グリストラップの清掃できていますか?|飲食店が知っておくべき義務と現場の課題
ケーキ職人から清掃業へ――意図せぬ転身が人生を変えた
私がケーキ店で働いていたのは、清掃業に転職する前のことです。菓子作りにやりがいを感じていましたが、ある時期から体調に異変が現れ始めました。小麦アレルギーの発症です。粉を毎日扱う環境では働き続けることが難しくなり、親類が営むダクト清掃会社へ転職することになりました。
清掃の仕事は体を動かすやりがいがあり、徐々に慣れていきました。しかし、業務で使用する洗浄剤が新たな問題を引き起こし始めました。厨房のグリストラップやダクトの洗浄には、強アルカリ性の洗浄剤が一般的に使われます。この洗浄剤が皮膚に触れたり、揮発した成分を吸い込んだりすることで、元々あったアトピー性皮膚炎が悪化し、咳が止まらなくなる状態が続くようになったのです。
保護具を着用しながら作業していましたが、それでも毎日の積み重ねによるダメージは確実に蓄積されていきました。「このままでは続けられない」という思いが日に日に強まりました。しかし清掃の仕事そのものは続けたかった。清掃の現場を離れたくはなかった。そこで思い至ったのが「自分で安全な洗剤を作る」ということでした。
洗剤の開発に必要な化学の知識は独学で身につけるしかありませんでした。書籍を読み、大学の研究者を訪ね、専門家に相談を重ねました。清掃の仕事をしながら、空き時間と休日を開発に充て、試作品を現場で使って改良を繰り返す日々が始まりました。これが美ら技研のすべての始まりです。
資金が底をつきかけても、諦められなかった理由
製品開発は、想像以上に長く険しい道のりでした。洗浄力を高めれば刺激が強くなる。刺激を抑えれば洗浄力が落ちる。この相反する要求を同時に満たす配合を見つけることは、化学の素人が独学でたどり着くには途方もない挑戦でした。
開発資金は自身の給料から捻出していました。試作のたびに材料費がかかり、失敗すればそれが無駄になります。何度試しても思うような結果が出ず、資金も底をつきかけた時期が何度かありました。「もう諦めようか」と思ったことは一度や二度ではありません。
それでも続けられた理由は、現場の声でした。清掃の仕事を続けながら、同じ悩みを抱えている人たちの声を聞き続けていました。「もっと安全な洗剤があれば助かる」「臭いをなんとかしたい」「廃油処理が大変すぎる」。こうした声が、諦めそうになるたびに前に進む力になりました。
大学の研究者との協力を得て、成分の組み合わせと配合の研究を深めていく中で、少しずつ手応えが生まれてきました。刺激を抑えながら洗浄力を確保するための独自の配合方法が、試行錯誤の末に見えてきたのです。そして開発を始めてから約18年、ついに「美らちゅら超洗浄(グリストラップ用)」が製品として完成しました。
2つの公的評価と全国3,000店舗以上の実績
製品化にたどり着いた後も、改良と普及の努力は続きました。清掃業を続けながら実際の現場で製品を使い、顧客の声を集め、フィードバックを製品に反映させる。この繰り返しが製品の完成度を高めていきました。
2019年、「にっぽんの宝物 JAPANグランプリ」において審査員特別賞を受賞しました。全国の中小企業・個人事業主が開発した製品・サービスが競う事業コンテストに沖縄県大会で代表として選ばれ、全国大会で特別賞を受賞したことは、製品の独自性と価値が広く認められた証でした。
2023年には「沖縄県優良県産品」に認定されました。これは沖縄県が産業振興の観点から、品質・デザイン・独自性などの基準を満たした製品を認定する制度です。地元・沖縄での評価が公式に認められたことは、地域への貢献という観点からも大きな喜びでした。
現在は全国3,000店舗以上でご利用いただいており、「グリストラップの清掃が格段に楽になった」「廃油処理業者を呼ぶ回数が減りコストが下がった」「近隣からの苦情が減った」といった声が継続的に届いています。また第三者機関による検査データで下水道法の基準値を大幅に下回る結果を出しており、製品の信頼性を数値で示しています。これらすべてが、18年間の開発努力が実った結果です。
清掃業を続けながら開発を重ねる理由
製品化を果たし会社を設立した後も、私は清掃業を続けています。「なぜ今も清掃をしているのか」とよく聞かれます。答えはシンプルです。現場を離れると、製品の本当の課題が見えなくなるからです。
洗浄剤の開発者が、実際の現場で使い続けている。これはそう多いことではないかもしれません。しかし私にとって、清掃の現場は最高の研究室です。どの汚れにどう作用するか、どのシーンで使いにくさを感じるか、どんな改良があれば現場の負担がさらに減るか。使い続けることで初めてわかることがあります。
顧客の声を製品改良に反映させるサイクルも、現場にいるからこそ素直に受け取れます。「もっとこうなれば」という声を聞くたびに、次の改良のヒントが生まれます。美ら技研の製品が現場で本当に使える製品であり続けるために、私は今日も清掃の仕事を続けます。
沖縄の海を守るために――SDGsと水環境への思い
私は釣りが好きで、海が身近な存在として育ちました。沖縄の美しい海は、私にとって単なる風景ではなく、生活の一部です。その海がきれいであり続けることへの思いは、製品開発を続ける原動力のひとつです。
飲食店や家庭の厨房から排水される水は、処理を経た後、川や海へと流れていきます。毎日大量に使われる洗浄剤の成分が、その水にどう影響するかを真剣に考え続けてきました。強アルカリ性の洗浄剤は洗浄力が高い一方で、排水中に残留する成分が水環境に影響する可能性があります。美らちゅらシリーズが天然由来成分の力を活用しながら、下水道法の基準値を大幅に下回る排水安全性を実現しているのは、こうした思いからです。
美ら技研は、SDGsへの取り組みとして「気候変動・水質汚染・労働人口の減少など様々な社会課題に向き合い、世界中の人々が安心・安全で豊かに暮らせる社会に向けた製品の開発と社内労働環境の改善」を掲げています。一人の清掃員が現場の課題から出発して開発した製品が、いつか世界の水環境に貢献する。その夢を持って、今日も沖縄から製品を届け続けます。
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