アクセント違いで「勝ち負け」が「酒のみ」に…
「推し」に入れ込み過ぎてて「引く」
文化庁の「国語に関する世論調査」の結果が出ました。
応援しているお気に入りのアイドルや俳優などに使う「推し」、自分の姿をちょっと良く見せようとする「盛る」はかなり浸透しているといいます。
この二つは何となく最初に聞いたときから意味合いは伝わってきました。「推し」は推薦という熟語の個人版。誰にも遠慮することのない「推し」なのでしょう。ただ「盛る」の方は、“厚化粧”の「盛る」が浮かんできて、オジさんの脳裏に浮かぶのはかつてのゴギャルさんたちなのです。
「引く」も含めて認知度は7割を超えているそうですが、「引く」も“妙なやつで呆れちゃう”といったニュアンスだと考えると昔の時代劇で、悪役のボスが「引け!」と言ってるシーンが浮かんできます。
中高年にもスッと入ってくるのは、ニホンゴが残っているからでしょう。
一方で、ばかにするとか無視するを意味する「ディする」。Googleで検索すること(昔でいえば辞書を引く)を意味する「ググる」。特定の言い方やモノが一気に拡散していく「バズる」…といった外来語+「ら」ことばは、なかなか高年齢層には受け止められていない気がします。
「エモい」は心を動かされる…くらいの意味なんだと思いますが、街頭インタビューで聞かない日はありません。外来語+「い」ことばは、以前から存在していて、「エロい」は今でも死語にならず使用されています。この手のコトバは、外来語の部分がどの程度認知されているかで意味が幅広く伝わるかどうかが決まるのでしょう。しかし、最近多くの若い世代が使う「ピンクい」はどうもいただけません。「色」+「い」は「黒」「赤」「白」「青」では使いますが、「ピンク」は日本語ではありません。
省略語が急増すると広がる世代間ギャップ
今回の調査では言葉に影響を与えるメディアのトップはテレビでした。ちょっとほっとしましたが、有名人が発する言葉が流行を作りやすいのは事実です。国会で何度も使用された「忖度」は、あのやり取りのおかげで漢字を書ける人が増えたのではないでしょうか。
昨今は毎年のように新たな外来語が辞書に登録されるようになりましたが、かつては結構なインパクトがありました。
1970年代に「自らの出自」という意味で「ルーツ」という言葉が使われるようになりました。アレックス・ヘイリーの小説を基に放送されたテレビドラマが大きな話題となり、日本でも放送された「ルーツ」。クンタ・キンテの物語は日本でもすごい聴取率を記録しました。同時に、その後自分の先祖であったり、もともとの専門などを表現するときに「ルーツ」と使うようになりました。
「リベンジ」は最初は格闘技の世界で使われ、松坂大輔がその言葉を使って一気に定着しました。1999年の新語・流行語大賞にもなっています。
外来語は今後も日本語単語として定着していくものが多くなるでしょうが、生々流転する省略語は、置いてきぼりにされる中高年を混乱させつつ年齢格差を助長させ、ほとんどのものが消えていくのでしょう。ただ、ことばの変遷に関して言えば、時代に乗ろうとしてそれを意図的に使うメディアの責任は大きいと言わざるを得ません。