中古バイクパーツの販売とバイク整備アドバイスのプロ稲葉正彦

中古バイクパーツの販売とバイク整備アドバイスのプロ

稲葉正彦

中古バイクとパーツの販売・買い取りを手掛け、ベテランから初心者まで来店

　「当方は、バイクのリサイクルショップと解体屋を足して2で割ったようなお店です。二輪専門でやっているのは珍しいようで、遠方からもお客さまがお越しになります」

　そう語るのは、新潟県長岡市で、中古バイクと中古パーツの販売・買い取りを手掛ける「ジャンクボックス」代表の稲葉正彦さん。来店者のメインは、自らバイクを「いじる」ことが好きな人。多くは口コミで訪れると言います。

　「ご自身の目で『これがいい』と見定めるベテランさんもいますし、バイクをさわり始めたばかりの初心者さんも訪れます。何を買えばいいか分からない場合は、お声掛けいただければアドバイスします」

　稲葉さんが常々来店者に告げているのは、「何が置いてあるかは運次第」。欲しい物に巡り会うためにまめに足を運ぶ常連もいて、午前中に入荷したものがホームページに掲載する間もなく、午後には売れてしまうこともあるのだとか。

　「2、3週間も商品が売れ残る方が珍しいですね。うちのサイトを朝昼晩とチェックしているような人もいますし、新情報がアップされるとスマホにプッシュ通知が届くサービスもあるんですよ」

　店を利用する人には「無駄なお金を使ってほしくない」が稲葉さんのポリシーで、状況を適切に見極めます。
　「うちの部品を購入して『必要なかった』などと、がっかりされるのは悔しいんです。例えば、『ウインカーが右だけ点滅しなくて』って聞くと、『原因はウインカーリレーじゃないから買わなくてもいい』とお伝えすることはよくありますね」

乗るよりもいじるのが好き。自動車整備士から趣味が高じてバイク業界へ転身

　16歳で原付免許を取得して以来、「乗るよりも、いじる方が好きなバイク愛好家」を自称する稲葉さん。元々は自動車整備士としてディーラーに勤めていましたが、とあるバイクショップの店主に、バイクに対する情熱と見識を見込まれたことをきっかけに開業を目指しました。

　「メカニックで入社したのに、営業に回されるような話が出てきた時期で、いい機会だと思いました。バイクメーカーの問屋に転職して2年間、店舗では手に負えない難しい修理を担当してスキルを高めながら、業界についても勉強させてもらいました」

　その後、自身を見いだしてくれたショップでも2年間働き、1993年に自店を立ち上げます。
　「バブルがはじけるなど途中いろいろありましたが、一度着いた火は消せず、独立した感じです。当初は新車販売やメンテナンスもしていましたが、現在のようなパーツ販売専門の業態に転じたのは2008年のこと。もうけるのが苦手で、お客さんのバイクをメンテナンスすることがビジネスとして立ち行かなくなったんです」

　とにかく根っからの貧乏性で、なるべくお金をかけずに対処する方法を追い求めていたことが一因と、稲葉さんは振り返ります。

　「故障したときも、丸ごと部品を新品に替えるのではなく、手間をかけてでも分解して直すような感じで。経営的にも時間的にも回らなくなってしまいました。だから今は、車両を売るにしても現状渡し。整備も『やり方は教えるから、手は自分で動かしてね』というスタンスで、結果的にバイクいじりが好きなお客さまが残りました」

トラブル発生時により早く原因を突き止め、対処するための方法論を共有したい

　「ほとんどのバイク、エンジンの構造と基本原理は一緒です。何か問題が発生した時により早く、的確に理由を突き止め、処置を施すにあたっては共通した方法論があります」と稲葉さん。

　現在は販売に専念するため、整備自体は請け負っていませんが、快適なバイクライフをかなえるため、保守管理に役立つ技を広く共有していきたいと考えているそうです。

　「『今回だけは何をやってもダメで』という上級者さんもいれば、『エンジンがかからないものを譲ってもらったけど、何から取り組んだらいいですか』という初心者さんもいて、舞い込む相談は千差万別。僕の所に来るのは修理をしてほしいのではなく、自分で直したい人ですから、『こう操作をしたら、こうなる傾向はありませんか』のように、問答の中で不具合の要因を探っていくんです」

　これまで数多くの事象に向き合い、来店者とコミュニケーションを重ねてきた稲葉さん。自らの強みと自認するのが、一人一人の知識量や熟練度に合わせた問診技術です。

　「例えばエンジンで言えば、大まかなトラブルのパターンは三つ。プラグに火花が飛ばない系、燃料が行かない系、本体自体がおかしくなった系です。経験が少ないと、まずどれから見たらいいか迷ってしまうものです。マニュアルでは一つずつ順を追って確認していきますが、問診により一番疑わしい原因に素早く着手できます」

　動画配信やリモートアドバイスなど、共有方法はまだ検討中とのこと。実践的なノウハウの提供を楽しみに待ちましょう。

（取材年月：2023年6月）

自分でいじるのが好きな愛好家のバイクライフをサポート

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乗るよりもいじるのが好き。自動車整備士から趣味が高じてバイク業界へ転身

トラブル発生時により早く原因を突き止め、対処するための方法論を共有したい

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