森永卓郎さんの講演から考える。(3)
前回は、日銀が世界経済を支える役割を担うことになり、円安が進むことを示しました。
今回は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国内債券の割合を大幅に引き下げた影響について示したいと思います。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)ってなに?
まず、GPIFってなんですか?というのが最初の疑問ですよね。著者もマスコミがGPIFの話題にするまで知りませんでした。そこで、著者なりに調べてみると、
GPIFの前身の団体は、年金福祉事業団で、「グリーンピアなどの保養施設の建設・運営」で大幅な赤字、「年金資金運用事業」を1986年バブル期に開始し、バブル崩壊で大損失を発生させた団体です。
2006年、経験や知識のない公的機関が投資の運用を行うのは無理との結論から投資の運用を民間会社に委託して、自身は投資資金を保有・管理する機関投資家(法人)として、GPIFが産まれました。ほぼ全ての厚生年金と国民年金の積立金を管理している世界最大級の機関投資家です。
前身の年金福祉事業団は、1990年代、凄く話題になっていたので知っておりましたが、GPIFという法人に衣替えしていたのですね。道理で著者も知らないわけです。
何をどう変更するの?
現在、運用の基本割合を、国内債券60%、国内株式12%、国外株式12%、国外債権11%、他、短期資産としているのを、将来、国内債券35%、国内株式25%、国外株式25%、国外債権15%、他、短期資産にするというのです。
つまり、リスク資産を倍以上にして、運用益を増加させたいと考えている訳です。
リスクはばらつき。
投資においてリスクとは何かというと、ばらつきです。銀行預金や日本国債は元金保証で利息も決まってます。これはノーリスク資産です。株式や外国債は元本保証でなく、運用損益・為替損益があり、ばらつきがあります。これはリスク資産です。このばらつきの大きさで、「ハイリスク」「ミドルリスク」「ローリスク」と分かれます。
リスク資産にすると資金は消える。
では、ここで問題です。
福利投資の株で、最初の1年は10%儲かったが次の年に10%損したAさんと、最初の1年は40%儲かったが次の年に40%損したBさん、どちらが損をしたでしょうか?
これをすぐに答えられる人は、かなり数学的センスが良い人だと思います。
これを解く計算式は、 期首の資金+(その年の運用損益)=期末の資金=次年の期首の資金 です。計算してみると、
Aさんは、1年目 1+(1×0.1)=1.1、
2年目 1.1+(1.1×-0.1)=0.99
Bさんは、1年目 1+(1×0.4)=1.4、
2年目 1.4+(1.4×-0.4)=0.84
これを見ていくと、AさんもBさんも中央値は同じく0%だけと、Aさんは1%の損をして、Bさんは16%の損をしたことになります。つまり、リスクが大きくなればなるほど、資金は減っていくのです。
(リスクに応じてリターンを求めないと損をするのです。)
変更前でも十分リスクはとっている。
GPIFのホームページには、運用開始の平成13年からの収益額と収益率の推移が載っております。それを見ると、収益率の最大値は+10.23%、最小値は-7.57%、通期間で+2.51%となっております。
これは変更前の結果ですので、構成割合2割ちょっとの株式によって全体がこれだけのばらつき・リスクが発生している。今後、株式の割合を5割にして2倍のリスクを取っていくというのですから・・・。
本来の年金給付のため確実な運用を心掛けるのであれば、これ以上のリスクをとる必要はないと著者は考えます。
アベノミクスで株式の運用が好調なのを背景に、儲けの皮算用で株式にのめりこむ・・・。なぜか、前身の年金福祉事業団を思い浮かべるのは著者だけでしょうか・・・。
次回につづく。
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