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佐久間太貴

品質重視、地域密着型の外装・防水塗装の専門家

佐久間太貴(さくまうずき) / 外壁・防水塗装職人

株式会社エスユープレイス

コラム

タイルが壁から剥離する原因は経年劣化ではなかった!?

2016年8月15日

テーマ:外壁の劣化と修復

コラムカテゴリ:住宅・建物

経年劣化により、タイルが剥離するトラブルは、実は施工ミスなどが多いです。

例えば、躯体コンクリートとモルタルの間に剥離が発生する原因には、荒面処理や洗浄が不十分、質の悪いモルタルの使用、下塗りの際の塗り圧力の不足などがあります。

また、躯体コンクリートの表面がツルツルだったり、剥離剤が塗布されたりするようになったことで、モルタルごとタイルが剥離することが多くなりました。

タイルのみが剥離する原因については、たたきや圧着セメントの充填が不十分な場合があります。

ピンニング工法、圧着セメントの充填不足などで発生したタイルの浮きは、タイルを交換します。

建築基準法上、検査や診断の対象の建物ではなくても、業者さんに依頼して定期的にタイルの浮きを検査してもらいましょう。

タイルの剥離の原因となるモルタル下地と躯体コンクリート下地

水、セメント、砂を混ぜて作られるモルタルは、精度の悪い凸凹の躯体コンクリートの上に塗って、平らなタイル下地を作る際に使われます。

躯体コンクリートとモルタルの層で浮きがあると、打診調査で鈍く低い音が発生します。
このような浮きの発生は、コンクリートの表面に行う荒面処理や洗浄といった工程が不十分だったり、質の悪いモルタルを使ったりすることが原因です。

躯体コンクリートとモルタル間に剥離が発生すると、モルタルとタイルが一緒に落下してしまうことがあります。

また、左官工事の時点で下塗りの塗り圧力が不十分だったり、下塗り後、乾燥期間を14日程度とらずに中塗りをしてしまったりするとモルタルが剥離して、タイルごと落下することがあります。

タイルの剥離の原因となる躯体コンクリート下地

新築の工事では、躯体コンクリートの精度が高くなり、表面に凸凹や傾きはほとんどなくなりました。

そのため、左官工事で平らなタイル下地を作る必要がなくなり、材料や工数、工期の削減ができるようになり、建設業者や施主にとって「都合が良くなった」と思われました。
しかし、なめらかになったコンクリート躯体面に、直接タイルを貼ることが多くなり、タイルが剥離する原因となっています。

このため、日本建築学会の建築工事標準仕様書にも注意事項が記載されています。
注意事項よれば、凸凹や傾きがない躯体コンクリートであっても、コンクリート表面に薄く下地の補修をすることが多くなり、下地の補修をする材料の選定や施工管理を適切に行なわないと、タイルが剥離する原因となります。

タイルの剥離の原因となる躯体コンクリートのツルツル

木製や金属でできた型枠にコンクリートを流し込み、躯体コンクリートを成型します。

型枠には、合板(コンクリートパネル、通称コンパネ)や、合板にアクリル樹脂を塗ったパネコートが使用されます。

特に、アクリル系樹脂を塗った型枠を使うと、躯体コンクリートの表面はツルツルになってしまいます。

また、型枠を剥がしやすくするために剥離剤を塗布しているため、躯体コンクリートにも剥離剤が付着してしまい、さらにツルツルになってしまいます。

ツルツルになってしまった躯体コンクリートによって左官工事はいらなくなった反面、タイルが剥離することを防止するために、下地の補修が必要になりました。

タイルのみが剥離する原因について

モザイクタイル張りの場合、圧着モルタルの上にタイルを張った後、たたき板でたたいて押さえます。

この時、しっかりたたかないと、タイルの圧着が不十分となり、タイルのみが剥離することがあります。

タイルの裏面は、剥離を防ぐために凸凹の形になっており、これを裏足と呼びます。この裏足によって、圧着セメントとタイルがしっかり圧着します。

ただ、この裏足に圧着セメントが十分に充填されずに隙間ができたり、圧着セメント以外にゴミなどの不純物が付着したりしていると、タイルが落下してしまうことがあります。

これらの施工ミスは、工事の基本がしっかり行えば防げるものが多いです。それゆえ、しっかりした施工業者を選ぶことも重要です。

下地モルタルや圧着セメントが原因で剥離が発生している時の補修

タイル単体の浮きではなく、下地モルタルに剥離や浮きが発生している場合は、ピンニング工法で補修します。
この工法では、電動ドリルで、タイルの目地の接点に躯体コンクリートに貫通するまで穴を開け、エポキシ樹脂を充填した後にステンレスピンを挿入します。


圧着セメントの充填不足などで発生したタイルの浮きについては、タイルを交換する張り替え工法を行います。
この工法では、ディスクサンダーなどで、躯体コンクリートの表面を凸凹にする目荒らしと呼ばれる工程を行うことがあります。

ただ、圧着セメントの性能が向上しているため、必ずしも必要な工程ではないと言われています。

工数も予算も必要なため、発注者をはじめ、施工業者、監理者の合意の上、目荒らしを行うかどうか決定します。

タイルの剥離や浮きは大事故の原因となる

3年ごとに実施しなければならない定期検査に加え、外壁タイルの打診診断が、建築基準法で決められています。

市町村によって、この検査や診断の対象になる建物の規模は異なります。

例えば、東京都の場合は5階以上、1,000㎡(延床面積)を超える規模の建物は、検査や診断の対象になります。

タイルの剥離や浮きは、第三者を巻き込む大事故につながる可能性があります。

特にやっかいなのは、見た目に問題がないタイルであっても、内部で剥離や浮きが発生しており、外からはわからないことです。
タイルを目視で確認して問題がなくても、安心できません。

建物の規模が、検査や診断の対象ではなくても、業者さんに依頼して定期的に検査してもらいましょう。

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