの窓)

自己開示とフィードバックを重ねていくと、さらに深い変化が起こります。未知の窓が開放の窓へと変わる瞬間です。

「自分は本当はこう感じていたんだ」
「そうか、私はこういうパターンで悩んでいたんだ」

こうした気づきは、自分でも他者でも知らなかった領域に光が当たった瞬間です。この種の気づきは、問題の本質的な理解につながります。

この深い気づきは、カウンセラーという専門的な他者との関わりがあるからこそ生まれます。

なぜカウンセリングが自己解決を促すのか


カウンセリングでは、カウンセラーが解決策を与えるのではありません。来談者さん自身が、他者との関わりの中で自己理解を深め、自ら解決への道を見出していきます。

これが可能になるのは、開放の窓が広がることで、問題の全体像が見えるようになるからです。自分の本当の気持ちや、問題を維持しているパターンに気づくと、自然と「では、どうすればいいか」が見えてきます。

傾聴とは


傾聴とは、単に話を聞くことではありません。来談者さんの自己開示を受け止め、適切なフィードバックを返し、気づきが生まれるプロセスを支援することです。

このプロセスを通じて、来談者さんは他者との関わりの中で自分自身をより深く理解し、自ら解決に向かって歩み始めます。それが、カウンセリングが気づきを生み、自己解決を促す仕組みです。

自己理解は他者を通じて深まります。そして、カウンセリングは、最も有効な手段の一つです。

尚、当カウンセリングルームでは、ご本人が希望する場合を除いて、傾聴だけのカウンセリングは行いません。しかし、カウンセラーのアドバイスを希望して始まったカウンセリングが、傾聴を通じた気づきで解決に至るケースもあります。

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山崎孝
専門家

山崎孝(公認心理師)

心理カウンセリング大阪・吹田のフルフィルメント

夫婦・カップル関係の面接1000回以上の実績。悪者を作らない、人を責めない支援で、喧嘩が絶えない・気持ちが離れた関係から、二人が支え合える関係への変化を促します。お一人での相談も可能。

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