コラム
小股の切れ上がった…
2023年4月20日
「水戸黄門」と言えば、勧善懲悪の象徴のようなドラマです。大概50分ほどの中で、悪さをする奴が描かれ、それにかかわってしまう黄門さま一行が描かれ、最後は印籠が出てきて一件落着というストーリーです。
ところがある時、物語がシリーズ最大の山場に差し掛かって、その日の放送で決着を付けずに、全編と後編に分けて放送されたことがありました。その時局には「なぜ二回に分ける!」というお叱りの電話があったそうです。いろいろな意味で「来週見られるかどうかわからないじゃないか」と言うことのようなのです。決着を見られずに終わったら死んでも死にきれないというんですね。
時代劇を地上波で見る機会が本当に少なくなりました。昔から時代劇の主たる視聴者層はお年寄りというのはみんなわかっていましたが、子連れ狼とか学校でコドモたちの話題になる時代劇もありました。ここまで見なくなると寂しいですね。
時代劇が少なくなった結果、聞かなくなった言葉も増えました。
小股の切れ上がった女。
すらりとした粋な女のひとに対する表現です。
先代の三遊亭圓歌師匠は、このことばを、足首に力を入れて立ち上がった時の姿勢がいいことだと仰っています。だから昔は肉屋(すき焼き屋)で肉を運ぶ女性が一番モテた。「大きな鍋や具材を持って階段を上がったり下がったりしているからどうしたって足首がきゅっと締まる」それを称して“小股の切れ上がった女”と言ったんだそうです。
かつては男性にも使ったようですが、そういえば大相撲にも、相手の踏み込んだ足をすくって倒す「小股すくい」という決まり手があります。
時代劇が少なくなることは、和装の時の所作や動きに加え、コトバも引き出しの中にしまい込んでしまうことになりかねないなと感じています。
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