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第13回【経営者コラム】時は⾦なりの進化版?タイパ(タイムパフォーマンス)を重視するZ 世代と働く⼥性たち|様々なパフォーマンスを駆使しSNSマーケティングの価値を創造する

一番ヶ瀬正明

一番ヶ瀬正明

テーマ:Z世代 タイムパフォーマンス




アメリカシアトルで⾏われたマリナーズ戦1回。
マウンドに⽴つ⼤⾕選⼿が、聞きなれないルール「ピッチクロック違反」でボールを宣告されたことをテレビニュースやネットなどで⽿や⽬にした⼈も多いでしょう。
メジャリーグでの「ピッチクロック」導⼊などのルール改正は、「タイパ(時間的効果)」、いわゆるタイムパフォーマンスに敏感な若者らに対し、メジャーリーグの魅⼒を訴えるための⼿段として採⽤されたものです。

今回コラムは、若者、特に25歳以下のZ世代や働く⼥性たちが重視する「タイムパフォーマンス(以下タイパ)」に注⽬すると同時に、様々なパフォーマンスを駆使することで⽣まれる「SNSマーケティング」の⽅策を考えていきます。



タイパとは?何を指すのか?

「タイパ」とは、時間対効果を意味する「タイムパフォーマンス」の略語です。
よく⽿にする「コスパ(コストパフォーマンス)」が“効率のいいお⾦の活⽤”を意味するのに対し、「タイパ」は、“効率のいい時間の活⽤”を意味します。

出典:ツギノジダイ,⾺淵恵梨⾹,タイパとは?
Z世代に流⾏するコンテンツやその特徴、背景などを解説,
20230318, https://smbiz.asahi.com/article/14834823


映像コンテンツの倍速視聴などが、この「タイパ」にあたります。
タイパに対する価値観や考え⽅は、⼈それぞれですが、基本となるのは、時間をいかにして有効に使うかということです。
しかし、「時間」の感じ⽅はその⼈の性質にも関連します。
例えば、ゆっくりとした展開の映画が好きな⼈であれば、「アフリカの⼤⾃然の悠然とした場⾯をゆっくり流す映画」を2時間みたとしても、満⾜し、良い時間を過ごしたと感じるでしょう。
しかし、展開の早い映画が好きな⼈に、同じ映画を通常スピードで⾒せても、退屈だ、時間がもったいない、と思うだけかもしれません。
ただ、退屈さを利⽤し睡眠へと誘うには効果があるかもしれませんが。

このように、タイパの価値観や考え⽅は、その⼈、そしてそのシーンによっても⼤きく変わると⾔えます。



Z 世代にタイパが好まれるようになった背景と要因

2022年に『映画を早送りで観る⼈たち』が出版されたことを機に、タイパはトレンドワードとなったと⾔われています。
この『映画を早送りで観る⼈たち』で、Z世代が多くのことにタイパを意識していることが紹介されています。
また、『ファスト教養 10分で答えが欲しい⼈たち』も話題になりました。
タイパという概念は、「YouTube」や「TikTok」などデジタルでZ世代が情報を得るためのツールとして⼀般的に使われていることや、クリエイターたちが視聴数を獲得するために短い動画をいろいろなコンテンツで発信していることも起因しています。

Z世代は、巷にあふれる膨⼤な情報を処理するのに、“効率のいい時間の活⽤”をしたいと思うのは、ごく⾃然な流れとも⾔えるでしょう。
“効率のいい時間の活⽤=タイパ”のために何をしているか?⼀部をご紹介します。



図) 出典:SHIBUYA109 lab., Z世代の映像コンテンツの楽しみ⽅に関する意識調査
2022年8⽉18⽇,https://shibuya109lab.jp/article/220818.html

SHIBUYA109 lab.の調査で、Z世代の約半数がコンテンツの「倍速視聴」を⾏い、80%以上が「ながら⾒」していることがわかりました。



タイパを意識する人の傾向とは

さらに詳しく傾向を⾒てみます。
タイパ意識が強い⼈には、以下の特徴があります。


1) わからないことは、すぐSNSなどで調べる

2) InstagramやTwitterなどの評価を参考にする

3) YouTubeなどの動画で情報を効率的に集める

4) 映画などネタバレを好む(⾃分分好みの内容かを調べてから⾒る)

5) プレゼントは、相⼿の欲しいものを直接聞く



タイパを意識する⼈の傾向から垣間⾒られるのは、タイムパフォーマンスを意識するだけであって、そこだけを重視しているのではないということです。
それは、時間を効率的に使いつつ、⼼の充実度をも求めているとも⾔えるでしょう。

顕著にその傾向が⾒られるのは、「5) プレゼントは、相⼿の欲しいものを直接聞く」です。
相⼿が喜ぶ顔が⾒たい、必ず喜ぶモノを贈りたいという欲求と、タイパが交錯し、タイパを意識しつつ、喜んでもらえることに価値を⾒出している、つまり「⾃分のこころの充実度」をも確保しています。



Z 世代だけではない、働く⼥性もタイパを重視していた!

「タイパ」と「ファッション消費」をテーマに、20~40代の働く⼥性120名を対象にアンケート調査を実施したファッションレンタルサービス(株)エアークローゼット。
現在、タイパを上げるためにやっていることは?の問いには、「冷凍⾷品」「動画の倍速視聴」が上位に⼊り、次いで「⼝コミサイトやSNSでの検索」「調理家電・家電製品」でした。




また、働く⼥性にとって「タイパ」は⼤切と7割が回答し、さらに、「タイパ」と「コスパ」は“どちらも⼤切”と約6割が回答しました。






このことからも、タイパを求める⼈は、ただ単にタイパのみを求めるのではなく他のパフォーマンスとの掛け合わせを重視していることがうかがえます。

図) 出典:PRTIMES , 株式会社エアークローゼット,⾒直される“時間の価値”、
ファッションでも「タイパ意識」強まる 働く⼥性が「本当はもっと買い物に時間をかけたいもの」1 位は“ファッション”
2023年3⽉1⽇, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000188.000011623.html



タイパ × その他パフォーマンス
パフォーマンスを掛け合わせマーケティング展開する


まず、「タイパ以外のパフォーマンス」を⾒てみましょう。

□ フィジカルパフォーマンス
空間的制約をコントロールすることで体験効果UP

□ シチュエーションパフォーマンス
使⽤する場⾯を想像しやすくor⽣み出すことで体験の効果UP

□ リレーションシップパフォーマンス
⼈との繋がり、社会との関わりを活⽤することで効果を最⼤化

□ エモーショナルパフォーマンス
感情の起伏を⽣み出すことで体験の効果を最⼤化



次に、「タイパ」と「上記パフォーマンス」の中からいくつか、掛け合わせた事例をご紹介します。


事例1)

タイパ × フィジカルパフォーマンス
「スターバックス」モバイルオーダー&ペイ


フィジカルパフォーマンスである「BOPIC(ボピス)」を掛け合わせ、効果を上げる。
BOPICは、事前に欲しい商品をオンラインで予約購⼊し、商品を店舗で受け取ることができる仕組みのこと。
スターバックスコーヒージャパンでは「Mobile Order& Pay(モバイルオーダー&ペイ)」を、全都道府県のすべての直営店で活⽤。専⽤アプリから事前に注⽂決済し、レジに並ばずに商品を受け取る(=タイパ)ことができます。
これにより店舗内での接触時間の短縮(=フィジカルパフォーマンス)も期待できます。


画像)出典: https://product.starbucks.co.jp

スターバックスの「モバイルオーダー&ペイ」会員プログラム「Starbucks Rewards」は、会員数620万⼈を突破。
2020年2⽉以降、前年同⽉⽐30%増〜70%増で推移しています。
コロナ禍を経て、いろいろなモノやコトを、モバイルをはじめとするデジタル上で注⽂・解決する機会が格段に進化しました。
⾃社にあったスタイルはこれだ!と決めつけず、そのチャンスがあるのなら、いろいろなオーダー⽅式を試すことで、思わぬ層の顧客獲得につながるかもしれません。


事例2)

タイパ × シチュエーションパフォーマンス × エモーショナルパフォーマンス
「⼥性向けアウトドアブランドravina(ラビーナ)」ポップアップストア


⼭の⽇イベントブースで「ポップアップストア」を出店することで、⼭登り愛好家たちが、⼭に関するいろいろな出店物を⾒ることでタイパを上げることに成功。
さらに、その商品を連想させる場所で、購⼊可能な接点をつくる「シチュエーションパフォーマンス」と、専⾨家に教えてもらい試せるのは、店舗で店員に説明を受けるより感情的効果が⾼いとされる「エモーショナルパフォーマンス」が組み合わさっています。



写真は、原宿のポップアップストアの様⼦

出典: SHOPCOUNTER MAGAZINE,ポップアップストアで “試着のニーズ” に応える!/ ravina, 2019年7⽉19⽇更新,https://shopcounter.jp/magazine/success-story/ravina-pop-up-store

通常はWEB限定で販売しているこのブランド。
ポップアップストアを使いタイパをはじめとする3つのパフォーマンスを叶えた、好例。
ポップアップストアを展開する場合は、⾃社製品を実際使うことを想定し、場所・対象・ニーズなどをピック。その場がふさわしいのか⾒極めることが⼤切。
ただ、まだ新しい商品やブランドを売り込むための試験期間と考える場合は、ブランディングという観点から、いろいろな場所でまずは展開して様⼦を⾒るというのも、ひとつの⼿段です。さらに、ポップアップストアだけではなく、SNSなどデジタルでの発信も必須です。
そして、ポップアップストアを訪れた⼈へのInstagram、Twitterへの発信がなされるよう誘導を⾏いましょう。



まとめ

「タイムパフォーマンス」は、Z世代はもちろん、働く⼥性、そして、デジタルを使う多くの⾊々な世代にも広がってきていると感じます。
それは、デジタルの通信速度、ページの表⽰速度、スクロールのスピードなども関係し、スピード感のあるスマートフォンに表⽰や、サクサクとした操作感も必須です。
また、ECの売り上げを上げるためには、サイトの処理スピードを上げることも必須になります。
タイパ重視世代に対する動画配信は、スピード感のあるものや、短い視聴でも商品が分かるものを提供すると良いでしょう。
しかし、タイパを求めるあまり冷たくなってはいけません。
Z世代たちが「タイパ」に「⾃分のこころの充実度」を求めた様に、その商品らしさ、⾃社らしさを、⼀本の柱として建てておく必要があります。
さらに、世代によって、個⼈の気質によってなど、タイパを求めない⼈がいることも忘れてはなりません。
業務においての時間効率を考えるあまり、レストランでいきなりお⽫を下げられたお客様は嫌な気分になりますし、閉店時間だからとお客様をおいだすようなことは、問題外です。
デジタルでタイムパフォーマンスアップし、対⾯では相⼿の⽴場に⽴った⾏動をほどよくミックスすることを⼼がけるべきなのです。

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一番ヶ瀬正明(広告コンサルタント)

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