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携わった仕事が何十年も残る、達成感のある土木建設業。若手技術者の育成に尽力

地域住民の生活を支える土木工事のプロ

吉廣昌子

吉廣昌子 よしひろまさこ
吉廣昌子 よしひろまさこ

#chapter1

公共工事や地域の土木工事のほか、災害発生時にはいち早く駆け付け復旧を先導

 「土木工事は自分が携わった仕事が何十年も残るので達成感があります。多くの若い人にぜひチャレンジしてもらいたいですね」と話すのは、由布市庄内にある「ラックワイド」で専務を務める吉廣昌子さん。公共工事や地域の土木工事を請け負っています。

 近年増えているのは、災害復旧工事。自治体と災害協定を締結しており、土砂崩れや倒木などで道路が通行できなくなった際には、いち早く現場へ駆け付け、復旧作業を先導します。
 
 「道路が使えなければ、救助活動や救援物資の供給が滞りますし、被害の調査もできません。その後の復旧工事にも支障が出ます。だからこそ、高い使命感を持って業務にあたっています。田畑への土砂流入を防ぐ土留めブロックの施工を行うことも多く、生きるために必要不可欠な『食』の安定供給を支える一端を担っているという自負もあります」

 地域の安心・安全な暮らしを守る要としての責任を果たす一方で、土木建設業の担い手不足、高齢化への危機感も募らせる吉廣さん。自身の役割として若手技術者の育成にも力を入れています。

 「昔は『見て覚えろ』というのが当たり前でしたが、今の時代には合いません。育てるという視点を持って、若手に接する必要があります。当方では、現場での実践的な学びに加え、資格取得も奨励。休憩中に土木系の動画を視聴するなど、向上心のある従業員が多く、頼もしく思います」

#chapter2

美容業界から土木建設業へ。協力し合って一つの物を作ることにやりがい

 東京生まれ埼玉育ちの吉廣さん。かつては化粧品販売業に長年携わり、離婚を機に宮崎へ移住してエステサロンを開業。経営不振になり生活のために始めたのが、工事現場の交通誘導員のアルバイトでした。そこで出張で宮崎に来ていたのが現在の勤務先「ラックワイド」の社長で、「大分の由布院でエステをしてみては?」と提案され再出発を決意し、2009年に由布市に移住。やがて土木建設業の業務が多忙となり、吉廣さんも現場を手伝うように。最初は業界にあまりいいイメージは持っていなかったと言います。

 「当時土木工事に携わる女性はまだ少なく、私が現場で働いていると、あの会社は人手が足りなくて大変なんだと噂されることもありました。現場に女性用のトイレがなく、我慢をして膀胱炎にかかったこともあります」

 美容業界から離れ、社業に専念することになったのは、自分が携わった仕事が形になることが何よりおもしろかったから。伝統ある地場企業も多いなか、技術力を向上させ、小さな仕事にも真摯(しんし)に取り組む姿勢で、信頼を築いてきました。

 「工事中は大変なこともありますが、みんなで協力し合って一つの物を作る中で、連帯感も生まれます。良い雰囲気の中で現場が進めば、良いものが出来上がるんです」

 そして、55歳で一念発起し、2級土木施工管理技士の資格も取得。
 「現場のことがより分かるようになり、取得して良かったと感じています」

#chapter3

県建設産業女性活躍推進事業「BLOCKS」に参画し、誰もが働きやすい環境整備

 吉廣さんが社業に加えて力を入れているのが、県建設産業女性活躍推進事業「BLOCKS(ブロックス)」での活動です。

 「数年前、ドローン講習会で多くの女性技術者と出会い、こんなにも多くの女性が土木建設業で活躍しているのかと感銘を受けました」

 ブロックスで学んだことを社に持ち帰り、環境整備にも尽力。例えば、子育て中の社員には、子どもを送り出し後に出勤できるよう勤務時間を調整するなど、家庭事情にも配慮しながら、誰もが働きやすい職場づくりを進めています。

 「私自身も子育てや親の介護と両立させながら仕事をしてきました。現在は、障害のある娘に代わり、孫の育児にも関わっています。そうした経験から、子育てや介護の事情で離職を考える人の気持ちもよく分かります。だからこそ、一人一人の状況に寄り添った働き方を整えていきたい。これまで少数派とされてきた女性にとって働きやすい職場に変わることは、すべての人にとって働きやすい環境についながるのではないでしょうか」

  50代後半には大病を患い、入院を経験したことで、働き方や組織運営に対する考え方にも変化が生まれました。
 「それまでは、自分がいなければ会社は回らないと思い込んでいましたが、実際にはそんなことはなかったんです」
 “自分にしかできない仕事”という思い込みを手放し、仲間を信じて任せることで、社員が育つことを実感。それ以来、経営側として業務の見直しや改革を進めています。

 「大手の企業はすでに変わり始めています。私どものような小さな企業も変わってこそ、土木建設業界全体が底上げされると考えています。孫が大きくなった時に、土木工事が今よりもっと就きたくなる仕事となるよう尽力したいですね」

(取材年月:2025年6月)

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専門家プロフィール

吉廣昌子

地域住民の生活を支える土木工事のプロ

吉廣昌子プロ

土木建設業

株式会社ラックワイド

由布市を拠点に、土木工事や災害復旧工事に取り組む一方で、県建設産業女性活躍推進事業「BLOCKS」や、大阪万博「NO BORDERS」にも参加。女性が働きやすい環境整備や若手技術者の育成にも尽力。

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