PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

特産のゆずを生かした6次産業で、地域と伝統文化を守るべく活動

地域を支え、SDGsを見据えた果樹六次産業のプロ

濵砂修司

特産のゆずを生かした6次産業で地域を守るべく活動する濵砂修司さん
「銀鏡のゆず」としてブランドを確立し、地元に産業や雇用を生み出している

#chapter1

有機農法で栽培したゆずは大切な地域資源。調味料や果汁などの商品を国内外に展開

 宮崎県西都市の奥日向に位置する銀鏡。周囲を山々に囲まれた集落は歌や舞を奉納する神楽で知られ、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。

 「12月に開催される銀鏡神社の大祭で、夜を徹して行う『銀鏡神楽』は古くから伝わる代表的な行事です。私の根底にあるのは、大事な故郷と脈々と受け継いできた伝統を残したいという願いです」

 そう話すのは「かぐらの里」の代表取締役・濵砂修司さん。「過疎化が進むこの村を存続させていくためには、産業や雇用を生み出していかねばならない」との信念で活動。豊かな自然に育まれたゆずの加工、販売を通じて農産物の価値を高め、収入を向上させる6次産業に取り組んでいます。

 「私どものゆずは有機農法を採用しており、JAS(日本農林規格)の認証も取得しています。添加物を使わない商品開発、素材本来の味や香りを生かした高品質な商品づくりなど、正直な仕事をモットーにしています」

 1973年に、濵砂さんの父親が「ゆず生産組合」を結成してから約50年。地元の特産品としてブランドを確立した「銀鏡のゆず」を地域資源に村おこしをすることで、SDGs(持続可能な開発目標)の実現も目指します。

 「自社工場では徹底した衛生管理の下、ゆずこしょう、ゆずポン酢などの調味料、ゆず果汁、ジャムなどを製造するほか、受託生産のOEMにも対応しています」

 製品は、イベントや小売店、オンラインショップで展開し、業務用の卸も手掛けています。また海外にも輸出しており、その数は15カ国以上に及ぶと言います(2022年時点)。

#chapter2

消費者の声から生まれた、ゆずこしょうの20グラムサイズはヒット商品に

 「かつて奥日向エリアは林業が盛んで主産業の一つでしたが、外国産の木材の普及で衰退し、『このままでは村も伝統文化も失われてしまう』という窮地に立たされました。危機を感じた先代たちは生き残りの道を探し、この辺りに自生していたゆずに着目したんです」

 ゆずの栽培からスタートし、研究を重ね、1978年に濵砂さんの父親が現在の法人の前身となる「かぐら里食品」を創業。当時、JA(農業協同組合)に勤め、農家を1軒1軒回って村の現状を見ていた濵砂さんも「この地を守りたい」という思いが募り、27歳の時に家業を継ぐことを決心しました。

 「そこからは試行錯誤の日々で、商品化するにあたり、ゆずこしょうは唐辛子から自家栽培して納得いくものができるまでに10年を要しました」

 製品を広めるため、濵砂さんは休みなく日本中を駆け回り、百貨店の物産展などを巡りました。
 「それまでは農業からの目線だったのが、バイヤーや消費者の目線を知ることができ、得るものが多かった」と振り返ります。

 「ある時、出店先でお客さんから『ゆずこしょうは使い切るのに時間がかかり、瓶の口に乾燥してこびり付いてしまう』とお聞きしました。そこで20グラム入りの小さいサイズを手頃な価格で発売したところ、1年目から10万本を超える大ヒットとなり、その後も売り上げを伸ばしています」

 消費者の声に耳を傾け、良い品を作るためなら加工機器から開発をするなど、常に進化することを大切にしているそうです。

地域に古くから伝わる「銀鏡神楽」など伝統文化の継承にも力を尽くしている

#chapter3

山村留学で地域の魅力を広め、伝統の神楽を次世代に継承していきたい

 「もともとは自分に自信がないタイプなんです」と濵砂さん。「だけど、長きにわたり歴史を紡いできた銀鏡を次世代につないでいくという使命感は、誰にも負けないつもりです。ここまで一歩一歩階段を上って来ました。私たちの考え方に賛同してくれる仲間や、協力してくれる人も増え、それが前に進む力になっています」

 かぐらの里が掲げる理念は、「地域の付託に応えるべく、伝統を守り、その心を礎に1000年の地を創造する」。移り変わりが激しい現代においても、自身が生まれ育った山里が、しなやかにたくましく生き抜いていけるよう奮闘しています。

 「子どもたちに田舎暮らしを体験してもらう山村留学は、この村を支えてくれる未来のサポーターを育てたくて、里親として延べ50人以上(地域全体では約400人)の子どもたちを受け入れてきました。また、家族での移住を後押しする家族留学も2020年から始まりました。ぜひ親子でお越しください」

 銀鏡神社の神主も務める濵砂さんは、銀鏡神楽の継承にも力を注いでいます。神社の例大祭2022年2月には、神楽の里に伝わる風習や精神、生き方を題材にしたドキュメンタリー映画「銀鏡 SHIROMI」も公開。悠久の時の中で営まれてきた暮らしが、細やかに描かれています。

 「民意主導で地域づくりをしているんだということを知ってもらい、私たちの誇りと志を感じてもらえたら幸いです。農業や山村を憧れの対象にできるよう、これからも山の神のもと真面目にゆずを作り、みなさんにお届けしていきたいですね」

(取材年月:2022年7月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

濵砂修司

地域を支え、SDGsを見据えた果樹六次産業のプロ

濵砂修司プロ

ゆずの生産販売

株式会社かぐらの里

特産のゆずを使った六次産業で、過疎化が進む地域に雇用と活力を生み出し、次世代に続く地を創造すべく活動している。地域に古くから伝わる「銀鏡神楽」など伝統文化の継承にも力を尽くしている。

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ宮崎に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、またはテレビ宮崎が取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO