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遺品の中から価値のある物を選別し、価値に見合った現金と交換する。そしてその価値を認める人に託す

生前整理、遺品整理をテーマにした査定と買取のプロ

佐田聖介

佐田聖介 さだせいすけ
佐田聖介 さだせいすけ

#chapter1

価値を分かる持ち主が自ら換金しなければ、価値ある物がゴミとして無造作に処分されてしまう現実

 「みなさん最初は恐る恐る入って来ますよ。モノを現金化するという経験がないからでしょうね」と語るのは、「株式会社ディープ・エコロジー」代表の佐田聖介さん。生前整理・遺品整理をテーマに、人口約2万人のいの町にあるショッピングモールの一角で、買取店「わかば 高知サニーアクシスいの店」を営んでいます。

 「換金してできたお金で、お子さん、お孫さんと遺品の持ち主だったおじいちゃん、おばあちゃんの思い出を語りながらお食事をされる。そんな光景を目にすることが一番の喜びです」と笑みを浮かべます。

 「遺品整理」という言葉に定義はありません。通常では、顧客に費用を負担してもらい処分する業者を指します。佐田さんの場合は、遺品の中から価値のある物を選別し、現金化すること、そしてその価値を認める人に譲り渡すことが仕事です。

 実は、佐田さんの前職は地方銀行の行員。本部勤務時代、高齢化が進んでいる高知県だからこそできるビジネスがあると考え、高齢者向けサービスの開発に取り組んでいました。その過程で、数多くのお年寄りが所持品の整理で悩む姿を目にしました。

 「シニアの方々は貧しい時期を経験した世代で、物への執着が強く、手放すことに抵抗がある。一方で豊かな現代を生きる今の子は物を欲しがりません。持ち物の価値を理解しているご自身が必要とする人に譲っていかないと、大切にしてきた物がゴミとして処分されてしまいます」

#chapter2

文化を伝え継ぐため、この町ならではの品物を積極的に買い取り。売り先を世界に求める努力を重ねる

 大きな隔たりがあるような買取業と銀行業も、佐田さんの中では「顧客との信頼関係で成り立っている点」で共通しています。

 「僕が掲げる『生前整理、遺品整理』は、貴金属やブランド品を集めるための方便ではありません。お客さまの期待に応えるには、『これは無理です』とお断りすることなく受け入れる仕組みづくりが欠かせません」

 実際に、当初は持ち込まれるまま買い取っていた佐田さん。直面したのは在庫だけが増え続けるという現実でした。

 「出口がないと買い取れない。だからといって貴金属やブランド品に絞るのは店側のエゴ。大事なのは、買手を探す努力」つまり、各ジャンルの専門家との連携や、海外向けのルート開発が重要と考えました。

 「日本ではゴミとなりかねない骨董品も、欧米では高い注目を集めています。また中国や東南アジアでは、古くても質の高い日本製品は人気があります。工夫次第で、販路を開拓することはできます」。とはいえ、査定額が付かない物があるのも事実。その点は理解してほしいとか。

 「いの町ならではの品があれば、ぜひ扱いたいですね。清流『仁淀川』が流れ、土佐和紙の生産で栄えたこのあたりには豪商たちの名品が残るとともに、墨やすずりといった書道具が多いのも特徴です。ほかに高知県の特産品『血赤珊瑚』もあります。こうした地域特有の遺品が処分されることは、地域の文化が消えてしまうこと。きちんと評価してくれる人の手から未来につないでほしいと切に願います」

佐田聖介 さだせいすけ

#chapter3

海外に送る商品にはいの町の案内状を添えて。譲り受けた物を通して町の人にお返しがしたいという思い

 「今後日本では、人口減少に伴い物が無造作に捨てられる時代が来る。一方で、世界には物を必要としている国々がたくさんある」と考える佐田さん。銀行員時代の出向先で、リサイクルショップへの業態変更に携わった時に肌で感じ取ったと言います。

 「今こうして他の国と取引しているのも不思議なんです。学生の頃、興味があったのは海外ビジネスでした。家庭の事情で帰郷せざるを得えなかったのですが、気づけばその夢を高知の片田舎でかなえているのですから」

 海外に発送する商品には、いの町の案内状を添えているそうです。「遺品を介して思いを共有する分、お客さまと本当に仲良くなるんです。リピーターさんも多い。また僕自身この地域で行員として働いていたこともあります。だからこそ、譲り受けた物を通して町の人にお返しがしたいなと。遠い異国で遺品を手にされた方に、いつかはその故郷であるいのを訪れてもらいたい。清らかな『仁淀ブルー』をその目で見てもらいたい。そんな架け橋になりたいんです」

 地元の廃校などを利用して、観光客が集い憩えるような施設を開くことも計画中。実現に向けて音響や映像機器、洋盤などの買い取りにも力を入れています。

 「寂しいのは、買取店である以上、売る物がなくなったら来ていただけなくなること。お客さまとは親しくさせていただくのでなおさらです。ただそれってどこか人生に似ていて、出会いがあるから別れがある。会える間は真心でお付き合いをしなければと思いますよね」

(取材年月:2022年3月)

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佐田聖介

生前整理、遺品整理をテーマにした査定と買取のプロ

佐田聖介プロ

遺品整理士

株式会社ディープ・エコロジー

ゆくゆくは処分されてしまう運命にあるような所持品、タンスに眠る遺品などの中から価値のある物を見出し、評価に応じて換金。預かった品物は国内のみならず、広く海外で必要とする人に販売し、有効活用してもらう。

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