こだわりの食材と老舗の伝統技で作る京飴のプロ
石崎秀生
Mybestpro Interview
こだわりの食材と老舗の伝統技で作る京飴のプロ
石崎秀生
#chapter1
京都御所や二条城にもほど近い閑静なエリアに店を構える「京の飴いしざき 御所乃石本舗」は創業120年を数える老舗。屋号にもなっている“御所乃石”は第19回全国菓子大博覧会 名誉総裁高松宮賞を受けるなど、直火焚きで丁寧に手作りする上質な京飴(きょうあめ)は高い評価を得ています。そんな職人技を現代に伝えるのは、4代目当主の石崎秀生さんです。
「使用するのは自然の食材だけで、添加物など余分なものは加えません。例えば、創業時から変わらない“都の石”は、上質の砂糖と少量の水飴を高温で炊き上げ、包丁でカットした、飴の原点とも言える素朴な商品です。シンプルだからこそ素材を十分に厳選し、日々の気温や湿度に合わせて配合や焚き上げ時間を調整する職人技が必要になります」
とりわけ飴作りの要となる砂糖は、徹底した吟味が必須だとか。「当店で使用している砂糖は砂糖の中でももっとも純度が高い白双糖(しろざらとう)。甘さが上品でクセがなく、無色透明なので仕上がりが美しいのもメリットです。また黒砂糖は毎年風味が微妙に変わり、西表産や波照間産など種類も豊富。その年一番いいものを選んだうえで、配合も細かく加減して風味を整えていきます」と石崎さんは素材へのこだわりを語ります。
抹茶やイチゴ、ミルクに黒飴など、9つの風味が楽しめる“御所乃石”、京飴に煎り大豆を加えた“豆平糖”、宇治の高級抹茶をふんだんに使った“抹茶飴”など、京銘菓にふさわしい繊細で上品な定番商品の数々。塩やショウガ、シソやバニラなど、4代目がチャレンジする多彩な新商品。いずれも、こだわりの食材と職人技を極めた上質の風味が堪能できます。
#chapter2
3人兄弟の末っ子だという石崎さん。もともと家業を継ぐつもりはなく、美容専門学校卒業後はさまざまな職業を経験しながら、バンド活動に打ち込んでいたそうです。ところが2009年に3代目が突然に逝去したことで状況が一変することに。
「兄たちはすでに独立していました。家族会議で廃業に話しが及んだ時、自分が継ぐしかないと覚悟を決めました。2代目の祖父、3代目の父が懸命に守ってきた飴作りを途絶えさせたくないと思ったからです」と石崎さんは当時を振り返ります。
日常的に家業の飴作りを手伝っていたこともあって、基本的な製法は習得していた石崎さん。飴作り一本でがんばろうと決意してからは、砂糖の研究や新商品の開発など、日々の研鑽を重ねていきました。
「老舗を守るという仕事は、実のところはイノベーション(革新)の繰り返しなんです。受け継ぐべき伝統はコア(中核)の部分だけ。その強力なコアがあるからこそ、いろいろなチャレンジができる。革新なくして伝統は守れないと言えるかもしれません」と力を込める石崎さん。
SNSを通じて交流ができた岡山の塩メーカーと共同で開発した塩飴や、和歌山の北山村産の希少果実、じゃばらを使った和歌乃実など、コラボ商品の開発にも精力的に取り組んでいます。美容業界で培った色彩感覚、バンド活動で育まれたクリエイティビティ(創造力)など、これまでの経歴は決して無駄ではなく、すべてが飴職人として生かされているそうです。
#chapter3
和菓子やみそ、しょうゆなど京都を代表する老舗が数多いエリアで生まれ育った石崎さん。4代目となった今、改めて自分が生粋の京都人だということを感じていると言います。
「少し歩けば着物の街、西陣があります。着物の色彩や機織りの音、食べるものやお香の香りなど、幼い頃から『古都・京都』という環境に囲まれて過ごしてきました。京都ブランドは強いと言われますが、自分にとってはごく自然なこと。当たり前のように培われた京都らしい、京都ならではの感性が、今はとても大切なものだと実感するとともに、これからは何らかのカタチで地域に恩返ししたいという気持ちが強くなりました」
石崎さんが取り組んでいるのは、SNSでグルメや名産品など京都の魅力を伝えること。今後もTwitterなどで、地域の活性化につながるさらなる情報発信を目指しています。
「当店の飴は、一部ネット通販でも購入できますが、京都にお越しの際は、ぜひ、店にお立ち寄りください。店頭ではバラ売りもしています」と石崎さん。築100年を超える風情あふれる建物の佇まい、昔ながらのショーケースに並ぶ色とりどりの飴の美しさなど、 「京の飴いしざき」の歴史や文化を五感で楽しんでみてはいかがでしょう。
(取材年月:2021年1月)
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Profile
こだわりの食材と老舗の伝統技で作る京飴のプロ
石崎秀生プロ
飴職人
京の飴いしざき 御所乃石本舗
127年の歴史を誇る老舗の伝統的な飴作りを継承するとともに、新たな食材とのコラボ商品など、数々のイノベーションに挑む。昨今問題視される余分な物を加えず、安心に配慮した質の高い京銘菓を提供し続ける。
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