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Mybestpro Interview

機能性にデザイン性をプラスした、完全オーダーメイドの義肢装具を製作提供

義肢装具製作のプロ

北村健史

義肢装具が必要とされなくなる日まで、責任を持ちます
機能性だけでなく、見た目も重視したデザインが特徴

#chapter1

装着をためらうことのない、「かっこいい装具」を提供することで日常生活をサポート

 病気やけがなどで手足の一部を失った人が用いる義手や義足といった義肢、痛みの軽減や変形の矯正など治療を目的に身体に付ける装具。これらを製作する義肢装具士は、利用者のQOL(生活の質)を支える上で欠かせない存在です。
 
 2014年に事務所を立ち上げた「株式会社 ケイ・ブレース」の代表・北村健史さんは、熊本県内の医師から依頼を受け、処方に従ったさまざまな義肢装具を請け負っています。
 「種類はたくさんあって、手や足のほか、頸椎・胸椎、腰椎など使用する部位も多岐にわたります。加えて、一人一人装着する体形や生活様式も異なるため、既製品を使わず、完全オーダーメイドにこだわっています。製品に反映させるため、医師に頼んで手術に立ち会い、指の腱がどのように走っているのかを確認したこともあります。

 義肢装具は、筋力の低下や関節の拘縮(こうしゅく)を招くことのないよう、必要以上に患部を固定せず、できるだけ簡素なつくりにしています。患部を支える所は軽くて丈夫な材質、荷重を分散させる所は低反発材料を採用するなど、素材選びにも神経を使います。

 「見た目がおしゃれでないという理由で、身に付けるのを嫌がる人もいます。特にその傾向は10代に多く見られます。装具は装着を続けて初めて効果が発揮されるもの。まずは、『これならいいな』と前向きになってもらうことが大事なので、機能性はもちろん、私自身が恥ずかしくない、かっこいいと思える視点で提案しています」と北村さん。黒地に赤やオレンジのステッチを施したデザインは、若者からも気に入ってもらえるそうです。

#chapter2

日本人の技術者は自分一人。義肢装具士として成長させてくれた青年海外協力隊

 北村さんは、熊本総合医療リハビリテーション学院義肢装具学科を卒業しました。愛知県に本社を置く「松本義肢製作所」で実践を積んだ後、JICA(独立行政法人国際協力機構)の青年海外協力隊に参加。1998年から2000年までの2年間、エジプト・アラブ共和国で義足作りの技術支援に携わりました。当時手掛けた義足は約200本に及び、その経験が現在のオリジナル品に生かされていると言います。

 「現地のリハビリテーションセンターには十分な材料がなく、プラスチックの容器を溶かしたり、自転車のフレームを溶接したりして義足を仕上げていました。おかげで私も、限られた材料でも、何か代用できるものはないか、こうすればもっと良い物ができるのではないかと、常に柔軟に考える力が付きました」

 日本人の技術者は北村さんただ一人。しかも先方の職人は60代でキャリアが豊富。日本とは文化や価値観が違う上、年齢差があったことから、なんとか意思疎通を図りたいと努力し、コミュニケーション能力も養われたと振り返ります。

 「当初は、私の指導に抵抗があるようでした。それぞれにやり方がありますから、すぐには歓迎できないのも当然です。信頼関係の構築が先決だと考え、現地のノウハウを習得することから始めました。その上で、日本の技術を少しずつ伝えていきました。手順などが違っても、良い物を作りたいという思いは共通しています。最終的には現地のスタッフにも受け入れてもらうことができました」

義足よりも製作が難しい上肢装具

#chapter3

納品後のアフターケアも万全に。中高生向けの足の疾患に対応するインソールにも着手

 「私たちの仕事は、納品して終わりではありません。むしろ、そこからがスタート。担当させていただいたみなさんが、装具を必要としない日が来るまで、アフターケアを継続し、サポートしていきます」と北村さん。

 「ある方は、幼い頃に小児まひを発症し、両松葉づえをついていました。歩行を助ける装具をご提供すると、片松葉づえで生活できるまでになりました。膝の筋力が落ちていたため、装具にうまく体重が乗るよう、荷重線を見つけるのは大変でしたが、装着した時の感想や要望などをお伺いし、何度も微調整を行って完成させることができました。患者さんとは何でも話せる関係性を築くことを心掛けています」

 最近は、新たな縁にも恵まれ、スポーツ整形の医師と共に、中学・高校生の足の疾患に対応するインソール(中敷き)も製作しています。スポーツの種類によって使う筋肉が異なる上に、使用する素材が決められているなど、道のりは平たんではありませんが、医師やスポーツ関係者らと議論しながら試行錯誤を続けています。

 「モノ作りは人づくりといわれます。私たち自身が学び、成長しなければ、良い製品を生み出すことはできません。病院の先生や患者さんと丁寧に対話を重ねながら、患者さんのために何ができるかを考えていきたいと思っています。これまで先生方をはじめ、たくさんの患者さまに支えられてきました。しっかりと恩返しができるよう、日々の出会いに感謝し、向上心を持って社員一丸となって取り組んでまいります。義肢装具が必要なときはぜひお声掛けください」

(取材年月:2022年7月)

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専門家プロフィール

北村健史

義肢装具製作のプロ

北村健史プロ

義肢装具士

株式会社ケイ・ブレース

機能性はもちろん、見た目も意識したデザイン性のあるオリジナル製品作りが強み。患者さまとのコミュニケーションを大切にしながら、義肢装具が必要とされなくなる日まで、責任を強く持ち、アフターケアを続けます

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