「怒り」をヒントに問題解決へと導くプロ山ノ内恵理

「怒り」をヒントに問題解決へと導くプロ

山ノ内恵理

職場の人間関係が企業の未来を決める

　株式会社「J・キャリアコンサルティング」は長野県上田市にある翻訳、外国人材雇用のコンサルティングを行う会社です。
「翻訳業務を通して外国人材の働く環境整備の必要性を感じ、平成29年にコンサルティング業務を始めました」と話すのは、代表取締役の山ノ内恵理さん。

　現在、地方の中小企業の人材不足は深刻で、2030年には日本の人手不足が644万人に達するとの調査結果もあります（パーソル総合研究所と中央大学調べ）。2019年に政府は人手不足を補うための新たな在留資格「特定技能」を導入、これからますます外国人材が増えていくことになります。
「外国人材にはそれぞれに文化的、社会的背景があります。それをいちいち否定していたら業務は進みません。外国人材は仕事と家庭のバランスや個人情報の扱い方など、私たちが当り前と考えていることと異なることがよくあります。“郷に入れば郷に従え”では、外国人材を生かすことは難しいのです」

　山ノ内さんは語学教育や異文化理解も大切にしつつも、座学で知識を得るよりも根本的な解決を目指しています。「まずは社内やチームの特色、ラインでの人の流れなど現状をうかがい、話し合いながら解決策を探っていきます」
　将来的には外国人材も確保が難しくなるとの報道もあります。そのとき外国人材に選ばれる日本を山ノ内さんは望んでいます。「そのためには職場の人間関係が外国人材にとっても良好であることが重要です」

アンガーマネジメントと非暴力コミュニケーションを駆使する真のコミュニケーションとは

　山ノ内さんは、職場の外国人材との良好な人間関係を構築するために「アンガーマネジメント」と「非暴力コミュニケーション（NVC）」をベースとしたコンサルティングをしています。「日本人同士でも起こりうる感情のすれ違いは、言葉や習慣の違う外国人なら、なおさらです。感情的になっても相手には伝わりません。業務上起こりうる怒りの感情をどうコントロールするか、それを習得していただきたいですね」

　アンガーマネジメントとはアメリカで誕生した「怒りをコントロールする」という考え方。怒らないことを目的とするのではなく、怒る必要のあることは上手に怒れ、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになることを目標としています。「ストレスの多い職場には創造性は生まれにくいものです。怒りに繋がるプロセスを理解し、働きやすい職場環境を目指しましょう」
　習得のための講座を随時開催するそうなので、参加してみてはいかがでしょうか。

　また、昨今話題となっている「非暴力コミュニケーション（NVC）」も重要だと山ノ内さんは考えています。「共感的コミュニケーション」とも呼ばれるこの方法は、相手との繋がりを持ち続けながら、お互いのニーズが満たされるよう話し合いを続けていくというコミュニケーションの方法です。
「コミュニケーションを巡る人間への探究心は尽きません。良いと思った理論は率先して学び、ベストな相談相手になれるよう努めています」と山ノ内さん。そのほかポリヴェーガル理論（多重迷走神経理論）など改善すべき内容に合った手法を取り入れて、真のコミュニケーションを目指しています。

社内のコミュニケーションを潤滑にし、誰もが働きやすい職場に

　もともと留学経験があり海外には興味があった山ノ内さん。「外国の方と関わる仕事をしたいと思っていましたが、そんな折に当時勤めていた会社にイスラエルの技術者を招くことがありました。その方の仕事の通訳から住まい、買い物、学校の連絡事項など生活上のやりとりをアテンドしたのは良い経験になりました」

　山ノ内さんは、実は不動産会社の社長でもあります。「不動産を始める前は東京や上田で一般企業に勤めていました。営業や経理、不動産業で人生のさまざまなシーンに立ち会って来たことが、今の外国人材コンサルにとても役立っています」
　外国人との触れ合いやいろいろな職種で培った経験を活かせるコンサル業は、山ノ内さんの明るくユーモアあふれるキャラクターにぴったりだと感じました。

　なお翻訳は、インドネシア語、ベトナム語、中国語に対応しています。特に裁判関連文書の翻訳は正確で迅速なため、依頼主である弁護士から大変喜ばれるそうです。
　おすすめなのが工場や農場で使う機械のマニュアルの翻訳。山ノ内さんはかつて外国語の製品マニュアルを作成していました。「マニュアルが母国語だったら理解も早くお互い嬉しいですよね。そこからコミュニケーションを取っていくことで、外国人材からは日本で働けてよかったと、経営者からは雇用してよかったと、そう言ってもらえるようになれば嬉しいです」

　外国人にとって働きやすい職場は向上心のある人が集まる場となり、ひいては企業の成長にも繋がります。仕事の依頼は全国から受け付けています。一歩先の行動で安定した経営に繋げるために、相談してみてはいかがでしょうか。

（取材年月：2019年1月）

真のコミュニケーションを用いて外国人材から選ばれる日本へ

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