PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

生きづらい日々を手放し、心の扉を開けて違う人生へ踏み出そうとする勇気を応援

心の深層をたどり苦悩や不安をやわらげる心理療法のプロ

岸田美保

岸田さん
セッションルーム

#chapter1

無意識の葛藤や不安に向き合い、心の深層をたどる精神分析的心理療法を提供

 「家族や親しい人との間で親密な関係が築けない」「職場や家庭に不足はないはずなのに、現実味がなく常に不安がつきまとう」、さらには「自らの存在そのものに危機感を覚えることがある」

 そんな生きづらさを抱える人々を迎え入れ、心の深層をたどる軌跡をナビゲートするのは、京都市左京区の白川通り沿いにある「ひなぎく心理ルーム」の臨床心理士・岸田美保さん。

 1組のテーブルセットとカウチソファを配した落ち着いた空間で、「精神分析的心理療法」を行っています。

 「自律神経失調症やうつ、不安症などの改善のために、自身も気づいていない、無意識の心の葛藤や苦悩、欲求などを分析・理解し、解き放つことで心を癒やしていく心理カウンセリングの手法です」と岸田さん。

 長期的、継続的に取り組む必要があり、1回50分のセッションをおおむね週1~2回のペースで行い、数カ月から年単位で続ける人がほとんどだと話します。

 また、教育センターの電話相談員をしたり、児童相談所で子どもの指導にあたったり、スクールカウンセラーとしての実績も持つ岸田さん。高い専門性と約30年にわたる豊富な臨床経験を元に、子どものひきこもりや不登校といった問題行動に悩む保護者のサポートにも努めています。

 「不安定な状態にある子どもの行動の背景や真意を推し量るとともに、実際に起こり得るシーンごとに親がとるべき態度や具体的な言葉がけを提案しています。失いかけた親としての自信を回復し、自分のこととして子どもに向き合えるまで、張りつめた心の糸を緩めることに力を注ぎます」

#chapter2

自我に目覚める以前への回帰体験を経て、心理学の知識、臨床スキルを探究

 「カウンセリングのスキルを磨くため私自身がセッションを受けた際に、自我に目覚める以前の、乳児の頃にさかのぼるという体験をしました。生後数カ月で早くも哺乳瓶を持たされていたこと、背負いひもできつく母に背負われていたこと。セッション中の無意識の行動や感覚によって、記憶になかった情景がよみがえったのです」

 10代半ばから母親に代わり、日常的に家事や弟たちの世話に追われる“ヤングケアラー”だった岸田さん。母を亡くした後に就いた保育園での職は、長くは続きませんでした。
 「もともと周囲の反応や言動に過敏な傾向があり、不特定多数と関わる職場にはなじまなかったのかもしれません」と振り返ります。

 一方で、園長や同僚は岸田さんの「目の前の人の感情をつぶさにくみ取り、共感することができる独自の感性」を見いだしていたようです。

 「かたくなに言葉を発しなかった子どもの声を、私だけが受け止められるのはどうしてかと不思議がられました。ただ、その子の傍らに漂う“風”になろうとしただけなんです」

 背中を押され、心理カウンセリングの講習と認定を受けて、20代で「京都いのちの電話」の相談員という職責を数年間担うことに。
 
 「心理学的な概念の知識を得るだけでなく、一人一人の心の歴史をたどり、共に考え続けなければなりません。常に学ぶ姿勢が欠かせませんでしたね」

 現在は「京都いのちの電話」の理事兼研修委員長を務め、自身も含めた人間心理や人生について探究を続けています。

カウチ

#chapter3

封印された心の扉にひとつずつ手を掛ける試みを、傍らで見守り伴走

 「人は心を安全に保つために、無自覚に重大な心傷体験を意識下に隠していることがあります。例えば、子育てに悩む保護者に対してヒアリングを進めていく中で、親子関係を困難にしている要因が、保護者自身の幼少期のつらい体験にあると明らかになることもまれではありません」と岸田さん。

 セッションの多くはカウチに身を委ね、リラックスした体勢で行います。
 頭に浮かんでは消える風景や連想を言葉にして発するよう導き、立ち込める霧の中から現れるサインを受け止める岸田さんは、あくまでオブザーバー(観察者)であり代弁者。
 意図せず発せられる言葉やしぐさが意味するものを、相談者と共に探し求めます。

 「封印された扉をひとつずつ開けていくような繊細な試みになりますので、カウンセラー自身が全力で臨むのはもちろん、ご本人にも真実に向き合う準備と覚悟が求められます。次の扉に手を掛けるかどうかもご本人次第なのです」

 保護者をはじめ、10代~60代と幅広い世代に伴走し、心の声を聞いてきた岸田さん。自身の心を使って職務に励む人たちにも目を向け、教育現場に携わる教師やスクールカウンセラーといった実務者にも寄り添います。専門職としての資質を向上するコンサルテーションを通じて、それぞれの活動を支援しています。

 「自分にも覚えのない苦悩の源を、一人で見つけ出すのは並大抵ではありません。生きづらい日々を手放し、心の扉を開けて違う人生へ踏み出そうとする勇気を応援します」

(取材年月:2024年4月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

岸田美保

心の深層をたどり苦悩や不安をやわらげる心理療法のプロ

岸田美保プロ

心理カウンセラー

ひなぎく心理ルーム

心の深層をたどり無自覚な体験に向き合う精神分析的心理療法により、苦悩や不安をやわらげる。30年にわたる臨床経験を元に、子どもの不登校などに悩む保護者に向けて、具体的な事例に添ってアドバイス。

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ京都に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または京都新聞が取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO