屋根の劣化のサイン
「漆喰」と聞くと多くの方が、蔵の壁などに使われる漆喰を想像するのではないでしょうか。あまり目立ちませんが、実は屋根にも漆喰は使われているのです。
庭先などに白いかけらが落ちているのを見たことはありませんか?それはおそらく軒先にある「雀口漆喰」や、棟にある「三日月漆喰」がかけて落ちてきたものだと思われます。
このページでは屋根のあらゆる箇所に使われる漆喰についてご紹介します。
漆喰とは
漆喰は消石灰(水酸化カルシウム)を主材料とした塗り材のことです。身近なところでいうと学校の運動場で白線が消石灰です。その消石灰に糊などのつなぎを加えて水で練ったものが漆喰になります。
屋根で使われる漆喰は大きく分けて「棟の下」、「鬼瓦」、「軒先(雨樋の裏側)」の3か所で使われます。
棟の下(三日月漆喰) | 鬼瓦(鬼瓦漆喰) | 軒先(雀口漆喰) |
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屋根に使われる漆喰は、
- 棟の下のものを「三日月漆喰」
- 鬼瓦に塗るものを「鬼瓦漆喰」
- 軒先の雨樋の裏側を「雀口漆喰」
とそれぞれ呼びます。
雀口漆喰に関してなのですが、漆喰を塗りなおそうと思うと雨樋を外さなくてはいけません。そして雨樋は基本的に1度外してしまうと使えなくなってしまいます。そのため、近年では漆喰が脱落した場合は漆喰を塗りなおすのではなく、板金で収めるケースが基本になってきています。
上記の画像もよく見ると漆喰ではなく板金が施工されています。
漆喰の役割
漆喰の役割は主に「美観」を保つことです。
それに加えて三日月漆喰や雀口漆喰は「屋根内部の屋根土の保護」、鬼瓦漆喰は鬼瓦を固定するための「接着剤」としての役割もあります。
三日月漆喰と雀口漆喰がなければ屋根土が雨ざらしになってしまい、雨漏りが促進されてしまいます。
鬼瓦は漆喰と番線によって固定されているため、鬼瓦漆喰がなくなってしまうと番線のみで固定されていることになり、番線に相当な負荷がかかってしまいます。
番線も錆び続けるといずれ切れてしまい、鬼瓦漆喰がない状態で番線が切れると鬼瓦が落ちてくることになってしまいますので注意しなくてはいけません。
漆喰の寿命
瓦屋根において、瓦自体の耐用年数は50~60年と長いものが多いですが、漆喰は瓦よりも短く20年前後を目安に表面が朽ちてきたり、ひび割れてきたりしてしまいます。
漆喰の主材料は消石灰のため、長い間雨風に晒されると朽ちてきますし、直射日光や寒暖差による劣化などで年月とともに痩せてきます。
本来、屋根の漆喰はメンテナンスが必要なものです。漆喰の劣化状況を見ながら必要な時期に正しいメンテナンスを行うことで、屋根全体の耐用年数を保つことができます。
漆喰の正しい修理方法
棟の下にある三日月漆喰についてですが、一般の方は「漆喰が脱落したらまた塗りなおせば良い」と思われるでしょう。
しかし、ただ単純に塗りなおせば良いというわけではありません。三日月漆喰の脱落はほとんどが棟内部に入った雨水が原因です。
棟内部に侵入した雨水により三日月漆喰が雨水に押し流される形で脱落してしまうので、「塗りなおし」自体は可能ですが、またすぐに同じように雨水によって押し流されてしまいます。
なので正しい処置方法は、一度棟を解体し、中の屋根土も新しいものにしたうえで棟を積み直してから漆喰を再施工するというのが正解です。