「推し」に入れ込み過ぎてて「引く」
「日本語アクセント辞典」というものを御存じでしょうか。
最近は外国の方向けにオンラインの「アク辞」(アナウンス辞典)も出ているし、電子辞書の中には発音してくれるソフト付きのアクセント辞典が入っているものもあります。ただ、書籍化されているものでの基本は、NHK放送文化研究所の「日本語発音アクセント新辞典」と三省堂の「日本語アクセント辞典」だと思います。
両方持っていている中で個人としての結論から行くと、三省堂のアク辞の方が分かりやすい。理由はいろいろありますが…。
数詞や単語についての解説はNHK「ことばのハンドブック」が便利です。
アクセントというのは時代とともに変化していくもので、かつては頭高だった「赤とんぼ」のアクセントが平板化して行ったように、これが正解!と言い切れなくなっています。
最近のアク辞には、もともとのアクセントと、最近「許容」されるようになったアクセントが併記されています。恐らく、今まで「一義」だったものが入れかわっていくことばがたくさんあると思います。
以前、放送業界で「くまモンアクセント騒動」がありました。熊本県のゆるキャラ「くまモン」のアクセントが民放の系列で割れたのです。頭高で「ク」を高く読むところと、尾高で「マ」にアクセントを置く局が混在していました。
生き物の「クマ(熊)」のアクセントはもともと尾高でした。疲れたときに目の下にできる「隈」と同じです。それが時代とともに揺れてきていました。その時期に起きたのが「くまモンアクセント騒動」でした。
NHK放送文化研究所は、『新』辞典を作る段階で、三千三百の語のアクセントに変更があったとしています。その中に「クマ」がありました。新版では「どっちも〇」とされ併記されています。騒動を辞書上で丸く収めたということなんでしょうか。
先日「このアクセントどっちだっけ」と話題になったのが「端子(たんし)」でした。
こういう単語はおおむね専門家やその分野が好きな人が話す言葉を聞いて覚えます。それがたいがい「平板アクセント」なのです(「端子」は頭高)。舞台にある奈落はもともと地獄に落ちるという梵語の仏教用語がもとになっていますが、もともとは頭高で「な」にアクセントを置いていたようですが、今は平板化しています。
これは私見ですが、業界用語がまず平板化して行くのではないかと思います。つまり業界用語が一般に普及していく中で、みんな平らになっていく。そんな気がしています。
ただ精度の低いAIはアクセントを覚えるのが苦手らしく、昔のSF映画のロボットのように平板でやべり続けていますが…。