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動物や人のフィギュア、彫刻、ジオラマなど、さまざまな立体造形物を製作

細部にもこだわって顧客の要望を形にする立体造形職人

岡田信美

岡田信美 おかだのぶよし
岡田信美 おかだのぶよし

#chapter1

博物館やテーマパーク、イベントに必要な造形物を40年以上の技術で形に

 大阪府堺市を拠点に、立体造形物を専門に手掛ける「アート工房Dekunobou」。用いる場面は、博物館やテーマパーク、アミューズメント施設、各種イベント会場です。展示物にレプリカ、動物や人のフィギュア、彫刻、ジオラマ、模型、立体看板などを請け負っており、テレビや舞台の美術セットも担います。

 「FRP(強化繊維プラスチック)を主に使いつつ、ゴムや発泡スチロールなど、多種多様な素材を駆使して製作しています。表現力には自信がありますよ」と話すのは、代表の岡田信美さん。立体造形に40年以上従事してきたベテランの職人です。

 リアリティーや躍動感、愛らしさや親しみやすさなどを伝え、見る人の心をつかむために大切にしているのは、目に見えない部分も含め細部まで丁寧に仕上げること。下準備にも一切手を抜きません。

 「リン鉱山で有名な、人口550人程度の島の戦前のジオラマを250分の1スケールで作ったことがあります。島内をくまなく歩き、島の歴史も丹念に調べた上で製作に取り掛かりました。調査を含め完成まで2カ月かかりましたが、達成感とやりがいがありましたね」

 これまで、数々のニーズに応えてきた岡田さん。クライアントの中で具体像が決まっているケースもあれば、「こんな感じで」と簡単なラフスケッチで指示を受ける機会も珍しくありません。

 「エスキースという小さい試作品を作成し、お客さまの了解を得られたら本格的な作業に移ります。イメージが完全に固まっていなくても問題ありません。私が形にしてみせます」

#chapter2

「不器用で、正直にしか生きられないからこそ出せる味がある」

 1947年に奈良県天理市で生まれた岡田さん。地元の高校から大阪府立大学に進学し、経済学を専攻。4回生になって卒業を意識し始めた頃から、芸術の道に進みたいと考えるようになったそうです。

 「当時は学生運動が盛んな時代でした。要求や異議を唱えて果敢に声を上げる様子を目にして、このまま就職をして何の変哲もない人生を歩むのではなく、自分を表現したいという感情が膨れ上がっていったのです」

 大学卒業後は研究所でデッサンの勉強を続けていましたが、20代の後半、以前から好きだった奈良市の興福寺の「木造無著・世親立像」をおもいだし、彫刻を志します。「京都の芸術大学教授の彫刻家が主宰してるアトリエに、アルバイトをしながら通うようになりました。しかし、30歳を前にした頃、体調を崩して入院することになったんです」

 1年間の療養生活を経て、立体造形会社に入社。約18年にわたって経験を積み、1995年に独立をしました。

 「ちょうどバブルがはじけた頃で、受注数が減っていました、45歳を超えていましたし、もっと彫刻に携わりたいという気持ちも背中を押しました」

 工房名の「Dekunobou」は「木偶の坊(でくのぼう)」から付けたそうで、「気が利かない」といった意味があります。「私は不器用で、正直にしか生きられません。けれど、不器用だからこそ出せる味があると思い、この屋号にしています」

岡田信美 おかだのぶよし

#chapter3

若いスタッフに惜しみなく技術を伝え、ものづくりにまい進

 独立当初は、バブル崩壊の余波でなかなかオファーがなく苦労したそうですが、前職時代のクライアントが発注してくれるだけでなく、新規顧客を紹介してくれたと言います。「新規のお客さまが、リピーターになっていく好循環が生まれました。おかげさまで、こんにちまで絶えず案件をいただく状態となり、私は営業活動をしたことがないんですよ」

 ただ、「コロナ禍のダメージは大きかった」と振り返ります。人が集まる催しは中止となり、さまざまな施設が軒並み長期間の閉鎖を余儀なくされたからです。

 「各方面からいただいていた依頼も減少しましたが、もともと抱えていた仕事をこなしつつ、政府の補助金を活用して苦境を乗り切ることができました。今となっては、コロナ前よりも忙しい日々を過ごしています」

 多くの人に楽しんでもらうため、妥協することなくものづくりにまい進。共に汗を流すのは、20代前半から30代前半を中心にしたスタッフで、現在は5人が働いています。

 「私が長年の実務を通じて蓄えてきた知見と、若々しいエネルギーで日々の業務に取り組んでいます。手作りによる精度を強みとし、新しい素材や3Dプリンターも活用しながら、みなさんのご要望をかなえます」と岡田さん。

 「70代半ばとなりましたが、まだまだ若いスタッフには負けません。90歳までは現役で続けようと思っています。その間に、私の持てる技術を惜しみなく伝えていきたいですね」と気力に満ちています。

(取材年月:2023年10月)

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岡田信美

細部にもこだわって顧客の要望を形にする立体造形職人

岡田信美プロ

立体造形職人

アート工房Dekunobou

博物館やテーマパーク、アミューズメント施設の他、イベント向けに人形、彫刻、ジオラマ、模型、立体看板などさまざまな立体造形物を製作。40年以上の職人経験を生かし、顧客の要望を形にします。

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