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職人がモノづくりを続けていくために。文化と経済の両輪からサポート

伝統工芸品の産地ブランディングのプロ

石崎功

石崎功 いしざきこう
石崎功 いしざきこう

#chapter1

伝統工芸品のブランディングのほか、呉服店の経営コンサルや和装振興など多方面で活動

 「日本の工芸品は、平均で数百年、中には千年以上の長きにわたって歴史が紡がれてきました。後継者がいない、需要が伸び悩むといった理由で、私たちの時代で幕を閉じてしまうのはあまりにも残念です。伝統工芸を伝承し、発展させるには、文化と経済の両輪を回していくことが重要です」

 そう話すのは、「K.D.CPlanning(ケーディーシープランニング)」代表の石崎功さん。呉服小売店の経営コンサルティングや、和装振興のための企画プロデュース、販促に関するディレクション、講演、執筆など多方面で活動しています。特に力を入れているのが、伝統工芸品の産地ブランディングです。

 石崎さんが目指しているのは、消費者は匠の技が息づく品を日常的に楽しむことができ、職人は作品が売れることでモノづくりを続けることができるという、シンプルなサイクルです。
 「商品を購入することで暮らしにどんなすてきなことが起こるのか、買い手がイメージできることが大切です。モノづくりの現場で求められているのは、誰に対して何を作り届けるのか、買い手は、それらに情緒的な価値やストーリーを感じることができるか、といった視点です」

 きものの作り手が集まったグループブランド「きものアルチザン京都」ではマーケティングディレクターを務め、2016年からニューヨークで日本の伝統技術を発信。現地では、染織に用いる乳由来の成分でできたアクセサリーや、ペットボトル由来の糸で仕立てた西陣織のダウンジャケットなど、環境に優しい素材を使った商品が高く評価されているそうです。

#chapter2

幼い頃から工芸品に触れた経験と、大手きもの店で得た商品づくりの学びを生かし呉服業界を支える

 きもの研究家の父を持つ石崎さんは、幼い頃から工芸品が身近にありました。
 「父と野球観戦に行く時の待ち合わせ場所は、いつも美術館や博物館でした。館内を一通り巡ると父が迎えに来てくれるのですが、球場に向かう車中で必ず『印象に残った作品は?』などと聞かれるんです。理由まで答えなければ小言を言われるため、小学生ながらに真剣に見ていましたね」

 当時、父から掛けられた忘れられない言葉があるそうです。「家族旅行である産地に赴いた際、『この人たちがいてくれるから、お前のご飯が買えるんだよ』と。職人さんを尊敬する気持ちは、自然と持つようになりました」

 大学卒業は大手きものチェーンストアに就職し、全国の店舗でチーフや店長を経験。その後、バイヤーを経て独立します。
 「20年間の会社勤めの中で、ヒット商品の作り方や売り方など幅広く学ばせていただきました。経営とモノづくりの両面からサポートさせていただくことが多いいま、とても役立っています」

 呉服店を営む夫婦から、従業員が退職し業務も業績も厳しいと相談を受けた際は、パソコンの使い方なども含め、細やかに支援。最終的に、社員が数人いた時と同程度の売り上げに戻すことができました。
 「お二人から『あなたに頼んで良かった』と言っていただいた時は、本当にうれしかったですね」

 2011年には、職人やデザイナー、メーカーなどが一堂に会し、勉強会や交流会を行う「呉服業界若手経営者の会」を立ち上げ、業界全体の活性化につなげました。

石崎功 いしざきこう

#chapter3

全国各地にある伝統工芸品のメーカーや産地組合の発展を目指して

 「いろんな和文化が交わることで、新たな動きが生まれるでしょう。これからは、伝統工芸に従事する人たちがジャンルを超えて集える場をつくっていきたいですね」と石崎さん。茶人や能楽師、陶芸家など、文化人と結んだ縁をもとに、全国のメーカーや産地組合の発展に貢献したいと意欲を見せます。

 「情報発信のために、講演会も開いていく方針です。地域や業種によって、抱えている課題や取り組むべきことは変わってきますから、応用がきくよう俯瞰的な視点で、今後の展開のヒントになることをお伝えできたらと思います」

 2024年には、海外の顧客にも対応したオンラインストアにも参画するつもりだとか。
 「世界中の方から反応をいただけることは、職人さんたちにとっても励みになるはずです。モチベーションアップの機会を増やすためにも、積極的にアプローチしていきます」

 市場開拓を進める一方で、「日本の人にこそ、日本の工芸品の素晴らしさを知ってもらいたい」と力を込めます。
 「現代の消費価値観と伝統工芸を掛け合わせて、どんな商品を生み出すことができるか、常に考えています。丹精込めて仕上げた品々がもたらす豊かさや、それを支える職人さんの優れた技能をみなさんに再認識していただき、和文化を広めていきたいですね」

 苦しい状況に置かれている生産者や販売店にも、「必ず活路はある」と石崎さん。脈々と伝承されてきた伝統工芸品の魅力を一緒に再発掘し、世の中に届けていきたいと語ります。

(取材年月:2022年11月)

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石崎功

伝統工芸品の産地ブランディングのプロ

石崎功プロ

きものプロデューサー

K.D.CPlanning

幼い頃から伝統工芸に慣れ親しみ、第一線で活躍するさまざまなジャンルの日本文化に携わる人との交流を持つ。幅広いネットワークと呉服業界での長い経験を生かし、全国各地の産地と職人をサポートする。

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